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なぜ木村一基は受けるのか?【叡王戦24棋士 白鳥士郎 特別インタビュー vol.19】

 6月23日に開幕した第4期叡王戦(主催:ドワンゴ)も予選の全日程を終え、本戦トーナメントを戦う全24名の棋士が出揃った。

 類まれな能力を持つ彼らも棋士である以前にひとりの人間であることは間違いない。盤上で棋士として、盤外で人として彼らは何を想うのか?

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 ニコニコでは、本戦トーナメント開幕までの期間、ライトノベル『りゅうおうのおしごと!』作者である白鳥士郎氏による本戦出場棋士へのインタビュー記事を掲載。

 「あなたはなぜ……?」 白鳥氏は彼らに問いかけた。

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なぜ深浦康市は立ち上がることができたのか?【vol.18】


叡王戦24棋士 白鳥士郎 特別インタビュー

九段予選Dブロック突破者 木村一基九段

『なぜ木村一基は受けるのか?』

 木村一基九段。
 当代きっての人気棋士である。
 将棋が強いのはもちろん、大盤解説会に立てば大爆笑の嵐。ニコ生の将棋解説でも大人気で、木村が解説なら視聴者が万単位で増えるほどだ。
 そしてタイトル戦に出れば、木村の勝敗を尋ねる電話が新聞社にじゃんじゃん掛かってくるという。
 
『千駄ヶ谷の受け師』の異名を持つ受け将棋の達人にして、将棋界で一番ウケるトークの魔術師。

 今回はその木村に、『受け』の秘訣を尋ねてみた。
 これさえ読めば……明日からあなたも受けの達人!?

木村一基九段

──よろしくお願いいたします。本日はファン目線で、木村先生にお話をうかがえればと思います。

木村九段:
 はい。こちらこそよろしくお願いします。

──将棋世界(2015年12月号)で、木村先生が中村修九段と『受け』について対談されていたとき、受けに目覚めたのは奨励会のころだとおっしゃっておられました。

木村九段:
 そうですね。はい。

──どういう経緯で受けに目覚められたのでしょうか?

木村九段:
 んーと……まあ、基本的には『攻める』というのと質が似てて。攻め駒を『責める』って感じなんですよね。王様を攻めるのと、攻めの主軸になるのを責めるのと、発想はあんまり変わらないように思うんですけど。

──なるほどなるほど。

木村九段:
 まあ、焦らせるとかそういう度合いのほうが強いのかもしれませんね。

──戦意を喪失させる感じなのですか?

木村九段:
 それにも繋がる場合もありますけど、それは相手のことなので。それを狙って……っていう感じでもないですね。

 (相手は)王様を囲ってますよね。だから崩すのにはいろいろコツはあれど難しいわけで。

 けど攻める駒を囲うということはしないので。

──あっ! なるほど……!

木村九段:
 だから比較的、無防備になりやすいということはありますね。

──無防備なほうを攻めるわけですね!

木村九段:
 そういうことですね。

──あの対談では、中村先生の受けとは少し違って、木村先生の受けは『攻めるための準備』だということでした。それはどういう意味なのでしょう?

木村九段:
 やはり、受けっていうのがイメージとして『辛抱』という感じになるので。

──はい。

木村九段:
 でも『攻めるために憂いをなくす』というふうに捉えれば、受けに対してネガティブなイメージを持っている人にとっても『ああそんなもんか』みたいに受け取ってもらえると思って。それでそういう表現をしたんだと思います。

──九段予選決勝では、塚田先生がかなり積極的に攻めてこられて、それを木村先生が受け切るという展開になりました。

木村九段:
 まあ攻めてくる方なので、それは予想していたんですけどね。はい。

──勝利者インタビューで木村先生は、『(本戦では)攻めて勝ちたい』とか『受けると不安になる』とか、そういうご発言がありました。

木村九段:
 はい。

──やはり、もうちょっと攻めて勝ちたいという感じなんですかね?

木村九段:
 やっぱりここ数年は、ソフトとかの影響もあって、駒の損得で優劣が決まるという感じでもありませんし。

 また、攻める技術というのも……たとえば昔は、飛車が主軸だったので飛車を取っちゃえば勝ちみたいなところがあったんですけど。

──はい。

木村九段:
 今は、飛車の代わりに取った香車を下に置けばいい、みたいなのとか。そういう技術が発達したので……受けだけでは勝てなくなってると思います。

 ですので、なんらかの反撃しやすい形とか……手番が来たときにすぐに攻めることができる、それが相手にとっても不安に感じる形に持っていくのが、やっぱりコツになってきて。

 そのへんは、最近だいぶ変わってきたと思うんですけどね。

──なるほどなるほど……2015年の対談の時点でも、『細い攻めを繋げる技術が発達してきた』とおっしゃっておられました。

木村九段:
 はい。

──そこから3年ほど経過したのですが、さらに攻めの技術が向上したと?

木村九段:
 はい。さらに。年々……という感じがします。

──コンピューターの将棋ですと『粘り』もすごいようなイメージがあるのですが、受けの技術というのは発達してきているのでしょうか?

木村九段:
 受けの技術はねぇ…………あんまり変わってないような気がしますけど。

──なるほど。

木村九段:
 プロの認識が変わったのは、天彦さん(佐藤天彦名人)が負けてからですよね。ですから1年半くらい前からという感じですね。それ以前からソフトに注目していた人はいますけど……。

 プロがソフトの技術を活用するとか、意見を参考にするとかは、やっぱ1年半くらいかなぁと思うんです。ここ。

 でまあ、徐々にそういう認識が強くなってきて。序盤から攻める、隙あらば積極的に動くのは、ソフトだったら逃さないですね。最近は。

 ですのでそういうところでは、受ける人は、油断ならない……というか、神経を使うようになりましたね。

──佐藤名人もやはり棋風としては受けといわれることが多いと思うのですが、そういう意味で木村先生もソフトと名人の対局をご覧になって感じるものがおありだったのでしょうか?

木村九段:
 私は昔から、佐藤名人は攻めのほうが鋭いと思っていたので。周りの方がそういう評価をするのは意外だったなぁという感じなんです。

──そうだったんですね。

木村九段:
 それは、人によって捉えかたが違うものですから、誰が合ってるとか間違ってるとかではないと思うんですけど……。

 その点は私が、どちらかというと受けの手を好むからなのかもしれませんしねぇ。

──相対的に、という感じなんですね。

木村九段:
 はい。あんまりだから、意識はしていなかったんですけど。

──木村先生のなかで『この人は受けが強いな』という方はいらっしゃるんですか?

木村九段:
 うーん………………前は永瀬さんとかはそうだったですけど。今は受けに徹してるような感じでもない気がするんですけどね。はい。

 そもそも受けで、目立って勝つということが難しくなっているので。目立つことはもう少なくなるんじゃないかという気がします。

──木村先生は、通算勝率も非常に高いことで知られ……。

木村九段:
 はぁい。ま、かつてはそうだったですけど。

──あ、あはははは……ですが今年は叡王戦でも本戦に進まれて、調子が戻って来たようにお見受けします。何か原因があったのでしょうか?

木村九段:
 いえ。あんまり。

──あんまり。

木村九段:
 ないです。はい。

──何か変えた、というわけではないんですね。

木村九段:
 んー。何か変えた、ってほどでもないんですけどね。

──意識的に棋風を変えるということもないんですね。

木村九段:
 全くないです。はい。

──ありがとうございます。将棋の受けというのはこのあたりにいたしまして……。木村先生というと、トークも非常に受けることで有名です。

木村九段:
 ははは。はい、はい。ありがたいことで。

──昔からお得意だったんですか?

木村九段:
 いえ……まあここ10年くらいじゃないですかね。

──木村先生の棋歴からすると、わりと最近という感じなんですね。何かきっかけなどあったのでしょうか?

木村九段:
 うーん………………慣れかなぁ。

──慣れですか。

木村九段:
 という気がしますけど。十何年前にNHKの講師やったときなんかは全然しゃべれませんでしたからねぇ。

──そうなんですね! 意外です。

木村九段:
 自覚できるくらい上がってましたしねぇ。

 なので、そういうころから比べれば、変わったなぁという気もしますけど。

 ただ、原因が何なのかとか、変わろうと何かしたわけでもなく来ましたので。まあ、慣れ……としか。うん。それ以外に思いつかないですかね。

──大盤解説でも、現地に行って大勢の方の前でされるのと、人のいないスタジオなどでされることがあると思うんです。その2つの違いというのは、何か意識されていることは……?

木村九段:
 なるべく放送のほうは、誤解を招くような表現はしないようにと思ってるんですけどね。

──なるほど(笑)。たくさんの人の前に立って、上がらずに喋るにはどうしたらいいんでしょう?

木村九段:
 いやぁー…………どうでしょう? 慣れるしかないんじゃないですかね。

──慣れるに従って緊張は薄れるものでしょうか?

木村九段:
 緊張は、慣れてもするんじゃないでしょうか。ただ、失敗しようが何しようが、笑ってくれる。笑って許してくれる。そういう感じはしますよね。

第3期叡王戦 決勝七番勝負 第3局で解説を務めた木村九段

──私も知人に熱烈な木村ファンが何人かおりますが、ファンサービスについて何か考えておられることはありますか?

木村九段:
 うーん……まあ普通にやってます。特にこう、大事にしようとかってことは、ないですけど。

 言い方は悪いですけど、私よりも(ファンサービスを)大切にしてる人や、丁寧にしてる人が、棋士でも多くいますんで。だから真似してれば、普通に……。

──そういう方々を参考にしておられるわけですね。

木村九段:
 はい。『こういうものなのだ』と感じますけどね。

──指導対局では、何か意識しておられるのでしょうか?

木村九段:
 指導のときは、すごく厳しくするときと、緩めるときと、そのときによってちょっと違うんですよね。

 それはその場で……ちょっと上手く言えないんですけど、その場の状況で変えてるんですけど。

──中継ブログなどでは、『よーし! おじさんと勝負だー!』と子供に指導してあげている場面などがよく報じられています。

木村九段:
 ああ、そうなんですけど……ただ全ての子供に優しくするかというと、そうでもなく。けっこう強くてプロを目指すという感じの人には、厳しくするようにしていますし。

 覚えたての方に……『やりかたわかんないからじゃあ平手で』って方をクソミソにしたって仕方がないわけで。いやクソミソってのは言葉が悪いですけど、まあそんなふうにしたら、やめちゃうわけで。

──はい(笑)。

木村九段:
 だからそのへんは相手の棋力を見て考えたり。そうしてます。

 かといってアレですよね。『あいつだけ優しくしやがって俺は何だ!』と思われても困りますしね。

──そうですよね(笑)。そこの匙加減は意識しておられると。

木村九段:
 そこは状況を見て判断します。ただ全体的には『厳しい』と言われ……不評なのではないかと思いますけどね(笑)。

──強い子には厳しく指導するというお話が出ましたが……お弟子さんが、プロになるにまで成長してきておられます。

木村九段:
 はい。

──お弟子さんを取られるきっかけは、何かおありだったですか?

木村九段:
 今まではですね、埼玉のドラの穴支部という、こどもを対象にしている支部がありまして。今までは全てそこから取っています。

 で、第1期生が、このまえ四段になった高野(智史四段)なんですけどね。

──推薦されたお子さんを、ご自身でもご覧になって……という感じなのですかね?

木村九段:
 そうですね。紹介してくださる方と親しくお話もさせていただいていますし、その方がよく見てくださっていますので、紹介していただいた子は、まず受けています。

──お弟子さんを育てていくなかで、大切にしておられることなどはありますか?

木村九段:
 プロ目指す子には厳しくするので、弟子には特にそうしてます。あんまり緩くやっても意味ないので。

 ただ……この世界に入って、プロになれるなれないは別として、『修業してよかったな』と思えるようにはしたいという理想はあるんですけど。

──はい。

木村九段:
 それが上手くいってるかは……ちょっとよくわからないですけどね(笑)。

──道を諦めることがあっても、苦労したことを無駄と思ってほしくないということなんですね。

木村九段:
 はい。将棋の場合は、社会に出てから将棋の知識というものが活きませんので。自分が頑張ったという記憶しかプラスになるものがないので。

 だからそういう、自分が頑張ったという記憶は、プラスにしてほしいと思っています。

──なるほど。

木村九段:
 他にはあんまり、何もないのが……将棋界のつらいところですよね。

──修業の中で頑張るというのは、どういうことなのでしょう? 抽象的な質問で恐縮なのですが……。

木村九段:
 うーん…………答えになってるかどうかは、わからないんですけど。

──はい。

木村九段:
 上手くいかないときに続けることができるかどうかは、けっこう大事なのかなぁというふうには思います。

──木村先生の扇子には『百折不撓』という揮毫がされています。

木村九段:
 はい、はい。

──その精神なのですかね?

木村九段:
 そうですね。上手くいかなくても、そういうふうに…………居続けないとダメだと。

 続ければ道が開けることもあるんじゃないかということは、意識してほしいなとは思います。

──私、木村先生に初めてお目にかかったのは……。

木村九段:
 ペンクラブのときですよね。

──ありがとうございます。2016年9月16日の、将棋ペンクラブ大賞の授賞式でした。あのとき木村先生は、観戦記部門の大賞を取られた佐藤圭司さんを祝福されるために、前日に関西で対局があったにも関わらず駆けつけてこられて。

木村九段:
 はいはい。そうでしたね。

──3日前には、羽生先生と戦った王位戦第6局もあって。さらにその数日後には、初タイトルがかかった王位戦の最終局があって……。

木村九段:
 はい。

──そういった状況で駆けつけて来られたことに、会場は大盛り上がりでした。佐藤さんももちろん喜んでおられたでしょうし、出席者もみんな感激して……。

木村九段:
 まあでも……時間があいてたら行きますし(笑)。

 ありがたく思っていただけるのは嬉しいんですけど、行けるときは行くし、行かないときは行かないっていう(笑)。けっこう、そういう単純なところでもあります。

──そうやって、人のために動けるところ。そこに、熱烈な木村ファンが生まれる理由がある気がします。

木村九段:
 そういうところを好意的に伝えていただいているだろうなぁ、というのは感じますね。

 いやぁ、そんなに私は人もよくないし。はっはははははは!

──あはははは!

木村九段:
 毒もあれば、嫌な部分もありますので。

 まあそれがこう……思ったよりは表に出ずですね。ふふふふ。

 いいところを、いいふうに書いていただいたと。そういうところが大きいですかね。

──ただ、ネット中継などで実際に木村先生の声をファンの方が聞くことができるようになったりして、さらに多くの木村ファンが生まれているような印象なのですが。

木村九段:
 ああ、そうですか。まあ、ただ……いやらしい部分もあります。はっはははは! 自分で言うのも何ですけど(笑)。

──そういう人間らしい部分も魅力に感じておられるのではないでしょうか(笑)。

第4期叡王戦 九段予選決勝 塚田泰明 九段 vs 木村一基 九段

──その後、王位戦第7局で木村先生は羽生先生に敗れてしまい、あと一歩のところでタイトル獲得はなりませんでした。

木村九段:
 はい。

──そのときのことを飯島先生(栄治七段)が将棋世界で振り返っておられたのですが……その前の第55期王位戦で敗れたときとは様子が違っていて、かなり前向きな様子であったと。

木村九段:
 あー……そうでしたか。いやいや。

 あのときは確か……陣屋から帰って、飯島さんと松尾さんに酒付き合ってもらって、帰った気がしますけど……。

──そうだったみたいですね。

木村九段:
 前向きというか、うーん…………。

 まあ、サバサバとはしてたのかもしれませんね。

──サバサバ……ですか?

木村九段:
 もうトシですから。

──いえいえ。

木村九段:
 チャンスも少なくなるわけで。

 うーん……やっぱりそういうところは日に日にというか年々、キツくなってんですよね。

 だから想いも、そういうことを思ってやってますんで。

──はい。

木村九段:
 だからサバサバして見えたのは、そんだけ一生懸命やったことが伝わったのか、飯島さんがそう見たのか……そういうことだと思いますけどね。

──まだまだ『タイトルを!』というお気持ちは持ち続けておられるわけですよね?

木村九段:
 はい。そうありたいとは思っていますけどね。

 現実にそれを維持するとか、続けるとかは、難しいとは思っていますけど。

 でも、そうありたいと思っています。

──タイトルが8つになり、さらにその保持者が分散する状況になっています。木村先生はそのことをどうお考えですか?

木村九段:
 うーん…………。

 やっぱり、『タイトルを取れる人は羨ましいな』という感じはしますね。

 ただ、それがどういうせいなのかは、まだちょっとよくわからないです。

──どういう……せい?

木村九段:
 それぞれ優秀なんですけど、その中から……こう、何て言うんですかね? そんなにたくさん(の人が)取れるとは思っていなかったので。

──あー……なるほどなるほど。

木村九段:
 一握りの人が取るものだと思っていたんですけど、今はみんな取ってるような感じがするので。

 そういうところが、何の影響なのか。序盤の研究が、これほどまでに(タイトルを巡る状況を)変える要因になったのか、まだちょっと掴めないという状況ですかね。

──先ほど深浦先生からもお話をうかがったのですが。

木村九段:
 はい。

──深浦先生も、番勝負になれば戦える自信がある。でもそこに行くまでが厳しくなったとおっしゃっていました。

木村九段:
 ああ、そうですね。確かに。挑戦者になるのは厳しくなりました。

──そこはやはり、若手の層が厚くなってきたと。

木村九段:
 それはあると思います。それぞれ優秀な人が多いなぁと思います。

──そこから何が原因で、誰が抜け出すかは、木村先生をもってしてもわからないと?

木村九段:
 そうですねぁ。ただ、取ってる人はみんなすごく優秀で頑張ってる人だなぁというのは感じます。

──ありがとうございます。長々と失礼しました。

木村九段:
 いえいえ。とんでもない。

──今期、木村先生は叡王戦の本戦に初めて出場されるということになりました。タイトル挑戦に近づいておられるわけですが。

木村九段:
 はい。

──勝利者インタビューでは『1局でも多く指せるように』とおっしゃっておられましたが……改めて、叡王戦本戦への意気込みをお聞かせ願いますでしょうか?

木村九段:
 そうですね。相手が誰であれ、1局でも多くというのは変わらないですね。

 まあ1回戦はシードで、勝った方とやるわけですけど……2人いっぺんにかかってくるわけじゃないんでね。

──そうですね(笑)。

木村九段:
 1人だけなんで(笑)。ふふ。そこは安心しました。

──あはははは!

木村九段:
 で。

──はい。

木村九段:
 メンバーを見ても、優秀な人が多くて、頑張ってる人が多いですけど。結局は、自分自身がそれ以上に頑張れるかどうかというところだと思うんですよね。

 さっきのタイトル保持者の若い方の話もそうですけど、そういう人たちに負けないくらい頑張れるかどうかにかかってると思いますので。

──ありがとうございます。木村先生の中で、将棋の才能と努力って、どんなものだと思われますか?

木村九段:
 才能は……あるんでしょうけど、努力によっていかようにもなる。そういうことはあると思いますね。

──なるほど……。

木村九段:
 ただ、いくら頑張ってもダメだというくらいの才能の開きというのは…………あるんだろうなと。天性のものというのは……はい。

──それがもしかしたら、タイトルまでに……。

木村九段:
 行く人か、もしくはそれ以上なのか……まあそういうレベルですかね。そういうこともあるんだろうなぁとは、おぼろげながらに思います。

 

 いかがだったろうか?
 前言を翻すようで心苦しいが、この記事を読んだからこそ、あなたはきっとこう思ったのではないだろうか?

『木村一基のようには、なれない……』と。

 木村はこれまで6度、タイトルに挑戦してきた。
 そして、あと一歩……いや、あと半歩というところまで迫ったものの、タイトルに手が届かないでいる。
 木村はその差が何なのか、おぼろげに理解している。もしかしたら、それは……。

 それでも木村は歩みを止めない。
 百折不撓。
 たとえ100回、身体を2つに折られようとも……木村の心が撓むことはない。

 木村ほど、タイトルを望む棋士はいないだろう。
 木村ほど、タイトルを望まれる棋士もいないだろう。

 私たちは誰もが夢を見る。星に手を伸ばせば、きっとそれを掴めると。
 努力を続けることに意味はあるのだと。
 しかし私たちはすぐに諦めてしまう。結果の出ない努力を続けることほど難しいことはない。

 だから私たちは託すのだ。
 木村一基がきっと、努力の意味を証明してくれると。
 私たちの期待を一身に受け、木村はきっと、この叡王戦を勝ち上がるだろう。

 そして掴むのだ。星を。


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