「作曲を続けるか、経営に専念するか」ゲームサウンドクリエイター坂本英城の悩みを解決したのはCC2・松山洋の“作りつつ社長をやる”生き様だった
必要に迫られて会社を作らないといけなかった
サイトーブイ:
転機というか、急に仕事が来たりしたんですか。それとも地道に?
坂本:
ゲーム音楽を作れればいいという感じでやっていたのですが、フリーで8年やってわかったことは、いわゆる大手のメーカーの方々と仕事をするには個人ではダメだと。契約が「法人同士でないとダメ」と言われてしまうので、法人にしようかなって。仕事を取るために会社を作った。それが有限会社ノイジークロークです。
サイトーブイ:
どちらかと言うと、必要に迫られて会社を作らないといけなかったと?
坂本:
そうです。僕、社員は10人以上にはしたくなかったんです。それ以上に増えると作曲ができなくなって、経営者になっちゃうと思ったんですけれど、今30人ほどいるんです(笑)。
一同:
(笑)
坂本:
なぜ10人を突破したのかと言うと、作曲を続けていくべきなのか、それとも彼らを食わしていくために経営に専念するかと悩んでいたときに、福岡に引っ越すというプライベート的に大事件がありまして。向こうの社長さんたちに会ったら、日野晃博さん【※】にしろ、松山洋さん【※】にしろ、作りつつ社長をやっているわけですよ。
※日野晃博
福岡県福岡市に拠点を置くゲームソフト開発会社「株式会社レベルファイブ」の代表取締役社長。
※松山洋
福岡県福岡市博多区に所在するゲームソフトウェアの企画開発会社「株式会社サイバーコネクトツー」の代表取締役社長。
世界三大 三代川:
確かにそうですね。
坂本:
あんなにいっぱい社員がいるのに、何を弱音を吐いているんだろうと思って。あの方々に刺激をいただいて、「よし、続けてやろう」と思って。
世界三大 三代川:
社員の方々はどういう経緯で入ってきたんですか。
坂本:
ホームページを作って、そこに普通に募集を出していたんです。当時はSEO対策を頼むお金もないから勉強して、「ゲーム音楽制作」って入れたら検索結果が一番上に来るように毎日チェックしてやっています。仕事はちっともこなくて、社員の応募ばかり来るようになりました(笑)。
自由過ぎるゲーム会社社長たちのバーベキュー会
中野:
ゲーム1本をまるっと作曲するんですか?
坂本:
そうですね。フリーでやっていると、この曲のジャンルは書けないとか言ってられないです。オーケストラやロックが混在しているゲームもあるので。そういうときに、「この曲は書けない」とは絶対に口に出せないです。またそれで、曲ができるところと会社が契約しないといけなくなるとか、ご迷惑をかけるので。
その結果、何でも作れるようにならないといけないということになり、そこを頑張りました。どんなジャンルの依頼が来ても、ちゃんと作れるようにしようということになりました。
世界三大 三代川:
それって頑張れるものなんですか。
坂本:
ゲーム音楽家で上手くいくために、やらないといけないこと。ただ限界が来て、他の作曲家のデモを聞いたときに無理だと思ったんです。彼らに勝てるわけがないと思ったんです。その頃からチーム制にして得意な人が得意なことをやればいいよと。スタッフごとにカラーがありますね。
世界三大 三代川:
いろいろやってきたからこそ、勝てないというのもわかるし。
坂本:
わかりますね。圧倒的なんですよ。フリーランスは本当に何でもできないと。僕はお酒が飲めなかったんですよ。ビールの泡を舐めて倒れるくらいの有様だったのが、これじゃ話にならないということで、毎日350mlのビールを飲んで倒れるように寝るっていうので、ようやく今はジョッキ2杯くらい飲めるようになったんです。
特に僕の若い頃なんてお酒で仕事を取るみたいなところがあったので。今は減りましたけれどね。
世界三大 三代川:
僕はお酒を飲むと、松山さんみたいな感じになります。急に寝ちゃうんです。
坂本:
この前も8人くらい社長が集まって、某社長の家でバーベキューをやったんです。1時くらいにはじまって、3時ぐらいに松山さんが「布団」って言い出したんです(笑)。まだ集まって2時間ですよ(笑)。
ぐわ~って寝はじめて、「社長って自由なんだ……」って思って見ていたら、6時くらいでこれからワインでも開けようかなっていうときに別の社長が「俺、帰る」って(笑)。松山さんは横で寝てるし。「何で帰るんですか?」って聞いたら、「7時から整体だから」って(笑)。
8人も社長が集まってバーベキューの帰りに夜7時に整体の予約入れます(笑)?
一同:
(笑)
坂本:
もう、めちゃくちゃですよ(笑)。
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