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地下鉄サリン事件で公安関係者が想定した最悪のシナリオ「日本は彼らの支配下に置かれる危険性があった」

 3月20日で事件発生から23年を迎えた地下鉄サリン事件。3月15日には事件に関連した元オウム真理教信者(以下、オウム)死刑囚の7人が、福岡、広島、大阪、名古屋、仙台のそれぞれの拘置所に移送されました。

 ニコニコ生放送ではライターのジョー横溝さんの司会で、事件にかかわってきたジャーナリストの大谷昭宏さん、映画監督の森達也さん、弁護士の安田好弘さんをゲストに招き、特番「麻原彰晃死刑囚再審弁護人が語る、オウム死刑囚はいま」をお届けしました。仮説が多数存在する事件の動機について、3人がそれぞれの見解から意見を述べました。

麻原彰晃死刑囚の写真を掲げた祭壇。 (画像は公安調査庁公式ホームページより)

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動機は「原理主義的にむき出しだったこと」と「麻原自身、目が見えなくなったこと」?

左からジョー横溝さん、安田好弘さん、大谷昭宏さん、森達也さん。

森:
 報道についての見立てはお二人のお話の通りかなと思います。

 ただ6、7年前かな? インパクト出版会というところから麻原彰晃の身の回りの世話をしていた懲役囚が出所したあとにインタビューに応じて、例えば「どんな様子だった?」と聞かれたら「ご飯をレンゲで食べていた、全てどんぶりに味噌汁からおかずからプリンから全部一つに盛らないと食べられない」みたいなことを言っていた。

 あと「風呂場ではみんなホースで水をかけながらデッキブラシで擦った」というふうに言っていたので、状態が良くなるということはありえないと思うので、今回の報道がどこまで正しいのかそのあたりがよくわからない。

 とにかく僕は今回この13人の死刑囚、麻原彰晃を別にしたら12人ですけど、そのうち6人と面会したり手紙のやり取りをしたりしているので知っている人なのです。だから自分の知り合いが6人もし一気に亡くなるということになったら自分がどんな心境になるのかちょっと今はわからないですね。

 早くもちょっともう……ちょっともう気持ちが落ち着かなくなっていますね。

ジョー横溝:
 地下鉄サリンの話、今、森さんから問題提起があったので、動機も解明されていないということで、森さんはこれは全部想像の域でしかないですけども、麻原さんの最後の論告求刑のときにいらっしゃったのですよね。

森:
 求刑ではなくて一審の判決公判に行きました。

ジョー横溝:
 一審の判決公判にいらっしゃったのですね。あるいは信者の方の取材をなさっているのだと思いますけども、どんなふうに動機というものを推測していらっしゃいますか。

森:
 推測ですよ。 一つじゃないです。僕は半分以上、まず宗教的なものが介在していると思います。宗教的なものって、もうちょっと具体的に言えば非常にオウムって原理主義なのです。仏教もしくはチベット密教、ヒンドゥー教を全部足しながらどれでもいいのです。いずれにしてもすごくファンダメンタル【※】なのです。

※ファンダメンタル
基本的なこと、根本的なこと。

 ファンダメンタルな宗教というのはどのような特徴を持つかと言うと、要するに死後の魂ですね。それが輪廻転生する、もしくは極楽に行く地獄に行く浄土に行く、あるいは生まれ変わる。つまりどんな宗教にも共通していることは、魂の普遍性なわけですよね。

 もちろんだからファンダメンタルということはそれを強く信仰するわけで、ということは人を殺すということの意味が変わります。宗教の中ではそれは歴史的に宗教組織というものが、どんなことをしてきたかということをいくらでもあげることができる。ただ同時にやっぱりそれでは現世と折り合いがないので、そうしたところはどんどん無くしていくのが既存宗教ですね。

 オウムの場合はそれがかなり原理主義的にむき出しだったということが一つ。あと僕は麻原自身、目が見えなくなったということがかなり大きいと思っています。目が見えないから彼は新聞を読めない、テレビも見られない、だからこそ側近たちが麻原のメディアになった。

 これは今の僕たちの社会とメディアとの関係と同じなのだけれど、メディアはとにかく要するに視聴率を上げたい、もしくは部数を伸ばしたい。じゃあどうすればいいか刺激を与えるわけですよね。まさしく側近たちがその役割を果たしてしまった。フリーメイソンがどうとか米軍がどうだとか自衛隊がどうだとか、そして危機的な情報ばかり麻原に吹き込むようになってきた。

 大きくはこの二つかな。あとはただもちろん麻原に破滅願望があったとか、いくつかそういう仮説もありますけれど、もちろん仮説ですよ。確かめようがないですから。

選挙の大敗が破滅的な行動を招いた?

ジョー横溝:
 ちょっと順番に大谷さんの意見も聞いてみたい。

大谷:
 いろんな考え方があってですね。要するに彼は不条理に対する最終戦争だと、いわゆるハルマゲドンだと言っていたのだと。それの具現化のために、地下鉄サリンを仕込んだのだろうというのを、あの当時はよく言われていたのですね。それからもう一つは選挙に出て行って、まさかまさかのボロ負けをしたと。

 それで麻原としては非常に見通しが狂った、とんでもない話になった、これは陰謀なのだという話が出てきて、でも誰もそんなことは信用していないという中で、ある意味では破滅的な行動に出て行ったのだろうということは、十分にありえたのだと思いますね。ただ怖いのはこの地下鉄サリンが敢行されてしまったあとですね。

 一部の公安関係者からは、「本当に我々が油断していたら、1日か2日は我が日本国は彼らの支配下に置かれる危険性があったのだ」と、「それぐらいの事件なのだ」と言っていたことは事実なのですね。そうするとハルマゲドンだ、世界戦争だというのも必ずしも戯言ではないという状況は、この事件の中にあったと思うのですね。

 これは事件の規模からすると、13人の死者というのは奇跡的に少ない。6300人は少なくともサリンの影響を受けている中で、13人の死者で悪く言えば大変お気の毒なことなのですけど、その数で済んだと。これは逆転していたら本当にどうなっていたかわからない。

ジョー横溝:
 その可能性は大いにあったということですよね。6300人の死者というふうになった可能性は大いにあったと。

大谷:
 危険性はあったということですよね。

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