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『ユーリ!!! on ICE』 監督・山本沙代の熱すぎるフィギュア愛を友人漫画家が語る

 完全オリジナルの本格フィギュアスケートアニメ『ユーリ!!! on ICE』。アニメファンのみならずフィギュアスケートファンをも虜にし、さらには世界女王メドベージェワ選手もこの作品にハマりTwitterで発言するなど各所で話題となった。

 普段あまりアニメを見ることのない漫画家・山田玲司氏もこの作品を楽しみにしていたという。山田氏は『ユーリ!!! on ICE』の監督である山本沙代氏と友人であり、山本氏のアニメ仲間と一緒にフィギュアスケートを観戦しに行ったこともあるという。同作品、フィギュアに対して山本氏はいったいどんな想いを持っていたのか、「山田玲司のヤングサンデーチャンネル」で公開中の動画「『ユーリ!!! on ICE』総括」内にて山田氏が語った。

※本記事には『ユーリ!!! on ICE』のネタバレが含まれます。ご了承の上でご覧ください。


フィギュア界の片隅は男子禁制?!

山田:
 『ユーリ!!! on ICE』の放送が終わったんだけど、一部では熱狂的なとんでもないお祭り状態だったみたいじゃない。少し前のおそ松さんロスみたいな事が、あの界隈で起こっているなってのがあって、久しぶりにこの現象が面白いなって。フィギュア界のこの世界の片隅がこんなんなっていたなんて!

乙君:
 プロレスファンってすごいじゃないですか、女子の世界でそういうのってBLだけかと思ってたんですけど、全然フィギュアも凄かったっていう。どんだけ詳しいのって人ばっかり! しかも一流のアニメーターさんとか、監督さんとか美的センスがある人がもの凄いドップリハマってて。

山田:
 あの世界がアートであり、ショーでありスポーツであるという幾つもの層に重なっている魅力みたいなものがあって、それをアーティストが発見してたんだよね。それがコンテンツ化出来ない状態でずっときてたのがフィギュアの世界だなと。

乙君:
 誰も手を出してなかったフロンティアだったんですね。

山田:
 ちょっと宝塚の世界に似てる、だけどスポーツなんだよ。自分を極限まで追い込んで何かを作る意味もあって、熱血でもあるっていう色んな要素を見事に引っ張り出したなって。それでもちろんこれってBL展開で誰が見てもゲイの世界を描いているんだよ。でもそれに対する言及がゼロだったでしょ。

 だから『「勇利」「ヴィクトル」「俺達は男だよな?」』というのがまったくないの。俺の時代はそれを意識して作っていた、どっかで。それに対する社会の偏見とか差別みたいのは良くないおかしいよ、という葛藤みたいなものはそれこそ竹宮惠子さんの時代からずっとあった流れだった。

 でもコンテンツの世界ではオトコがオトコを愛するのに関して、別にフツウじゃんというのがもう20年前位からずっと続いてきてからの『ユーリ』なんだよね。

乙君:
 『ユーリ』はそこがすごく上手くて。直接表現じゃなくて、あり得る関係性なんですよね。コーチとスケーターという……。

山田:
 そう。擬似恋愛であの世界では当たり前にあるという。

乙君:
 いわゆるスラムダンクとか、そういうものの同人でワーッとなった世代の人がインフラを整備して、その流れの中でおそらくみんなそういうのが当たり前になった世界だから、スッと「まあそうだよね」って感じで入れた。もしセックスとか三角関係とかがあったらまた全然違うんだけど。

山田:
 エースをねらえ!とか、ガラスの仮面なんだと思うんだよね、ルーツは。それくらい熱血のノリがあった。もうちょっと恋愛要素があったらいいのになっていうスポ根ものに対するアンサーだったような気もした。めちゃめちゃ勇利が女子なんだよ。

乙君:
 あ~。

山田:
 普通はありえないくらいの女の子のリアクションするんだよね。「もういいよ帰って!」とか「一緒に買物行こうよ!」とか、指輪一緒に買うとか……。話の後半にコーチのヴィクトルと勇利が二人でオフを楽しむという話があって、試合の直前にオフを楽しむってのはスポ根のパターンの一つであるんだけど……。

 まあそこにガチな恋愛突っ込んだよね。信じられないくらいの。二人はデートしてしかも買い物するんだよね、荷物持たせまくるみたいな。あれはね~、なかなかちょっと見たことない位に女子だよね。

乙君:
 そうですね~

山田:
 お揃いの指輪をして二人だけの世界、そしてリンクに出ていく勇利……。ちょっとこっちが想像してたより先に行かれた感じ。

乙君:
 そこはね、見てられなかった。

山田:
 見てられないでしょ? あれは男達を置き去りでしょ? 前に沙代ちゃん【※】と一緒にフィギュアの会場行ったでしょ、あそこ俺たち入っちゃ行けなかったんだよw

※沙代ちゃん
山本沙代。『ユーリ!!! on ICE』の原案・監督。

乙君:
 かもしれないですね(笑)。

山田:
 それくらいの世界になってるんだな、というのは感じたよね。

乙君:
 ポップ化したというか、もっと露骨に描けたと思うんですよ。そうじゃなくてみんなが楽しめるエンターテインメントの方にちゃんとしたからみんなにうけたんだと思います。それと他のキャラ。僕は後半の方が好きなんですけど、そんなにまわりのキャラをちゃんと描くの? って思って。

好きのチカラは半端ない! スケオタ目線で作った作品

山田:
 僕は久保さん【※】は面識ないからわからないけど。沙代ちゃんが作る事はよく分かるんだ、話聞いてたから。山本沙代さんが生きている世界が観客席、沙代ちゃんの世界なんだよ。だから知ってる人いっぱい出てきたよ(笑)。よく知った人が出てきた。沙代ちゃんの友達なんだよ、基本的に。応援する人の気持、リンクに入れないんだけどそれに憧れてて応援する。

※久保さん
久保ミツロウ。漫画家、『ユーリ!!! on ICE』の原案・脚本。

 昔、沙代ちゃんに聞いたんだよ。あまりにもスケートに詳しいから。「ぶっちゃけ誰が一番好きなの?」って。そしたら、その世界を全部好き! ていうやつ。「その世界の人達を全員推してるから選ぶことはできません」て。その思想があるから、後半の選手全員が出てくるグランプリファイナル、全員に演技シーンさせてるだよね。

乙君:
 そう!! 「イッツJJスターーーイルッ!」

山田:
 あれさ、どう考えても倍はかかるよコストが。あんだけ動いてるんだもん。それくらいのチカラでやらないといけないと思って、誰も切らなかったんだよ。

乙君:
 ディーン・フジオカの曲も良いよね。主題歌。

山田:
 俺からは言えませんし情報は出せませんが、この後の『ユーリ』の展開は期待できると思いますよ。このままで終わるわけないんで! みなさん期待してていいと思いますよ。みんなが望んでるような事を多分沙代ちゃんが考えてると思うんで……。

 このないだ、アニメが終わってお疲れ様でしたっていうLINEやってたら、「一介のスケオタに戻ります」ということを沙代ちゃんが言ってました(笑)。

一同:
 (笑)

乙君:
 スケオタって言うんだ?

山田:
 あの人、スケオタ目線で作ってるんだよ。だからスゴイんだよ! ルッツとかさ、現場に行かないとわからない動きとかあるよね。

乙君:
 でもまったくスケート知らなくても楽しめます。素人と玄人どっちも喜ばせるって相当のセンスですよ。

山田:
 好きのチカラだなって。直前にいっぱい色んな仕事してたの、沙代ちゃん。だけど一番好きなものやったときは半端ねーなって思った。これやれればもう満足ですって所まで行ったなって感じがした。

 俺はずっと見てたから思うんだけど、個人の気持ちで世の中って変えられるっていうか、引っ張っていけるっていうか、ここまでやれちゃうんだっていうのを目の当たりにした感じがした。「フィギュアのアニメが出来たらいいと思うんですよね〜」って言ってたなぁって思ってたら……、そしたら大成功したという。

 これは希望だね。この世界の片隅にの大ヒットもそうだけど、今回の『ユーリ』のヒットも希望だし、好きなことやっていこうよっていう気持ちにさせてくれたよね。

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