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欅坂46のナチス軍服コスプレは秋元康の心象風景だったのか?

 今、世間で話題のニュース、エンタメ、サブカル情報を斬っていくワイドショー番組『ニコ論壇時評』。11月9日の放送では、先日世間を騒がせた「欅坂46 ナチス軍服コスプレで公式が謝罪」騒動について取り上げました。
 衣装のデザインやモチーフがナチスドイツを想起させるものであるとして、世界でも報じられてしまったこの騒動から山田玲司氏が読み取ったのは、思いもよらない要因の可能性で……?


今回の騒動は炎上商法だったのか?

乙君:
 欅坂46がナチス軍服コスプレ、公式が謝罪ということですが……。どうですか、これは。

山田:
 いや、アイドルグループがナチスの服を着て怒られましたって話じゃない。そりゃ怒られるよな。

一同:
 (笑)

山田:
 そりゃ怒られるわ。かつてここまで世の中が不寛容だったかって話は別として。

乙君:
 わざとなのかどうかだよ。もう本当、それに尽きる。

山田:
 炎上商法かどうか、みたいな。それはみなさんご存知でしょう。そういうこともあるよなって。まぁこれが炎上商法でないのなら脇の甘いことするなって感じだし、やすす(秋元康氏)ドキュメンタリーだったら「誰だ責任者出てこい!」っつって呼び出して、「なんだよ〜」って頭抱えてる絵が浮かぶっていう。
 ……でもそれもひっくるめて、俺らはこの騒動によって「欅(けやき)」って字が読めるようになったわけじゃん。

一同:
 (笑)

 

AKBグループの詩を読めば、その時の秋元康が解る

山田:
 いや、俺、秋元康って人の人生はすげえ面白いなって思ってて。大学の頃やそれ以前もモテなくて、何かの残像というか思い残しみたいなものをのっけてアイドルに男の理想を躍らせては、いろいろな戦いをしてきてさ。
 しかもその頑張ったぶんをフジテレビに全部持っていかれたと思ったら、今度は「全部自分でやるぜ」みたいな、チェキっ娘外したら「今度は秋葉原だ!」みたいなところがさ。やすす一代記っていうか、これはなかなかすごい人だなと。

乙君:
 結構評価してますよね。

山田:
 評価してるっていうか、単純に面白くね? またいちばん面白いのが、彼が実は詩人であるってことなんだよ。

乙君:
 そうですね。

山田:
 詩を書いて、その詩で食ってる人なんだよ? えげつないビジネスを一方でやりながら、詩も書いてるわけ。だからその詩に、その時期ごとのやすすの気持ちが出ちゃう。それがすごく面白いなって思ってて。

乙君:
 はいはい。

山田:
 AKB48の『翼はいらない』って曲、あれは『翼をください』のオマージュなんだけど、まあ実に50代後半の人が言いそうな……。『翼をください』懐かしいけど、でも何十年かけてアンサーソング作ってんだって話じゃん。

 飛んでもどこに降りたらいいのかわからないし、どこに行ったらいいのかわかんないって感じの詩で、要するに「迷走してますよ」っていうことを曲にしちゃってる時点ですでに面白いのに、今度はあれだけメンバー間で戦わせてたくせに、『僕たちは戦わない』って言い始めてさ(笑)。

 この曲では「殴り合いをしたって時は解決しない」とか、「拳を振り上げて降ろそうよ」みたいなこと言ってんだけど、「お前ら殴り合え」って言ってんの誰だよ、やすす!
 アイドルなら歌って踊ってちやほやされたいみたいな気持ちはあるよ、みんな。だけどそこで「お前らいい加減殴り合え」って言ってバトルショーを商品化してきたのはやすす、あなたじゃないですか!っていうさ。なのに『僕たちは戦わないんですか』って!

一同:
 (笑)

山田:
 そしてですよ、いよいよ欅坂46になってくると、『世界には愛しかない』って言い出すんですよ!

乙君:
 おお〜。

山田:
 ♪オオ〜ゥ!イェ〜イ! ……ってね。

乙君:
 相田みつをみたいになってきたね。

山田:
 違う違う、後期ビートルズでしょこれ。

乙君:
 あぁ、そういうこと。

山田:
 『ALL NEAD IS LOVE』って題して『let it be』。もう『The Long And Winding Road』な気持ちなんですよ。だからすげえなって思って。後半に入ってやばいことになってくると、だいたい大きな愛を歌い出しちゃうっていうね。

秋元康は成功によって放課後の教室に囚われた

乙君:
 まぁでも、それはだいたいみんなそうですよね。

山田:
 だからやすすは……。

乙君:
 愛を歌い出したらもう終わり?

山田:
 いやいやいや、大きな愛を歌っちゃいけないやすすが何を歌ったら良いかっていうと、彼は放課後の教室にいないといけないんだよ。

 やすすはね、放課後の教室と渡り廊下から逃げられなくなったんだよ。タモリさんが新宿昼間の牢獄から逃れられなくなったように、やすすは成功によって、放課後の教室にずっといないといけなくなっちゃったの。

 今回もまた、やすすは放課後の教室について語ってるんだけど、今回の詩で面白いのが「もうすぐ夕立がくる」みたいなこと言ってるんだよね。それがまたいいな〜と思うわけ。「夕立くる気分なんだ、この人」みたいなさ。で、「夕立が終わったら晴れる」みたいなことを歌って終わるんだけど、これってもしかしてさ〜!

しみちゃん:
 何すか? 何すか?

乙君:
 ……いや、めっちゃ聴いてんなって思って……(笑)。

山田:
 だって論客なんで。下調べくらいさせてくださいよ。

乙君:
 論客ということのようにしといてなんかね。うん、まぁまぁ(笑)。

山田:
 いやいや、やすすに何も貰ってないですよ(笑)?でもこういうのってさ、俺は『ヒットラー』って映画を思い出すんだよね。後期ナチスの地下壕にいる気分みたいな。

乙君:
 すごい!

山田:
 外は敵ばっかりなんですよ。「もう放課後の教室にいなくてもいいよ、……っていうか放課後の教室にみんな興味ないよ」って声がすでに聞こえてるの、やすすには。

乙君:
 はい。

山田:
 つまり、もう近くまできちゃってるわけ、ロシア軍が。

乙君:
 例えが……!

山田:
 だからそんな気分が、無意識からのシンクロニシティであの格好をさせてしまったとしたら。……なんか、そんなことを思ってしまうよなって話ですよ。

 だけど詩人の思い、私小説でやっているような個人の思いを「お前もそうだよな!」って共感ビジネスでやっていける限界点みたいなものは必ずあって。ここから先はもう劇団四季になるか宝塚になるかしかない。だからAKBってなかなか存続が難しいと思うんです。

乙君:
 うん、そうだと思います。

山田:
 それに、仮に劇団四季や宝塚になったとき、きっとAKBが持ってた歪な面白さを失うんだろうなって。これってまさに宮崎駿のいないジブリになっちゃうだろうな……って話でもあるんだよ。

一同:
 あぁ〜。

山田:
 ……ってことなんです! だから「やすす頑張れ! 渡り廊下から逃げんじゃねえぞ!」……みたいな。いや嘘です。

乙君:
 どっち(笑)!?

山田:
 何だよ、だってかわいそうじゃん。何かさ、本当言うとやすすもテレビ見ながらブツブツ言ってるおじさんなんでしょ。渡り廊下にいないよ、もう。だけど、「次のメンバーです」とか言って少女たちが次々来て、そしたらまた放課後の教室に戻んなきゃいけないんだから。これは重労働だろうなって思うよ。

乙君:
 でも多分ビジネス渡り廊下隊でしょ? あの人。それを求められて、かつ需要があるからそれを提供し続けているわけで。

山田:
 でも、かつては本物だったんだよ。

乙君:
 かつては本物だったかもしれないけど。

山田:
 そうじゃないと、そんなに騙せないよ。

乙君:
 まぁ確かに。

山田:
 だけどそれを続けていこうってなって、10作目、20作目ってなった時、地獄だよね。

乙君:
 まあね……。

次回の「山田玲司ニコ論壇時評」はコチラ

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