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【北朝鮮の車窓から】盗聴・監視は当たり前、旅客1人にお付3人の安心安全(?)な北朝鮮の旅に行ったら色々ぶっ飛んでた

 潜入ライターとして活躍するニポポ氏(@tongarikids)が「生きている間に共産主義の感覚を味わいたい!」と思い立ち、北朝鮮旅行を敢行! その様子を詳細に語ったレポート番組がニコニコ生放送にて配信されました。

 今回は、“第一章(全十三章)”として入国の手続きから宿泊施設の紹介、北朝鮮の食事情まで。謎に包まれた北朝鮮の現地の様子をたっぷりお届けします。

 ニポポ氏によるその他レポートはコチラからどうぞ。

※本記事は2017年8月公開の記事に、編集を加え再掲載したものになります。


北朝鮮入国の手続き

ニポポさん。

ニポポ:
  まず僕が北朝鮮に入った理由を話しておくと、我々の住んでいる社会は資本主義でして、共産主義とか社会主義というものは絶滅危惧種に近い存在じゃないかなという感覚がありました。だから生きている間にこの感覚を味わっておくべきなんじゃないかなと思った。

 うちの父親も結構いろんなところに行く人間だったんだけど「崩壊前のソビエトに入れて本当に良かった」って言っていた。やっぱり共産主義の空気感って独特じゃないですか。あれを肌で感じることって、もしかしたらこの後なくなってくる可能性があるんじゃないかなと思った。崩壊するとかしないという問題ではなく体制って変わって行くものだから。我々が頭で描いているような社会主義とか共産主義って、恐らく今は北朝鮮にしかない。それで入ってみたというのが理由の一つです。

ニポポ:
 ということで、まず北朝鮮に入国するのですが、これが難しいんですよ。今は激安海外パック旅行とかあるじゃないですか。韓国は2泊3日、ホテルと食事がついて7900円だった。すごく安いですよね。ではちょっと北の方へ行きましょう……となると35万円(笑)。
 
 日本人が北朝鮮旅行をしようとなると、おおまかに3パターン行き方があるんです。その一つは完全なオフィシャル。二つ目がやや公認みたいな感じ。三つ目がかなりアンオフィシャルに近い、いわゆるファンの方であったり、北朝鮮マニアの人が手引きしていたり、北朝鮮の誰かと通じているとか、貿易のつてがあるとか、そういう人が入れてくれるというルートがあったりするんですね。価格もオフィシャルが一番高い。そこからさらにちょっと下がるくらいなのがやや公認というところ。アンオフィシャルに近いのは安いです。上下の幅で言うと15万円くらい変わるかな。

 真ん中くらいのパックがちょっと安心で自由度が結構高くて、「ここ行きたいんだよ」とか、「こんなところ見てみたい」というと、ある程度聞いてくれるので真ん中のパターンで飛行機で行ってまいりました。これが2011年末の出来事です。

 この「2011年末」というキーワードで、ピーンと来ちゃった人もいらっしゃるかと思いますけども……そう、金正日さんが死の淵の時に行ってみたんですね。国籍が北朝鮮の方とか、北朝鮮からこちらにいらっしゃっている方に、「2011年に行ったんですけどね」と言ったら「最近だね!」と結構言われる。やっぱり向こうの人にとっても行く機会があまりなかったり、実際問題、渡航が結構難しいんですよ。近くて遠いという存在になっちゃっているんですね。

 では、その公式ツアーのパンフレットで入国手続きを追ってみましょう。

撮影:ニポポ

ニポポ:
 病気および事故は絶対あってはならない。持ち込み禁止の所も結構いっぱいあります。いかがわしい印刷物ですとかね(笑)。持ち込み品とかも厳しいんです。例えば今だったらみんなスマホを持っていて持ち込みたいって思うじゃないですか。これは空港で没収です。帰りの航空券と引き換えで返してもらえるという感じです。

 秩序を乱すものダメです。要は日本の活字とかダメなんですよね。弾丸もダメですとかね(笑)。ビデオカメラとかも一応いいって書いてあるんだけど、例えば「22倍望遠になります」というのもバレたらダメね。「6倍以上のズームができちゃうといかんぞ」ということになっちゃっていますね。病院は3ヶ所あればいい方です(笑)。

 僕は本当に行きたくて「北朝鮮旅行です」と言ったんだけど、ひやかしだと思われてすごく疑われた。結構冷たいんです。何が困るってビザがおりない。身元照会というのがあって、自分はこんな仕事をしていて、こんな顔で、こんな素性ですというのを調べてもらう。その身元紹介料というのを自分が払わなきゃいけない。身元照会でダメだったらそのお金はもちろん返って来ないんですよ。でもその返ってくる、こない以前に「返事がこなかった」というのが僕のパターンなんです。

 返事がなかったらどうするかというと「もう行ってみるしかない」って思った。でも北朝鮮って日本と国交がないから、中国経由ないしはロシア経由で入るしかないんだけど我々から近いのは中国経由なんです。中国経由で飛行機で入るんですけども、ここでビザがないと、「北京の空港の中のこの位置に、この時間に来い」っていう指令がおりる(笑)。

 そのとおりに行くと会議机を女の子が広げてそこにファックスを設置して「次、お前来い」みたいな感じで一人ずつ呼ばれるんですよ。呼ばれていって、「今日から北朝鮮に入る者なんだけど」みたいな話をすると、電話とファックスで本国とやりとりをするんですよ。それで、しばらくすると、ファックスからなにかが出てくる。それがビザなんですよ。

撮影:ニポポ

ニポポ:
 これがビザです。ビザの下にA4の紙があるのはわかりますか。僕、これはいらない紙なのかな、と思ってクシャクシャとやっちゃったんですけど、実はこれ、帰りの航空券です(笑)。「あなた、紙はどうした? なくしたら帰れないよ!?」と言われて到着早々冷や汗かきましたよ。ビックリしましたけれども、一応カバンの奥底から見つかって事なきを得たんだけど、向こうから手渡されるものに無駄なものはございませんから、捨てないようにみなさんも気を付けて下さいね。ビザをこうやってもらって、ようやく飛行機に乗り込むんですよ。

第一の試練を乗り越え宿泊ホテルへ

ニポポ:
 飛行機は座席指定です。さすがに自由席ではないです。座席指定があって自分の席の所に行くと、すでに俺の席に座っている人がいた。そこに座っていたオッチャンなんだけど、やたらかっこいい。髭を生やして、昭和の銀幕のスター、銀幕のスパイヒーローみたいな感じのダンディなオッチャンが座っていた。

 「そこは僕の席なんだけど」と、僕もつたない英語で話しかけたんだけど「いいじゃないか、座れよ」みたいな感じで返された。俺は外を見るのが好きだから窓際に行きたかったんだけど、オッチャンがそっちに座っているから、通路側に座らされたんですよ。なんだか知らないけど、やたら「何しに行くんだ」とか聞かれました。「ただの観光だよ」って話をしたり、「国では何をやっているんだ」とかいろんな話をして、本当は窓の外の景色とかを見たかったのに、もう着いちゃうんですよ。

 飛行機に乗っている間も超忙しいですよ。何が忙しいのかって、飛行機の中でやらなきゃいけないことがいっぱいある。紙を4、5枚渡されるんだけども、コイン1枚に至るまで持ち物を全部書き出さなきゃいけない。外国人はみんなやらなきゃいけないので自分も書いていたんだけど、オッチャンはそんなこと関係ないみたいな感じで、バンバン話しかけてくる。なんとかそれを書き終えてオッチャンも満足した感じになったところで到着しました。

飛行機の窓から見える北朝鮮の空港の滑走路。撮影:ニポポ

ニポポ:
 最初、火星に着いたのかと思いましたね。『トータル・リコール』のロケ地かと思いました(笑)。北朝鮮の空港って滑走路だけが無駄に長い。軍事利用がしやすいようになってるんです。

 そこで、先程の持ち物の紙なんですが、これは中国の人であっても、韓国の人であっても、みんな全部やらなきゃいけないんですけれども、となりに座っていたダンディなオッチャンが紙をクシャクシャクシャって捨てて出ていったんです。「あっ……ここから北朝鮮は始まっているんだ……」と思って。恐怖心を最初に試される大地ですね(笑)。そういうところをひとつひとつ味わって人間は大きくなっていくんです。

ニポポ:
 その試練を味わったところで、お迎えがやってきます。北朝鮮旅行は、北朝鮮いわく「世界最高の高級パック旅行」なんですよ。価格も高いじゃないですか。高級パック旅行だから、なんと一人に対してお付きが三人。豪華ですよね(笑)。専属運転手、専属通訳、専属ツアーガイド。この三人に囲まれながら歩くという形になっています。

 この御三方なんですけれども、ガイドさんと通訳さんはだいたい女性。日本語を勉強している方なんですけれども、運転手さんは、だいたい日本語ができない。ツアーガイドの人は、入国する人によって変わるらしいのですが、僕はたまたま、日本代表のツアーガイドをやっていたオッチャンがついてきた(笑)。実は2011年末に日本対北朝鮮のサッカーの試合があったんです。そんな重鎮がなぜか僕についてきちゃった(笑)。

 しかも着いたら大雨。日本語通訳の女性も慣れてないから、あんまりボキャブラリーが多いというわけではない。「あなた、いい人だから、天気もこんなに素晴らしいですよ」とか言うんです。いやいや、大雨だよ(笑)。ボキャブラリーがちょっと間違っているよ、みたいな可愛さがあったりしました。そして車に乗せられてホテルに到着しました。

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