「どう考えても賭博」580億円流出のコインチェック騒動を受けコメント【津田大介×東浩紀×夏野剛】
東浩紀のコインチェック体験記
東:
これが、俺の買っている現実だ! ちゃんと取引しているぞ!
津田:
こういうことで、ネタにできるという権利のためだけに20万円を突っ込んだ。
東:
これ、10秒ぐらいすると金額が変わるんだよ。今12万5970円。あ、80になった。今も値段が変わったんだけど。これ、僕はやりはじめてわかったんだけど、これがいいのよ。これは、高校生とかやったらハマるよ。
だって、10秒毎に金額が変わるんだよ。夜中の午前4時に起きたら、時刻を見る前にコインチェックを立ち上げるようになる。「うーん。いやいや、まだいいか」と見て、また寝るの。
津田:
買った翌日とかに破綻?
東:
違う違う。僕が買ってたのは、ビットコインが1月中旬ぐらいで、すごく暴落したときに、暴落の3分の2くらいのところで買ったわけ。「ここで掴めば、これから結構ボンといくんじゃないか?」「ビットコインって下がると言っても、こういう感じだから」とか、素人考えでね。
で、買ってみたら、「あれ? まだ下がっているよ。とりあえずこれ、元本割れは阻止しなければ」みたいな感じで、僕が20万突っ込んだのを20万6000円で売って、そのまま撤退する予定だったわけ。
津田:
最初は、ビットコインを買って、6000円の利確をしたんだ。
東:
そう。それで、「6000円、よし!」と。この3日間もすごく楽しんだし、もう充分だと思っていたんだよね。
だけど、そのときに津田さんが前に言っていた。「ビットコインはダメかもしれないけど、イーサリアムは確実に儲かるんじゃない?」という言葉が耳にきて。「確かにイーサリアムはそこまで下がってないよな」と考えはじめて、イーサリアムを買っちゃったのよ。
津田:
でも、それ、俺のせいでも、イーサリアムのせいでもなく、コインチェックという信頼できない業者を選んでしまった東浩紀の自己責任じゃないの?
東:
でも、コインチェックの宣伝とかを見て、俺がやりたかったのはコインチェックだったの。一番のきっかけは、どこかのニュースで年末から今年にかけてのビットコインの急騰というのは、日本の個人投資家が支えているんだという。
夏野:
そうだよ、86%。
東:
そのニュースに、すごく関心を持って、「それはどういうことだ? なんでそんなに大量の日本人が行っているんだ?」と。それは、やっぱりアプリだろうと。ならばアプリを自分で使ってみるしかないなというところで、コインチェックのアプリを自分で使い始めてみたら、確かにハマって。チェックしていてずっと面白いのよ。
俺は、ハマったときはもっと突っ込めば良かったと思っていたのよ。しかも、このアプリがすごく適当というか簡単で、20万突っ込むじゃん。で、「コインを買う」って書いていて、デフォルトでビットコインの変換の数字が書いてあるわけ。
「購入する」ってボタンを押すと、普通は、ダイアログが出ると思うじゃないですか? 「いくら購入するんですか?」とか、「本当にいいですか?」とか、出ない。「購入する」というボタンを押したら、ビットコインが買われちゃっている。20万。「ええ! 全額ビットコインに行っちゃったの!? 俺は少し遊ぼうと思っただけなんだけど、まあ、いいか」って。
津田:
bitFlyer【※】は、一応、「数秒間のうちに承認するか?」みたいなインターフェイスだから。
※bitFlyer
株式会社bitFlyerが運営する仮想通貨交換業取引所。
東:
しかも、僕はやらなかったけど、右上の方に「レバレッジで買いますか?」みたいなメニューがあって(笑)。
津田:
やばい(笑)。
夏野:
危険(笑)。
東:
これは、俺やってないんだけど、「100万円以下の入金の人の場合は、5倍までしか使えません」とか、書いてあるんだけど。つまり、5倍まで使えるの!? って。
津田:
100万円分。
東:
そう。100万円分使っちゃっていたら。
夏野:
やろうやろう。
東:
今は買えないから、やれない。
津田:
レバレッジしていたら最高だったね。
東:
レバレッジしてたら俺80万突っ込んでたよ。追証【※】を。
※追証
おいしょう。追加証拠金。代用有価証券が値下がりしたり、信用取引をしている銘柄に含み損が生じたりした場合、委託保証金が「最低保証金維持率」を保つために必要な額を下回った時に追加で用意する不足分の保証金のこと。
一同:
(笑)
夏野:
最高だね。
規制がかからない危険なアプリ
東:
冗談じゃないよ。だからこれ、すごくやばくて、とんでもないアプリだと思ったもん。
津田:
とんでもないアプリというよりか、とんでもないサービスなんじゃないの? それに、どう考えても賭博なのに、まったく規制が入っていないってことでしょ?
東:
あと、クレジットカードでも買えるのもやばくって、クレジットカードだと、もっとパーセンテージが悪いんだけど。それも掲示板とかで悲鳴が上がっていて、だから、クレジットカードで買うと……。
津田:
要するにクレジットカードの枠、全開で先物買いをするわけね。やばいね。
東:
これが最悪なの。だから、現金を入れられなくても、今、ビットコインのチャンスを逃そうとしているとき、日曜深夜とか、今突っ込むべきなんだけど現金がない場合、クレカで100万までいける。ずるい。
津田:
もう、このままじゃ俺はカード破産だ。だから、最後にコインチェックでやろうみたいな。bitFlyerには、そういうのなかったと思うんだけどな。
東:
コインチェックは絶対やばいと思ったよ。だから、すごく楽しんで、破綻したときも大笑いした。
夏野:
ゲーム感覚でやってると、本当に現金が来るっていうのは、みんなわかってなかったかもね。
東:
そうでしょうね。チェックするとノータイムで変換されているから、もしかして売買されてないかもしれないわけでしょ? 単純にあの中で数字をいじっているだけで。
夏野:
あれは、詐欺だよ。完全にノミ行為です。
東:
完全にノーチェックだから、一応、例えば楽天証券とかだったら、売ってるらしき雰囲気があるじゃないですか? 「本当に売りますか?」というのもあるし、一応連絡が行って、向こうで売ってるんだなって感じなんだけど。
これ、完全に、単に今押した瞬間のレートで変換されているだけだから。
夏野:
しかも、本当にコインを買ってないし。
東:
買ってない。それで、スプレッドだけ取っているんだとしたら、これ、とんでもないわけですよ。ひどいよね。
夏野:
ノミ行為ですよ。ダフ屋の規制をやる前に、こっちの規制をやれって。
東:
そうね。
夏野:
ただ、長期的になるので、やっぱり時間がある人じゃないとこのゲームに参加できないんです。
対談中も相場から目が離せない
東:
僕もそう思って、対談中にビットコインが22万円まで上がったんですよ。でも、対談中じゃないですか?
一同:
(笑)
津田:
対談中に金額を確認しているってことだよね。確認までしているんだったら、売っちゃえばよかったんじゃない?
東:
これをいつやったのか? 津田さんと話してた時だよ。
津田:
え? いつ?
東:
津田さんの事務所で打ち合わせがあった時だよ。あの時、俺、ビットコインを確認してたんだよ。
津田:
マジか!? すごい真面目な打ち合わせだったじゃん。
一同:
(笑)
東:
あのとき、22万か22万5000円ぐらいになっていて、「今行きたいな、でも、ちょっと一呼吸置くか」とかやっていたの。
津田:
すごく難しい顔をしていたと思ったら、そっちだったんだね。
東:
普段、TwitterはiPadでやっているんだけど、コインチェックはiPadのアプリがないから、iPhoneで見るしかなかった。
だから、iPadとiPhoneを二重置きにしてたの。あれがやばくて、やたら見ちゃうんだよね。
津田:
確かに、いつもと挙動が違ってやたら何かを見ているなとは思った。
投機が奪うのは金と時間
夏野:
生々しいね。しかし、本当に時間がある人じゃないと、投機的な商品は無理。FXがそうじゃん。FXは為替相場で動きが遅いからいいんだけど、こっちは早いから。
東:
これ、365日24時間で完全にやってるからね。
夏野:
寝られない。麻薬だよ。
東:
これ、僕も一週間やっただけでわかったけど、日本の連中が起きる直前というのが、結構値段が上がったり下がったりするの。
夏野:
それはなんでかというと、取引の86%が日本人だから、少ない参加人数だと。
東:
だから、午前4時ぐらいまでバーって上がっていってても、日本人が起き始めると、相場が逆に動きだすのよ。だから、「なるほど。4時ぐらいが狙い目」だとわかるの。
夏野:
市場メカニズムの勉強になるね。
東:
結構、一週間でも、ずっと見ているとわかるの。
夏野:
じゃあ、経済学部の学生は、コインチェックに、まず10万払わないと学位はもらえない。
東:
そのくらい勉強になりますよ。「3時から4時ぐらいなんだな」みたいなね。
夏野:
しかし、その勉強は何の役にも立たないという。
東:
しかも、消えちゃったからね。でも、今でも数字が動いているのが笑えるんだよね。12万5千740円になっているけど。これ、ちょっとずつ動いているんだよ。
俺の総資産も。笑っちゃうよね。これ……(笑)。