アプリ課金、同人誌の交換、聖地巡礼の旅費――いったいどこまで経費になるの? 同人作家の確定申告、気になる事例まとめ
Q.06 ソーシャルゲームやアプリへの課金は経費になる?
──ソーシャルゲームやアプリへの課金は経費になるのでしょうか? レアキャラを出すために何十万円と課金したり……
個々の状況によってできる場合とできない場合があり、一概に回答することが難しいです。例えば、YouTuberやゲーム実況者の方はガチャを回す動画を撮影し、その動画の再生数やチャンネル登録によって広告収益を得ているので、経費にすることが可能であると考えます。作家の場合は、キャラクターの資料が必要であれば攻略wiki等で調べることができるので、少なくとも資料代としての計上は難しいでしょうね。
Q.07 帳簿は必ず作らなければいけないの?
──確定申告は帳簿が必要であると聞きました。帳簿とはなんでしょうか?
1年間の売上と経費をまとめたものになります。例えば年2回の即売会に参加して同人誌を頒布している場合、夏の即売会で何冊売れ、その印刷費用がいくらで、冬の即売会も同様に計算していくら……と記録を残すイメージですね。それとそうした費用の証拠書類も残しておく必要があります。
──証拠書類と言われると、何か事件の匂いがしてしまいますが……
安心してください(笑)ここでいう証拠書類というのは、売上の場合は請求書や納品書、経費の場合は領収書やレシートになります。売上や経費の金額を証明するための資料ということですね。
Q.08 領収書はなぜ必要なのでしょうか?
──領収書はそんなに大事なのでしょうか?
たくさん経費が発生しても、その領収書がなければ使用用途を証明できず、経費に計上することは難しくなります。今まで領収書を財布に投げ込んでいたり、捨てたりしていた人は、領収書を金券と思って大切に保管してください。
──領収書はお金と同じ!
1,000円の領収書を経費として計上した場合、課税対象の所得が1,000円少なくなります。仮に、税率を10%とした場合、1,000円×10%で100円分の税金が浮くことになります。
──日々の領収書をコツコツ集めることが節税への近道ということですね。
もちろん、領収書の保管が節税に繋がるといっても、保管している領収書すべてが経費になるわけではありません。例えば同人活動において経費となるのは、直接作品の制作に掛かったものだけで、例えばスーツの代金や家族との旅行代などを関係のないものは経費にすることはできません。
Q09. 確定申告しないとどうなるの?
──ちなみに…… 確定申告をしないとどうなるのでしょうか?
私が実際に立ち会った税務調査で、ある年の収入を申告していない方がいました。こうした場合、税務署は税務調査を経て推計課税を行うことが可能になります。推計課税とは、税務署がその人の所得を推定して課税することです。それが事実と異なっていても、対抗できる証明書類がないと高額な税金が課せられてしまう可能性があります。
この方の場合、3年間遡って調査を行ったため、申告していなかった年の所得税、2年分修正申告により追加で支払う所得税の本税に加え、延滞税および無申告加算税・過少申告加算税というペナルティを支払うことになりました。
──申告せずにいると、恐ろしいことになるのですね…… 税務調査は突然行われるのでしょうか?
基本的に調査官から事前に電話が掛かってきます。朝起きたら玄関に調査官が立っているというのは何億円も脱税していた場合などを除いて、ほとんどありません。
税務調査が入るからといって、過去の帳簿の内容を無理やり修正することはできませんから、常日頃から正しい帳簿の作成と経費の計上を行い、きちんと確定申告をすることが大事ですね。
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