アプリ課金、同人誌の交換、聖地巡礼の旅費――いったいどこまで経費になるの? 同人作家の確定申告、気になる事例まとめ
2月16日から申請期間が始まる確定申告。同人誌や音楽CD、自主制作ゲームなどを制作している同人作家は、昨今のダウンロードサイトをはじめとする販路や流通の拡大で、確定申告が必要な人が増えつつある。(※所定の条件を満たしている場合は申告不要。詳しくはこちら)
「必要なのは分かるけど、どうせバレないから」と思っている人も中にはいるかもしれないが、実際に税務調査の対象となった作家は少なくない。2007年には同人作家が売上の過少申告によって在宅起訴され、約9,300万円の追徴課税を課せられる事件があった。
同人活動によって収入を得たら、それが趣味の活動であったとしても、会社員の給料と同じように税金が発生する。では、その納税額を少なくすることはできるのだろうか?
そんな同人作家の気になる疑問を解決すべく、クリエイターに特化した確定申告サービス「ドージン・ドット・タックス」を運営し、『同人作家のための確定申告ガイドブック 2018』の著者である水村耕史税理士に話を聞いてみた。
Q.01 確定申告ってそもそも何ですか?
──まず、確定申告について簡単に教えていただいてよろしいでしょうか?
簡単に説明しますと、自分が1月1日から12月31日までの1年間で、いくら稼ぎ(これを「売上」といいます)、稼ぐためにいくら費用が掛かったか(これを「経費」といいます)をまとめ、その差額を「所得」として国に報告することを確定申告と言います。税金には様々な種類がありますが、そのほとんどはこの所得に所定の税率を掛けて計算します。
──なるほど。いきなりぶっちゃけて聞きますが、税金をできるだけ安く抑えるコツってあったりするのでしょうか?
裏ワザみたいなものはありません。「漏れなく経費を計上する」ことが最も重要です。繰り返しになりますが、ほとんどの税金は収入と経費の差額である所得に税率を掛けて計算するため、必然的に経費が多いほど支払う税金は少なくなっていきます。打ち合わせに使った喫茶店の代金や交通費など、少額だからと面倒くさがっていたものもしっかりと漏れなく計上することが一番の近道でしょうか。
──経費にできるものを漏らさず計上することが重要なんですね。
Q.02 いったいどこまで経費になるの?
──では実際に経費として代表的なものを、いくつか教えていただいてよろしいでしょうか。
同人作家さんあれば、まずは印刷やCDプレスの費用が思い浮かびますね。アシスタント代やソフトウェアのライセンス、即売会への参加費用も代表的です。
作品だけでなく、作業環境の整備に掛かる費用も経費にすることができます。ワークチェアや液晶タブレットはもちろん、自宅が作業場という場合には、家賃や光熱費、インターネット料金の一部を按分して経費として計上できる場合もあります。ただし、一点当たり10万円を超えるようなものは資産として計上しなければならないものもあります。
──なるほど。作品制作に使用した物品や作業効率を上げるために購入したものは経費にすることができるわけですね。
はい。他にも、昨今の流行を知るために購入した同人誌や、サークルメンバーとの打ち合わせで使った喫茶店の代金、情報交換を兼ねた他の作家さんとの飲み会の代金も経費とすることができるでしょう。
Q.03 作家同士で同人誌の交換をした場合、宣伝広告費になるの?
──即売会でお隣のスペースの方と同人誌を交換した場合、宣伝広告費になるのでしょうか?
宣伝として他の作家さんに自分の作品をお渡しする場合、広告宣伝費にすることができるでしょう。
──その場合は宣伝広告費としていくら計上するべきでしょうか?
頒布価格ではなく「原価」が経費となります。印刷費や外注費など、作品制作に掛かった合計金額を印刷総部数で割ることによって、一冊当たりの原価を算出することができます。
Q.04 コスプレ売り子さんの衣装代は経費になる?
──即売会で、売り子さんにコスプレをお願いした場合、その衣装の費用は経費になりますか?
経費として問題ないと思います。ゲームショーでのコンパニオンの立ち位置に近く、広告宣伝に一役買っていると思います。
──どんなコスプレでも大丈夫なんでしょうか?
売上に直接貢献している必要があります。例えば、数十冊しか頒布しないにも関わらず、衣装が数十万円など高額すぎるものは、売上に対して費用がひっ迫しており、合理性が乏しく経費として計上することは難しいでしょう。
Q.05 アニメ・漫画の聖地巡礼の同人誌、旅費や宿泊費は取材費になる?
──聖地巡礼に関する同人誌を制作している場合、現地に行った旅費や宿泊費は取材費になるのでしょうか?
内容によりますが、趣味の観光との境界が判断しにくく、場合によっては税務調査で否認される可能性があります。現地の郷土研究者に取材したり、インターネット上に現地の写真がなく、どうしても撮影する必要があるなど、合理的な理由が必要となります。
先ほどの高額な衣装代と同様に、頒布部数や売上によっても条件は変わってきます。100部しか刷らないのに取材に数十万円も掛かる場合は厳しいですね。