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『アイドル』はジャンルか、はたまた概念か…「アイドルっていったい何なんだ?」を紐解く――吉田豪×ロマン優光×久田将義

「アイドルだと名乗る人がいて、アイドルだと認める人がいたら、その人はアイドル」

優光:
 アイドルというのはある種の感情をファンに、抱かせるということだから、それをやろうとしているものがアイドルで、そうでないものはアイドルではないと思って当たり前で。

吉田:
 これはアイドル、これは違うと言って欲しいと。

優光:
 でも、それは人によって違うじゃないですか? 女の子の好みと一緒なので、誰かが思っているアイドルは誰かにとってのアイドルではないし、誰だって誰かのアイドルになれるし、みんながアイドルだと思っている子でもその人にとってアイドルではないということもあるわけですよ

吉田:
 はっきり言えるのは、年々幅は広がっているということですね。ここまではもうアイドルなんだという。

優光:
 だから、ど真ん中のアイドルらしいアイドルというのはいるけれども、どこまでがアイドルかというと、もうなにも言えないですよね。だって逆にもう楽曲の要素とかはなくて、接触によってアイドル要素がまかなわれているグループがあるじゃないですか。

吉田:
 握手とかね。

優光:
 実際の接触よって。ステージではアイドル要素が全然ないにもかかわらず、物販に行って女の子と接することによってそういう気持ちを抱かされてしまって、それがアイドルとして成立してしまう。

吉田:
 接触をなくせばアイドルじゃないと思えば大間違いで、そういうものでもないし。

優光:
 そうでもない。だから、すごく不定形なんですよね。

吉田:
 不定形ですね。だからアーティスト宣言をして接触をやめましたといったところで、それでもアイドルですよというのがあるじゃないですか。

優光:
 もう作り方として、そういう感情を拒絶するような音楽的な作りにして、ステージの作りにするという方法があるんですけれども、それをやってすら無理な人もいるじゃないですか。本人のそういう能力が高すぎて。なんとも言えないですよね。

吉田:
 どうですか、最近僕がTwitterでいろいろやっていた、「BiSHがアイドルを超えた」みたいな人が増えてきたじゃないですか。

画像は、吉田豪氏Twitterより。

優光:
 でもあれは定期的な、新規の人が最初に言いたくなるという。

吉田:
 最初に触れた、ちょっととがったアイドルを見るとまずそれを言いたくなる。自分がアイドルを否定していて聞かなかった人が、ちょっととがったアイドルを聞くと、「アイドルはろくなものではないけれどもこれはすごい、だからアイドルじゃないんだ!」という発想になっちゃうんですよね。

優光:
 それはウソで、実は音楽だけじゃなくて接触だったり、女の子をステージングで見たかわいさだったり、MCで見たかわいさの部分が、そこに引っ張られてそれとの合わせ技なんですけれども、音楽で入ってきても、そこを認めたくない人はいるんですよね。

 そこはなくていいのと言ったら、嫌だというと思うんですよね。本当に音楽だけでいいのと言ったら、嫌だという人はアイドルに惹かれているだけですよね。

久田:
 地下アイドルはアイドルですよね。ひとりでも客がいたらアイドルということですか?

優光:
 そういうことですよ。アイドルだと名乗る人がいて、アイドルだと認める人がひとりいたら、その人はアイドルです、その人にとっての。

久田:
 ゼロはアイドルじゃないということね。

優光:
 だって1対1の現場とかありますよ、本当に。

吉田:
 ゼロもあるしね。

優光:
 対バンライブだから、ほかのお客さんがいるからライブの場になっているけど、専門のオタクとその人だけというのは全然ありますよ。

“アイドル性”とは何なのか

吉田:
 年齢はというのも、これもそれぞれなんですよ。30超えてもアイドルといって成立している人もいれば、10代でも成立しない人もいるという。

優光:
 だから個人差ですよね。

吉田:
 アイドル性を失わない年齢、失わない人は失わないし、失う人は失う。

優光:
 さっさと失っちゃうし、最初からない人もいるし、あとみんなが失ったなと思っていても、ある特定の個人だけはずっとアイドルだと思って追いかけている人もいるし。

久田:
 アイドル性とはなんですか。今、吉田君が言ったアイドル性とはなんだと思います?

優光:
 なんでしょうね。

吉田:
 僕の中では何だろなぁ、どこか無邪気さとか子どもっぽさに通じる。

優光:
 たわいのなさですよね。たわいのないかわいさですよね。

久田:
 なるほど。

優光:
 たわいのないかわいさに何が加わっていくか。その子の強い意志であってもいいんですよ。

久田:
 年齢は、では関係なくなりますよね、そうなると。

吉田:
 だから杉作さんがよく言ってますが、「檀ふみはアイドル」みたいな感じがあるわけじゃないですか。

優光:
 檀ふみ、たわいのないかわいさありますもんね。

吉田:
 処女性のあるいい歳をした人っていうのはいるんですよ、っていう。

久田:
 では、もうちょっと広義な感じですよね、広い意味でのアイドルってことですよね。

吉田:
 だって僕に言わせれば、そりゃ久田さんだってロマンだってアイドル性はあるんですよ。

久田:
 ないよ(笑)。

吉田:
 かわいげはあるっていう。だからかわいげなんですよ、基準。

優光:
 かわいげですよね。

久田:
 それが、アイドルってことか。

吉田:
 かわいげのある人。それはかわいげ全面じゃなくてもいいんですよ。キリッとした人がたまにかわいげ出してもいいし。

優光:
 すごい怖い人が実はすごいかわいかったりするじゃないですか。

吉田:
 僕の好きな取材というとだいたいそうじゃないですか。

久田:
 森元首相とかも。

吉田:
 かわいげがあるっていう発想になっちゃうんで。

久田:
 なるほどなるほど。それは分かりやすいね、でもね。

吉田:
 分かりやすいけど僕は全然一般的じゃないですよ、僕の発想は。

久田:
 俺は分かりやすいけどね。まあ一般的には受け入れられないかもしれないけど、分かりやすいけどな。

優光:
 まあたわいのなさは重要ですよね。

吉田:
 だね。

優光:
 意味を持たないかわいさっていうか、それに何を加えていくかっていうのは別の問題なんで。そこがあるかどうかっていうか。核にならないフワフワーっとしたものを持ってるかどうかですよね。

久田:
 だから松田聖子とか80年代のアイドルはアイドルですか?

優光:
 まあ、アイドルですよね。

久田:
 間違いないですよね。

アイドルとアーティストの違いは?

吉田:
 よく僕が言うのが「やらされている感がアイドルには重要」っていうのがあって。それは本当たわいのなさに通じるじゃないですか。それは自分で意思を持って自分がプロデュースしてやり始めるとどうしてもアーティスト的な要素が強くなってっちゃうんで。

久田:
 なるほど。

吉田:
 とかもあって。ただそのセルフプロデュースでもアイドルは成り立つからここも難しいんですけどね。

久田:
 アイドルからアーティストになりたがる人って多くないですか。

吉田:
 最近はさすがに減ってきた気がするんですけど、僕がよく言うのは「肩書きでアイドルを外したがる問題」って前もここでやりましたけど。ダンス&ボーカルユニット問題みたいな。

久田:
 それはアイドルじゃないんですよね。

吉田:
 どう見てもアイドルだったりするんですけどね。

久田:
 バンドやりたがるじゃないですか、アイドルの人ってたまに。

吉田:
 80年代とかに多かったですよね。

久田:
 多かった。あのJUDY AND MARYは違ったっけ。

吉田:
 本田美奈子とか。

久田:
 本田美奈子もそうだし。バンドもそうだったもんね。ジュディマリは違ったっけな。

吉田:
 ジュディマリは違いますね、だいぶ違います(笑)。

優光:
 でもジュディマリは確かにアイドルの機能しては……。

吉田:
 アイドル性は高い。

久田:
 でしょ? アイドルとして見てる人も多かったような気がするんだけど。

吉田:
 まあバンドではあったけどそういう、特にソロもアイドル性は高いですよ。あの年齢でもアイドル性は高い、未だに。だから本当それぞれの答えは違うからあれなんだけど、だいたいの共通認識はあるわけじゃないですか。

久田:
 でもロマンさんの歌い方とかあれは。

優光:
 歌い方、声の生かし方ですよね。

久田:
 声の生かし方か。

優光:
 上手い下手も関係ないし。

吉田:
 全然関係ないですね。

優光:
 その人の声をどれだけ生っぽく生かせるかってことですよね。たぶん。加工しないで。実際はまあ加工はしてるんですけど、生っぽさですよね。

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