提供者「嫌なら見るな」←わかる 「見てなくても嫌な情報が入ってくる」←どうすればいいのか?
テレビ番組などのコンテンツに「つまらない」と野次を飛ばす声に対し、コンテンツの提供者側がしばしば用いる「嫌なら見るな!」という言葉に対して「一見すると筋が通っているようにも思える言葉だが、勝手に目に飛び込んでくる不快なコンテンツもあるのでは?」と論じるコラムがネットで話題になっています。
これを受けて、『ニコ論壇時評』では漫画家の山田玲司氏が番組アシスタントの乙君氏としみちゃん氏に、「嫌だから自分は見ない、という行動をしても世間の空気の影響を受けてしまう」とし、そういった空気から身を守る方法を解説します。
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自分の見たいものだけを見る“タコ壺”の時代に
乙君:
「嫌なら見るな」と言っても、見ないと良い所も悪い所も分からないから、批判も出来ない。でも、“批判のために見る”というのもわからないんですよ。
面白い事について、「あそこがダメだ」「事実と合ってない」……そういうふうにクレーマーのようにあげ足をとるマインドの人が目立ってしまう。それで提供者側も「嫌なら見るな」って売り言葉に買い言葉な感じで言ってしまうのではないでしょうか。
山田:
そういうことになってくると、結局は見たいものだけ見ておけばいい、という主義だよね。アニメが見たいなら、それぞれアニメチャンネルだけ見ていろ、みたいな話だよ。しかもアニメの中でも、ジブリアニメだけ見たいんだったら、お前はジブリアニメだけを見ていればいいじゃないか、というように、1個ずつの“タコ壺”に入っていくというのが今の時代なんだよね。
だから隣で何が起こっているかわからないし……俺たちは『HiGH&LOW』が流行っていても何のことかわからないでしょ? 見なくても目に入っちゃうものはあるという話なの。この色は誰が塗ったんだろう? となるような、街の看板や奇妙な建物はたくさんあって、どうしても目に入っちゃう。
例えば、テレビは一度スイッチを点けるだけで、なんでこんなしょうもないことを言っているんだろうと思うよ。俺は嫌だから見ないけど、問題はそれを見ている人が自分の親だったりするわけだ。近所のおばさんや親戚のおばさんが、何でそんなことを言うの? となるようなことを言ってきたら、テレビを見てそれを信じているからなんだよ。
でも社会がそんな空気になるのは嫌だよね? つまり「嫌なら見るな」というよりは、見なくても世間の空気を作られていくから、影響下にあるんだよ。
乙君:
なるほど!「嫌なら見るな」と言われて見なかったとしても影響は受けるんですね。
山田:
AKBの総選挙に対して「あんなの許せない、かわいそうだ」と言って、見なくても話題にしてる。だから、話題にするなと言っても無理なんだからどうしようもないんだよ。その影響下で、例えば自分の娘がある日「AKBの研究生になりたい」とか言い出したら、あれだけ俺が許せないと言っていたのに! みたいな(笑)。
こうなると俺はAKBを見なかったけれども娘は見ていたということで、困っているお父さんとかがいるわけじゃない? 下手をすると外が嫌なところになる情報が溢れているんじゃないかと思う。
“世間の空気”から身を守る方法
山田:
基本的に世の中は洗脳合戦なんだ。みんなが食いつく話題をふって、みんなを同じ考え方にさせるということがプロパガンダで起こるんだけど、これの効果を顕著にするメソッドがある。これがネットや地上波のテレビで実行されているパターンです。俺が一番性質が悪いと思うのが、“恐怖と共感”という二つのメソッドですね。
山田:
この二つのメソッドを実行していて、“恐怖”のネタがないときは、スズメバチ・ゴミヤシキ……。“共感”のネタがないときは、大間のマグロ・ラーメン・スイーツになるんですよ。「おいしそうだなー、マグロ食べたいよね」「困ったわねー、怖いわね」なんてね。このメソッドでやられているおばさんたちが、どれだけ多いかという話なんだ。
「おばさん、頼むから見るな!」と言ったって無理じゃん? スズメバチやラーメンをずっと見ているけれど、これらは教養じゃないですからね。一見、世の中に役立ちそうだけれども、そんなにしょっちゅうスズメバチは来ないよ(笑)。
乙君:
教養の件に関しては、何にでも教養は入っているんですよ。ただ、それを教養として自分のものにできるか見つけられるセンスがあるかどうかの話だからね。
山田:
そのとおりです。だから、俺は、タコ壺でもいいと思っている。「お前のタコ壺の中でお前のチョイスをしろ」という話なんだ。「スズメバチ怖いですね、ロケットが飛んできますよ」みたいな情報からの防空壕がタコ壺になっていると思いますね。「みんなが同じことを言い出したらタコ壺の中に逃げ込んで、けもフレのことだけ今は考えていてもいいんだぞ」というのが今週の俺からのメッセージだね。
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