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ボカロP・かしこ。による切ないエレクトロニカ楽曲『クランベリー・ドラマ』MVの抽象的な色彩・独自のミクの調声にも注目!

 今回は、かしこ。さんが2024年2月25日に投稿した「クランベリー・ドラマ」を紹介する。『ボカコレ2024冬』TOP100ランキング参加作品でもあるエレクトロニカ・ダンスチューン。印象的なのは、サビに向けて力強く浮かび上がってくることになる、かしこ。さんの高音が煌めく初音ミクを共にしたサウンドスケープだ。
 音のレイヤーが重なり合うごとに、その世界観は完成へと近づいていく。

文/小町 碧音(こまち みお)


 前半は、ビートに乗る中性的なミクの声にフォーカスがあたり、物語の切なさがじわじわと増していく。〈もやもやに舞って 有耶無耶になって 模様は 宙に溶けてった〉〈色(しき)だって 彩(さい)だって 踊らない〉。

 そこから〈cranberry cranberry 潰したみたいな 心空 こぼれ落ちる〉というサビの歌詞へと続く流れの中で気づくのは、MVに描かれた抽象的な色彩模様が、出口のない迷路という名の心模様そのものなのだろうということ。〈苦めなカフェラテ 無意識 マドラーで 白と黒 掻き混ぜた〉という洒脱な描写とサビの〈四文字の気配を 遮るように 私はズルをする〉といった意味深な表現。全体を通して靄がかった雰囲気が漂う。

 聴きどころは、何と言ってもサビ。ミクの高音がエレクトロニカなサウンドと高らかに共鳴し、軽やかな歌声のステップの中に、切なさを織り交ぜる。その瞬間に、かしこ。さん独自のミクの声色が強調された作風が炸裂する。

 〈あなたを嫌う理由 並べれば 慕う色ばかり 埋まって〉という歌詞は、離れたくても離れられない現実を強烈に訴えてくるキラーフレーズ。物語は淡々と進んでいく。しかし、そのシンプルな構成の中にこそ、歌詞の存在感を際立たせる表現力が光っている。それは例えば、〈もう嫌に嫌になって〉〈有耶無耶に仕舞って〉といった連続するフレーズ。言葉の持つ音の響きまでをも計算し尽くした、繊細な言葉選びがうかがえる。

 また、ボーカロイドのキャラクターを前面に押し出したMVが多いボカロシーンの中で、「クランベリー・ドラマ」は、抽象的な色彩を描いたシンプルな作品といえる。視覚的な情報が最小限に抑えられていることで、聴き手は自身の経験や感情と重ね合わせやすくなり、楽曲が描く曖昧で切ない心模様に共感しやすくなる。

 MVの外観以上に存在感が強いこの曲は、不思議と心の深部に染み込むパワーを持っていると感じた。

■ 楽曲配信情報

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