ボカロP・さまぐらが約4年ぶりにボカロ曲を投稿した理由ーー「バックアゲイン」「正体不明」など3rdアルバム『BACK AGAIN』収録曲をご紹介
2015年より現在に至るまで活動を継続的に行うボカロP・さまぐら。
昨年2023年には歌い手・もじぞうと共にユニット・yumeguiとして初の配信作品「向日葵の唄」を発表するなどの活動も見られたが、今年2024年には実に約4年ぶりとなるVOCALOID楽曲「バックアゲイン」を投稿。
同時に今作をはじめとして近年投稿したボカロ曲4作ほか、全8曲を収録した3rd Album『BACK AGAIN』のリリースを発表。
本アルバムは去る4/28(日)に開催されたニコニコ超会議内・「THE VOC@LOiD 超M@STER 55」にて頒布され、円盤は当日好評のうちに完売となったそう。(現在アルバムはboothにてDL版販売、ほか各種サブスクリプションサービスにて配信中)
文/曽我美なつめ
数年間の空白を経て、今回のボカロ作品ほか音楽活動を再開させたさまぐら。
本人はその理由について、生活の中で近年はどうしても労働の比重が重くなってしまっていた、と自身のnoteにて語っている。
「大好きな音楽でも生活の先にはたたない」と現実の厳しい洗礼を浴びながらも、どうにか苦労の時期を抜け、暮らしの中に音楽を取り戻した彼。
その2年間で痛いほどに感じた、何もできないことへの焦れったさ。それをどうにか形にしようとして生まれたのが「バックアゲイン」という楽曲であり、引いてはこのアルバム作品だ、という制作動機についても同記事では記されている。
リードトラックの「バックアゲイン」冒頭では、そんな彼のこれからの再活動への期待を予感させるギターのフィードバックが印象的だ。
今にも駆け出したくなる疾走感あふれるバンドサウンドに乗るのは、これまで手中から零れ落ちたたくさんの喪失と、それでもなお同じ手でまさにこれから掴もうとしている数多の希望を歌う歌詞。音楽に対する今の彼の高い意欲や情熱が、実にストレートに反映された1曲と言える。
またアルバムには、空白期間以前に発表されていたボカロ曲の数々も今回改めて収録される運びとなっている。
メロウで浮遊感あるサウンドの合間にアタック感を強調した音数の少ないビートをパズルのように組み込み、音の“間”を意識させる作りが魅力の「正体不明」。
爽やかなバンドサウンドの中にわずかなオルタナティブさを滲ませ、キャッチーなポップロックナンバーへと仕上げた「二月の生活」。
そして「ヘイトクライム」はゆったりとしたテンポの中で絡み合う逆再生のギターサウンドから、温かくも優しい、そして切ない痛みを伴う唄が紡がれる。
長年彼を支持し続けるリスナーにとって、上記3曲は今回待望の音源化ともなるだろう。
先述のnote記事内でさまぐらは、本来なら今作は従来と違う音楽性へ舵を切る予定であった、とも綴っている。
しかし空白期間を経て、改めて生活の中で音楽へ向き合うことを考えた際思い浮かんだのは、これまでの自分の道のりを振り返る「回帰」のテーマだったという。
不器用で、不格好で、泥臭くもがきながらも。今回改めて暮らしの中で、自分の等身大の姿で音楽と向き合う喜びを再び取り戻したさまぐら。
ボカロPとしての活動も、あるいはユニット・yumeguiとしての活動も。彼の平凡で、それでいて特別な音楽家としての道のりは、これからもきっとどこまでも続いていく。
■ 楽曲配信情報
さまぐら 3rd Album『BACK AGAIN』
M1 二月の生活
M2 コンティニュー
M3 回想
M4 灰色の街、鈍色の空
M5 愚者のファンファーレ
M6 ヘイトクライム
M7 バックアゲイン
M8 正体不明
■ infomation
「The VOCALOID Collection」 公式サイト
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