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【ボカコレ2023投稿作品】感情が爆発するような激しいサビに注目! ロックとテクノポップを融合した『ロストマジックロスト』

 今回は、ふゅゅ××さんが8月4日に投稿した「ロストマジックロスト」を紹介する。

文/小町 碧音(こまち みお)


 この曲はボカコレ2023夏ルーキーで16位、さらには関内デビル賞を獲得した。失われた魔法といった意味を包含するこの曲は、荒廃した世界を舞台としたSF的なテーマに、ロックとテクノポップを融合したような激しいダークサウンドが掛け合わされているのが特徴。全体的に暗いアニメーションのMVに呼応する〈冷冷〉〈欺瞞〉〈虚空〉〈多罪〉などの言葉は、暗い感情をストレートに表現した曲であることを強く印象づける。

 1番の歌詞は、愚直なキミの澄んだ瞳に、欺瞞にまみれた世界の本当を教えようという意味を含んだ導入文で始まる。変拍子が活発な箇所では、ボーカルの歌声が単調に聴こえやすく、変化に乏しい。一方で、疾走するビートに力強いメロディが響くサビでは、〈壊してよ 壊してよ 貴方の陳腐な言葉 今も夢に見るの〉〈戻してよ 時間の魔法〉と主人公の感情が爆発する様子が強調されることで、一気にドラマティックになる。

 とりわけ、SF的な世界観を演出しているのは、変拍子が果たしている役割が大きい。〈還り、未知は一つだけ〉の箇所で突然音が切れたり、何かが割れるエフェクトが入っていたりと世界が断絶されたように思える瞬間には、まるで映画のワンシーンのような迫力があり、聴き心地の良いサウンドが印象的。また、BPMも210と高速で聴き手を圧倒する。

 2番からは、〈反芻。 ああ、今日も返せなかったな。〉と星界(CeVIO AI)と冥鳴ひまり(VOICEVOX)によるポエトリーリーディングが展開される。1番とは異なる曲調の変化に実験的な要素が散りばめられていると感じる。次第に声色がどんどん暗くなっていくフレーズには、少し不穏な空気感が漂う。ラスサビの転調では、〈神の魔法 終わりの魔法 死んだ目のキミが見える 手が鈍る前に ここで 終わり 私ごと 黒く 黒く 塗り潰すように〉と、主人公が自らの命を絶とうとしている様子がうかがえる。そこから思い知るのは、この物語はハッピーエンドとは無縁のダークファンタジーが強く示唆されていること。救われない結末を徹底した世界観が、2分41分という限られた時間のなかで、緻密に描き出されている楽曲だ。


ロストマジックロスト 配信リンク

「The VOCALOID Collection」 公式サイト

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