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デジタルネイティブ世代を象徴する新世代のボカロ曲。冷静な主人公が生まれ変わっていく壮大な世界観『あーうーいえーい』

 今回は、トントゥさんが昨年2月9日に投稿した「あーうーいえーい」を紹介する。

文/小町 碧音(こまち みお)


 一言で言えばいい意味で軸がないデジタルネイティブ世代を表しているそんな曲。MVでは、逆さまになり、口をあんぐりさせた少女を描いたオレンジベースの一枚絵の上にPARAの文字が弾ける。

 歌詞にはないPARAの連続が小気味好いメロディとマッチして、まるでPAPPA PARAPPAと、聴こえない歌詞までもが聴こえてくる。愉快なイントロだ。

 どんな主人公なのだろう?と耳を澄ましていると、さっそくヒントが。1番のAメロの<「期待しないで」の世代だし>が彷彿とさせるのは、ネットからいろいろな情報を知り過ぎてどこか冷静な目を持ったデジタルネイティブ世代か。歌詞にあるQに対するAがすべて自分のことにも関わらず、わかっていないのをイラストをぼやけさせることで表現しているのも絶妙。

 主人公は、ただ今日吹く風に任せて生きているのだ。おそらく、会社の上司による込み入った話は右の耳から左の耳へと何事もなかったのごとく抜けていくタイプ。とくにそれがわかるのが、屈辱を味わうまでに至っていないとの歌詞があること。フル尺は2:32と短いながら、1番で主人公の性格がまるわかりという単純明快な楽曲になっている。

 我が道を行く主人公がイメチェンをしたかのように始まる爽快なサビは、母音のオンパレード。いっそ開き直ったかのようでもあり、フレンドリーな心が放たれていく短い時間だ。“あ”に曖昧、“う”に有耶無耶、“え”にごまかしちゃえ!と母音同士で韻を踏んでいることで、サビそのものがシンプルを極めている印象が強い。

 トントゥによる、ひかえめなギターロックに、イラストレーター・おみずさんの描いたゆるい一枚絵の相性が抜群だ。トーンダウンした1:35では、主人公がまた再び困難を乗り切るための母音のオンパレードをハンドクラップ付きで唱えるのだが、ラスサビへ向かう前の助走をつけているのが明確で面白い。サビから終わりに向かうかと思えば、まだ続いていく曲。このサウンドがしっかりと頭に染み付いたところで、主人公が<自分次第>と自身をアップデート(生まれ変わる)する。

 そして、正真正銘のラスサビで<さよなら!>と放ってしまう。飛び抜けているのは、一貫してキープされる清々しさ。最終的には、“視点を変えるだけで世界は違って見えるもの”と壮大な物語を感じた。心を軽くしたい人はこの曲の世界観にぜひ、インしてほしい。


「The VOCALOID Collection」 公式サイト

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