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エイプリルフールだし、嘘について理解を深めませんか? 「人間は1日2回嘘をつく?」「嘘つきは知性のはじまり?」など“嘘”にまつわる心理学を解説

 今回紹介する動画は、草紫庵さんが投稿した『【VOICEVOX解説】嘘の発達心理学【ゆっくり解説】』。
 音声読み上げソフトを使用して、嘘に関する心理学の解説について解説しています。


■そもそも嘘とは一体何なのか

紫乃:
 本日は、エイプリルフールということで、嘘の心理学について解説するわ。それではまずはじめに、嘘とは何かについて考えようかしら。

有璃沙:
 えっ、嘘って正しくないことを言うことでしょ?

紫乃:
 それだと正確ではなくて、たとえば、このような場面はどうかしら?

女A:
 すみません、さっきこの辺に男の人きませんでしたか?

女B:
 (男の人? さっき通ったのは女の人だったし・・・・・・)いえ、見てないですよ。

男A:
 (さっき通った人のことかな? でも、教えるの面倒くさいし)いいえ、見てないよ。

有璃沙:
 あれ、何か同じ見てないだけど、かなり印象が変わるね。

紫乃:
 そうよね。男性の場合、見ているにも関わらず見ていないといったのだから、彼の発言は当然嘘になるわ。

有璃沙:
 面倒だからってかなり自分勝手な嘘だよね。

紫乃:
 だけど、女性の方は見た人と尋ねられている人が同じであると気づかなくて、見てないといったわ。この場合嘘ではなく、勘違いというべきじゃないかしら?

有璃沙:
 たしかに、そうかもしれないね。

■ウィルソンによる嘘の分類

紫乃:
 このようなことから、嘘とは「発言者は真実ではないと知っていることを、さも真実であるかのように語り、相手を騙そうとする行為」と定義することができるの。さらに心理学では、嘘をこのように分類するの。1つずつ詳しく見ていくわね。

 まずはじめの自己保護の嘘は、自分が不利益を被らないための嘘のことで、たとえば、宿題をやっていないことが先生にバレると叱られてしまうから、やったと嘘をつくことが考えられるわ。次の自己拡大のための嘘は、自分をより良く見せるための嘘と言えるわ。

有璃沙:
 嘘をついたら、印象悪くなるんじゃないかな?

紫乃:
 勿論バレてしまったら、印象は最悪よね。でも、バレなければ自分をよく見せることができるわ。たとえば、合コンで男性なら年収を高く伝えたり、女性なら年齢をサバ読んだりとかね。

有璃沙:
 あぁ、確かにあるかもね。

紫乃:
 それに、詳しくは解説しないけれど、演技性パーソナリティ障害という精神疾患の患者は、自分に周囲の注目をあつめるために、嘘をつくことが多いの。たとえば、有名なアイドルと友人であるとかね。

有璃沙:
 ファンの子とかだったら、会わせてほしいってなるよね。

紫乃:
 そうした周りの反応で承認欲求を満たすことを目的とするの。さて、その次の利己的な嘘というのは自分が利益を得るために、つく嘘だと言えるわ。たとえば、オレオレ詐欺で被害者の身内であると嘘をつく事を想像すると分かりやすいんじゃないかしら?

有璃沙:
 あぁ、いかにも嘘って感じだね。

紫乃:
 そして、犯罪繋がりだと次の反社会的嘘は、他人を傷つけることを目的とした嘘よ。いわゆるネットの誹謗中傷の多くは、この要素を含んでいると言えるわね。たとえば、クラスの気に入らない女子がパパ活をしているという嘘を広めて、学校に来づらくするとかね。

有璃沙:
 サイテーじゃん。

紫乃:
 ただ、嘘は必ずしも悪い嘘ばかりではなく、いい嘘もあるの。

有璃沙:
 いい嘘? なんか痛くない頭痛みたいな感じだね。

紫乃:
 そんなことはなくて、有璃沙ちゃんだってお世辞とか言うんじゃないかしら?

有璃沙:
 あぁ、まぁ言うね。

紫乃:
 それだって、広い意味では嘘になるのよ。

有璃沙:
 いや、嘘ではなくない?

紫乃:
 でも、たとえば似合ってない格好の人に対して。

女C:
 そのお洋服よくお似合いですね。

紫乃:
 という場合、本心では似合っていないと思っているのだから、似合っているは真実でないと知っているし、相手に喜んでほしい、言い換えれば相手に似合ってないけど、似合ってると騙されてほしいという意図で言うわよね。

 つまり、嘘の定義である、発言者は真実ではないと知っていることをさも真実であるかのように語り、相手を騙そうとする行為に該当するの。

有璃沙:
 う、うん……。まぁ、そうかもね。

紫乃:
 ただ、ここで勘違いして欲しくないのは、だからお世辞は良くない、という話ではなく、むしろ、人を傷つけない会話の潤滑油としても、嘘は活用できるということよ。

有璃沙:
 むしろ、嘘はコミュニケーション能力ってことかな?

■人は一日に何回嘘をついているのか?

紫乃:
 そうね、これが忠誠的な嘘よ。今言ったみたいに、多少の嘘は必要な能力だと言えるわ。調査で、1日についた嘘の数を数えて報告してもらうと、ほとんどの人は、1日に2回嘘をついていることが分かっているの。どれだけ少なく報告した人でも、少なくとも週に1度は嘘をついていたわ。

有璃沙:
 意外と嘘って身近なんだね。

紫乃:
 それでは、ここからは子どもたちがどのように嘘をつく能力を獲得するのかについて解説するわ。まず、嘘をつくためには当然だけど言葉を話すことができる必要があるわ。

有璃沙:
 そりゃバブバフ言ってちゃ、嘘もつけないしね。

紫乃:
 これは、これからする話の全てに共通していることなのだけど、子供は発達の速さに個人差が大きいの。だからあくまで、目安として聞いてほしいのだけど、一般的には、1歳頃には「ママ」や「ワンワン」のような1語文を話すことができるようになるわ。

 2歳ころになると、「ママ 抱っこ」や「これ 欲しい」といった2語文を話すことが出来るようになるの。

有璃沙:
 そのくらいの子供ってすごく可愛いよね。

紫乃:
 そして、3歳程度になると「パパ おしごと なの」といった3つの単語で構成される3語文を話せるわ。

有璃沙:
 だいぶしっかりしてくるね。

紫乃:
 この時期になると早い子では、かなり流暢に喋ることができて、この頃には、嘘をつくことが出来るようになるの。

有璃沙:
 結構早いね。

紫乃:
 ただ、この時期の嘘は私達大人の嘘と比べるとかなり可愛らしいもので、たとえば、こんな実験があるの。実験者と3歳児の子供が一緒の部屋に入るわ。そして、その部屋には中を見ることができない箱がおいてあるの。

有璃沙:
 それ、めっちゃ中身気になるやつ。

紫乃:
 当然子供も中は気になるのよ。そこで、実験者は子供を1人にするの。

実験者:
 それじゃあ、僕は今から部屋を出るけど、その間その箱の中を見てはいけないよ。

子供:
 はい、わかりました。

紫乃:
 しばらくすると、子供は好奇心から箱を開けてしまうの。

子供:
 うわぁ、ネコさんだ。可愛いなぁ。

紫乃:
 その後実験者が部屋に戻った後。

実験者:
 お待たせ。箱の中身を見てないよね?

子供:
 うん、見てないよ。

実験者:
 ところで、箱の中に何が入っているか知っているかな?

子供:
  うん、ネコのぬいぐるみが入ってたよ。

有璃沙:
 いや、見たってバレちゃうから・・・・・・。

紫乃:
 このように、とっさの嘘をつくことはできても、嘘に整合性を持たせる能力は、まだまだ未発達と言えるわ。これができるようになるのは、およそ7歳程度だと考えられているの。

有璃沙:
 ちょうど小学校に入るくらいだね。

■3歳児の嘘と、4歳児の嘘

紫乃:
 また、もう1つ面白い実験があって、ゲーム上で2つの箱を見せるの。片方の箱には美味しい果物が入って、もう片方には何も入っていないの。その後、動物のキャラクターが出てきて、その動物に果物が入っている箱を教えてほしいと頼まれるわ。

 この時、空っぽの箱を教えることができたら、参加者の子供は得点を獲得できるの。

有璃沙:
 嘘をつくと、点数がもらえるんだね。

紫乃:
 この実験では、3歳時の子供は得点が低く、4歳時の子供は高得点を得られたわ。

有璃沙:
 4歳になると、だいぶ嘘をつくのもうまくなるのかな。

紫乃:
 ただ、これには続きがあって、今度は画面上に家を提示して、その一方に可愛い動物が入るの。その後、凶暴な動物がやってきて、可愛い動物が入った箱を教えるように要求されるの。今回は、可愛い動物を守ったら得点を獲得できるわ。

有璃沙:
 やっぱり、要求に対して嘘をつくと得点が得られるんだね。

紫乃:
 そうよ。この実験とさっきの実験とは、動物が入っているか、果物が入っているかの違いで、求められていることは、同じく嘘をつくことよ。それにも関わらず、こちらの実験では4歳児と3歳児で得点に差がなかったの。

有璃沙:
 どういうこと?

紫乃:
 あくまで可能性なのだけど、3歳児の場合は、自分の利益になる嘘をつくのは苦手でも、他人を守るための嘘ならつける可能性があるわ。

有璃沙:
 う、うん?

紫乃:
 まぁ、ただ似たような実験では、3歳児はやはり嘘がつけなかったという結果もあったりするから、あくまでそういう意見もあるんだな、くらいに捉えておいて欲しいわ。ここで重要なのは、およそ4歳くらいになると高度な嘘がつけるようになるという点ね。この時期には、欲しくない贈り物をもらったときに、愛想笑いを見せるようになるわ。

有璃沙:
 一体どうしてなんだろう?

紫乃:
 実はこの時期には、心の理論を獲得すると言われているの。

有璃沙:
 心の理論?

紫乃:
 心の理論というのは、相手が考えていることを推測する能力のことね。ここで大切なのは、自分が知っていることは、相手が知っているわけではないということをきちんと理解するということよ。たとえば、次のような場面を考えるわ。

女D:
 今日は卵の特売日、いっぱい買って、いっぱい食べよう。オムライス、卵焼き、ゆで卵。あ、、あれ……。

店員:
 すみません、売り切れです。

女D:
 ガーン。

女E:
 すみません、卵ってまだありますか?

紫乃:
 このような場面で、後から卵を買いに来た人に対してどう思うかしら?

有璃沙:
 えっとね「もう売り切れてるのに買いに来ちゃったんだ、可哀想。」とかかな。

紫乃:
 そうよね。でも、ここで心の理論が獲得できていないと、(卵売り切れてるの知ってるはずなのに)どうして買いに来たんだろう? と考えるの。

有璃沙:
 いや、知らないから。

■嘘を信じさせる条件

紫乃:
 このように、自分が知ってることと、相手が知ってることを切り分けるのも、心の理論の機能よ。さて、嘘に話を戻すと、嘘とは、間違ったことを言って、相手を騙そうとする行為だったわよね。

 つまり、嘘とは「相手が事実を知らないこと」を知っていて、こう言えば、相手の考えを誘導できると、相手の思考を推測する能力があってはじめて成立するものなの。

有璃沙:
 意外と嘘って高度なんだね。

紫乃:
 先程の例でいうと、卵が売り切れていることを知らない人に対して、その人は卵が売り切れていることを知らないから「卵まだありましたよ」と言えば、喜んで買いに行くだろうと推測できて、意図的な嘘が成立するの。

有璃沙:
 たちの悪いいたずらだねぇ。

紫乃:
 そして、この能力を獲得することで嘘を見抜くということも可能になるの。

有璃沙:
 どういうこと?

紫乃:
 たとえば、たぬきを指さして。

女F:
 あ、アライグマがいる。

紫乃:
 といった場合、嘘かしら?

有璃沙:
 えっ、アライグマとたぬきってすごく似た動物だし、勘違いかもしれないよね。

紫乃:
 そうよね。嘘はさっきも言った通り、勘違いではなく発言者は間違いであると知っていることを、騙すために言うということだから、相手が意図的に嘘をついていると見抜くには、相手は自分の発言内容が正しくないと理解して話してるということを、理解する必要があるの。

 つまり、心の理論が獲得されているということね。実際、心の理論が獲得できていない子供の場合、嘘ではなく間違いと認識することが分かっているの。

有璃沙:
 純粋だなぁ。

紫乃:
 ただ、子供も決してただ人の言っていることを受け止めるのではなく、自分なりの判断で、発言者の嘘や間違いを判断していることが分かっているの。たとえば日本語の場合、語尾に。

女F:
 それはたぬきだよ。

紫乃:
 と「だよ」をつけると断定の意味になって強い自信があるように聞こえるわ。でも、たとえば。

女F:
  それはたぬきかな。

紫乃:
 のように「かな」をつけると、曖昧で自信がないように聞こえるわよね。

有璃沙:
 たしかにそうだね。

紫乃:
 このような判断は子供でもできて。

女F:
 これはたぬきだよ。

女F:
 これはアライグマかな。

紫乃:
 という2つの言葉を見せた後、子どもたちにこの動物の名前を尋ねると、多くの子供は断定形で言われた方を信じて、この動物はたぬきであると回答するの。

有璃沙:
 まぁ、自信なかったり、明らかに嘘ついてると態度でわかるよね。

紫乃:
 と、今回は急に思いつきでエイプリルフールにちなんだ解説をしようと思ったから、かなり概要だけを述べてきたけど、まとめると、嘘には大きく分けると、自分のための嘘と他人のための嘘があって、必ずしも嘘が悪いものではないの。

有璃沙:
 お世辞も広く見れば、嘘ってことだよね。

紫乃:
 そして、その嘘をつく能力は3歳くらいに芽生えて、4歳程度で大きく成長する可能性があるわ。そして嘘をつくには、自分が知っていることを相手は知らないという理解が必要で、これを心の理論というの。

有璃沙:
 意外と嘘って複雑なんだね。

紫乃:
 そうよ。そして、今回は省略してしまったけれど、実は心の理論を獲得したから嘘をつけるのではなく、嘘をつく中で心の理論を獲得する、という考えもあるの。

 たとえば、服が似合ってないけど、本当のことを言うと傷つけてしまうから、似合ってるというのではなく、似合ってるねと言ったら、喜んでもらえたから相手は思ってなくても言うと喜ぶ。つまり、自分の思ってることと、相手が言ってほしいことは別ということを学習する、ということね。

有璃沙:
 なるほどね。

 

 人間が嘘をつくにあたるまでの経路はなかなかに複雑なようです。必ずしも嘘が悪いものではないですが、時と場合に応じて使い分けるスキルが必要なようです。
 この解説をノーカットで聞きたい方はぜひ動画を視聴してください。


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【VOICEVOX解説】嘘の発達心理学【ゆっくり解説】

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