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世界に大きな影響を与えた「じゃがいもの歴史」を解説! 100年以上かけてヨーロッパに定着し人口増加などに大きく貢献

 今回紹介するのは、モンド・ヒストリカ@歴史さんがニコニコ動画に投稿した『【歴史解説】じゃがいも史 世界を変えた地下茎』という動画。
 じゃがいもの歴史について、音声読み上げソフトを使用して解説しています。


■じゃがいもの世界進出

この動画で解説を務めるのは、左からクレオパトラ、マリー・アントワネット

クレオパトラ(以下パトラ):
 じゃがいもは南アメリカ大陸のアンデス山脈が原産で、今でも3000m級の高山地帯で野生種を見ることができるわ。

マリー・アントワネット(以下マリー):
 それを現地の人たちが栽培化したってことかな。

パトラ:
 そうね。西暦500年頃から栽培が始まったって言われていて、あのマチュピチュでも主要作物とされていたらしいわ。ちなみにじゃがいもはナス科の植物で、分類状はヒルガオ科のさつまいもやサトイモ科のサトイモなどとは違う種類の植物よ。

マリー:
 え、イモってそれぞれ違う仲間だったの?

パトラ:
 そうよ。じゃがいもはナス科ナス、タバコなんかの仲間ね。

マリー:
 なんか意外。

パトラ:
 じゃがいもは普通地面に埋まっている地下茎という部分しか見ないから、イメージしにくいかもしれないわね。

マリー:
 あ、でも花は確かにナスに似てるね。あと育てるとトマトみたいな実がなることもあるよ!

パトラ:
 でも、実は食べちゃダメよ。特に若いものは毒があるからね。

マリー:
 そうなの? 危なかった……。

パトラ:
 さて、そんなじゃがいもが世界に知られたのは、大航海時代の16世紀頃。はっきりした年代は不明よ。

※1570年頃、スペイン人がお土産として持って帰ったのだろうといわれています

マリー:
 こんな美味しいものが見つかって、みんな喜んだだろうね!

パトラ:
 ところが、じゃがいもが食料として、ヨーロッパに定着するには100年以上も時間がかかったの。

マリー:
 え、どうして?

パトラ:
 元々ヨーロッパには「イモ」という食べ物がなかったの。みんなこのゴツゴツした茶色い謎の塊を見て、気味悪がったわ。

マリー:
 あー。言われてみれば他の野菜とかと全然違うもんね。

パトラ:
 しかも、さっき実の話もしたけど、葉っぱや芽の部分にはソラニンという毒があるから、知らずに食べた人が食中毒になることもあったの。

 イギリスのエリザベス女王もじゃがいもをよく知らない料理人が葉っぱごと料理したものを食べて中毒を起こしたり、幸い大事には至らなかったけど、危険な作物というイメージがついてしまったわ。

マリー:
 なるほど……。確かに習わないと芽を取らなきゃダメとかわかんないよね。

パトラ:
 っていうか初めての食材を1発目から女王に食べさせるのもどうかと思うけど。
 ちなみにナス科の植物は有毒なものも多く、魔女が使ったと言われるヒヨスやベラドンナ、マンドレイクもナス科の植物よ。

マリー:
 なんか、ロープレとかで聞いたことある!

パトラ:
 葉っぱや花の形状からじゃがいもがナス科なのは知られていたし、そういうのもあってイメージが悪かったの。そんなわけで、はじめは食料というより鑑賞用とか研究用に使われたという感じね。
 そしてじゃがいもの別の問題が「宗教」に関することよ。

マリー:
 キリスト教的にアウトだったってこと?

パトラ:
 そう。まずじゃがいもは聖書に書かれていない植物。

マリー:
 ま……。まあ大航海時代にようやく伝わったんだもんね。

パトラ:
 それと、じゃがいも特有の繁殖方法が問題になったの。通常、動物も植物も雌雄があって子孫を増やすじゃない。でも、じゃがいもは単体でも増えることができるのよ。

マリー:
 ああ、タネ芋を植えて増やすのが一般的だよね。

パトラ:
 そのじゃがいもの特性が「神の定めた男女の結びつき以外の方法で増えるのは性的に不純」という理由で告発されてしまったのよ。

パトラ:
 こうしてじゃがいもはローマ・カトリック教会から破門を言い渡され、宗教裁判で有罪。火あぶりの刑を宣告されたわ。

マリー:
 教会の人は暇だったの?

パトラ:
 しかも、宗教裁判は控訴権はないから、第一審で有罪は確定。すぐに刑は執行されたわ。

マリー:
 じゃがいもだから、酵素はあったはずなのに控訴はできなかったのね……。

パトラ:
 いや、そういうのいいから。

マリー:
 でも、じゃがいもの火あぶりにしたら、ただの焼きポテトが生まれるだけのような。

パトラ:
 ええ。おそらく刑場には香ばしい香りが漂っていたことでしょうね。

■食糧危機とじゃがいもの普及

パトラ:
 こんなふうに、じゃがいもはヨーロッパに持ち帰られてからも、長いこと不遇の時代だったんだけど、1560年から1660年までの1世紀、地球規模の気候の寒冷化によって、農業は軒並み凶作になり、飢饉が頻発。さらに相次ぐ戦乱もあって、ヨーロッパは「17世紀の危機」と呼ばれる時代に入るわ。

マリー:
 大変な時代だったんだね……。

パトラ:
 そんな中、1662年にイギリスのサマセット州のとある農場経営者が、じゃがいもを飢饉対策に使ってはどうかと。王立協会に提案するの。彼は、じゃがいもは寒冷で痩せた土地でも育ち、栽培が簡単な上に3ヶ月ちょっとで収穫できるという利点があり、仮に畑が戦場になって踏み荒らされても、麦と違って地中にあるじゃがいもは、戦乱の被害を受けにくいということをアピールしたわ。

マリー:
 特に3ヶ月で収穫できるっていうのが食料危機の時には大事だよね!

パトラ:
 結局、エリザベス女王食中毒事件もあって、イギリス本国での普及は遅れたんだけど、もともと食糧不足が深刻だったアイルランドで大いに普及したわ。18世紀になると今のドイツ北部プロイセンのフリードリヒ大王がじゃがいもに着目、積極的に栽培を奨励。

 イメージの悪かったじゃがいもを率先して食べ、国内各地を巡って自らプロモーション活動をしたの。

マリー:
 へえー。王様自らなんて本当に積極的な人だね。

パトラ:
 それでも拒否する農民には耳や鼻をそぎ落とすなどの刑罰を加えたわ。

マリー:
 いや、積極的っていうか強制ですよね!?

パトラ:
 そういう努力の甲斐あって、プロイセンではいち早く、じゃがいもが普及して国力増強に一役買ったわ。

マリー:
 今でもドイツといったら、ジャーマンポテトってイメージだもんね。

■ルイとマリーとじゃがいも

パトラ:
 フランスの事情については、マリーの方が詳しいかしら。

マリー:
 そうだね。じゃあここは私に任せてね! フランスではとある学会で「飢饉の時に小麦にかわる食料を発見した人に多額の賞金を与える」っていう布告が出たんだけど、それがえーっと……。

パトラ:
 1771年?

マリー:
 それそれ! そしたらパルマンティエ男爵っていう人がじゃがいもを提案してきたの。パルマンティエさんは戦争でプロイセンの捕虜になったときに、じゃがいもを知ったんだって。

パトラ:
 実際に厳しい状況でじゃがいもの有用性に気づいた人なのね。それは説得力あるわね。

マリー:
 あ、ちなみに男爵は貴族の中では一番下っ端だよ!

パトラ:
 そんなとこ擦らなくていいの!

マリー:
 それで、マリーちゃんのダンナことルイ16世はバルマンティエさんの提案を入れて、2人でじゃがいも普及大作戦を始めたのね。

パトラ:
 具体的にどういうことをやったの?

マリー:
 まずじゃがいもの悪魔的なイメージの払拭から始めたの。例えばルイ16世は上着のボタンにじゃがいもの花をあしらったり、パルマンティエ男爵は私にじゃがいもの花で頭を飾って、パーティーに出るようにアドバイスしたりね。

 それで私もじゃがいもの花がだんだん愛おしくなって、観葉植物として育てたりもしちゃって。

パトラ:
 なるほど。一番偉い人たちが率先するのはやっぱり効果的だものね。

マリー:
 それに言っちゃあれだけど、私って軽くファッションリーダー的なやつじゃん? そしたら上流階級のみんなの間に流行っちゃってさ。

パトラ:
 ま。まあ一応悪いイメージは取り除けたかしらね。

マリー:
 そのあと、ルイ16世とパルマンティエ男爵は国営農場でじゃがいもを栽培したんだけど、「これはじゃがいもという上流階級のためのめちゃくちゃ美味しい栄養満点の作物である」って噂を流して、兵隊を置いて警備させたの

パトラ:
 あら、広めたいのに国営農場で警備させたの?

マリー:
 それが作戦だったのです! 昼間は厳重に警備させておいて、夜になったらわざと警備を緩めたのね。そうすると好奇心旺盛な庶民の人がこっそりじゃがいもを持ち出したりするわけ。こうして強制じゃなく自然とじゃがいもを普及させるという方法ね!

パトラ:
 なるほど。現代マーケティングでも勧めるより自分で選ぶように仕向けた方がモノに対する信頼性が高まるっていうし、理にかなった方法ね。

マリー:
 でしょ? うちのダンナさんも結構やるわよねー。バルマンティエ男爵はじゃがいもの栽培方法やレシピの本も出版して、ルイ16世は「あなたが貧者のためのパンを発見したことに、フランスは当分感謝し続けるだろう」って言っていたわ。

パトラ:
 王様からそんなふうに言われて、男爵も誇らしかったでしょうね。

※パルマンティエの名は「アッシェ・パルマンティエ」などのジャガイモ料理の名称になっていたりもします

マリー:
 始めのうちは貧乏人の食べ物と見られていたじゃがいもなんだけど、1800年ごろには上流階級の人でも食べるものになっていったんだよ。……でも、結局その後フランス革命が起きて、私たち夫婦の評判なんてダダ下がりになっちゃったんだけどね……。

パトラ:
 うっ……。話が重くなるから次の話題にいきましょうか。

■じゃがいもの意外な貢献

パトラ:
 じゃがいもはそのものの食料の価値だけでなく、他の分野にも大きな貢献をしたわ。例えば庶民でも豚肉が気軽に食べられるようになったりね。

マリー:
 なんでじゃがいもと豚肉が関係あるの?

パトラ:
 もちろん豚自体は大昔から飼育されていたんだけど、餌には人間の食べ物と同じ大麦やライ麦などが与えられていたの。そうなると食料不足になる冬にはどうしても豚を多く飼うことはできなくなってしまう……。そのため毎年の豚の数は制限されてしまうの。

マリー:
 ふむふむ。

パトラ:
 でも、豚はじゃがいもも食べられるから、有り余るほど収穫できるじゃがいもを餌にして、人間はこれまで通りの麦とじゃがいもを併用すれば、冬にも多くの豚が飼える……。

 冬を越す豚が増えるほど生まれる子豚も増えて、豚肉が多く食べられるようになったというわけね。

マリー:
 なるほど!

パトラ:
 またじゃがいもはビタミンCも豊富に含んでいて、船旅につきものの壊血病の解消に役立ったわ。

マリー:
 ああ、ビタミンC不足の恐ろしい病気だよね。

パトラ:
 当時はビタミンCが発見されていなかった上、ビタミCは熱を加えると壊れてしまうので船での食事にはほとんどビタミンCが含まれていなかったの。

マリー:
 レモンが効くって思っても加熱殺菌したレモンジュースは効かなくてわけわかめ状態だったんだよね。

パトラ:
 でも、じゃがいものビタミンCはでん粉で守られていて、加熱しても生き残る割合が高いの。おまけに食材自体の保存性も高いしね。普及は遅くなったけど、じゃがいもは、フランスの船乗りに「大地のリンゴ」と呼ばれて重宝されたわ。

マリー:
 そっかー。あ、それで日本にも船でじゃがいもが持ち込まれたってことかな?

パトラ:
 そう。戦国時代の日本にじゃがいもを伝えたのはオランダ人で、当時東南アジアのジャカルタ経由で運ばれた芋ということで、「じゃがたらいも」と呼ばれたの。

マリー:
 それがじゃがいもの語源っていうことだ!

■アイルランドとじゃがいも飢饉

パトラ:
 イギリス本国ではエリザベス女王の食中毒事件の影響もあってじゃがいもの普及が遅れたんだけど、アイルランドは土地が痩せていて飢饉が頻発していたため、じゃがいもはすぐに普及したわ。まあ、この貧しい土地の人が食べるものというイメージも、イギリスにじゃがいもが普及するのが遅れた要因かもしれないけど。

マリー:
 どうかな……。そもそもイギリスの食べ物自体アレだし。じゃがいも無かったら、フィッシュアンドチップスすら存在が危うくなるよ。

パトラ:
 とにかく、アイルランドではもはや主食とも言えるレベルでじゃがいもが普及していたんだけど、1846年から48年にかけてじゃがいもがかかる病気が大流行、収穫に壊滅的な被害が出たわ。

マリー:
 えぇ……。なんでそんなことになったの?

パトラ:
 アイルランドではじゃがいもが食料として優秀すぎて、収穫料の多い1つの品種にだけ、依存するようになってしまっていたの。そしてじゃがいもは単為生殖、だから全てのじゃがいもは同じ遺伝子でできていたわ。

 つまり病気に対する抵抗力も全く同じ……。そのため「ジャガイモエキビョウキン」に感染したアイルランド全土のじゃがいもは壊滅。75万人から100万人が餓死し、同じくらいの人数がアメリカなどの外国に移住していったわ。

マリー:
 そんなにひどいことになったんだ……。

パトラ:
 最終的にこの飢饉でアイルランドの人口は半分になったとさえいわれるわ。その後、アメリカに移住したアイルランド人の多くは差別され、低賃金労働者として不遇な環境に置かれていたのだけれど。そんな中で生まれたアイルランド系のスターが、ケネディ大統領よ。

マリー:
 ケネディさんってアイルランド系だったんだ!

パトラ:
 ええ、他にもあのウォルト・ディズニーもアイルランド系だし、現在のバイデン大統領もアイルランド系の子孫よ。

マリー:
はえー。有名な人も結構いるんだね!

パトラ:
 じゃがいもがなければヨーロッパの人口がこんなに増えることはなかったかもしれないし、じゃがいも飢饉がなければアイルランド人がこんなに多くアメリカに渡ることはなかったかもしれない……。

 こう考えると、今の世界を作った何割かは、じゃがいもの影響になるのかもしれないわね。

パトラ:
 というわけで、これがじゃがいもが世界史に与えた影響よ。

マリー:
 うーん。食べ物ってただの文化の一部だと思いがちだけど、今の歴史に大きな影響を及ぼしていたんだね。

パトラ:
 そうね。じゃがいもほどじゃなくても、トマト、ピーマン、唐辛子、とうもろこしなどなど。アメリカ大陸の食材は世界を大きく変えたと言っていいわね。

マリー:
 そっかあ。ピザとかパスタとかカレーとかもそれらがないと全然味気なくなっちゃうもんね。

パトラ:
 まあ、どんな些細なものでも、それが全て組み合わさって、今の世界ができているということね。

マリー:
 とりあえず今回の解説でダンナと私の評価が少しでも上がったらいいな!

 

 モンド・ヒストリカ@歴史さんのチャンネルであは今回紹介されたじゃがいも以外にも、食材にまつわる世界の歴史を分かりやすく紹介されています。
 興味がある方はぜひ他の動画も視聴してみてください。


▼動画はこちらから視聴できます▼

『【歴史解説】じゃがいも史 世界を変えた地下茎』
https://www.nicovideo.jp/watch/sm40635115

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