なぜセンター試験が廃止されて“大学入学共通テスト”に変わったのか? 大学入試センターの発足、共通一次など、試験の歴史を振り返る
今回紹介する、敗北図鑑ゆっくりルーザーズさん投稿の『【センター試験】なぜ廃止に?共通テストに変更となった理由とは【ゆっくり解説】』という動画。
なぜセンター試験が廃止されて“大学入学共通テスト”に変わったのか? 大学入試センターの発足や共通一次など、試験の歴史ついて、音声読み上げソフトを使用して解説しています。
■2020年に廃止されたセンター試験
霊夢:
カキカキ、カキカキ。
魔理沙:
霊夢、今日は何をしてるの?
霊夢:
センター試験の過去問を解いてるよ。
魔理沙:
え? なんでまたセンター試験?
霊夢:
実は大学受験をしてみようと思ってるんだよね!
魔理沙:
お、おお、そうなのか。受験勉強をするのは良いんだけどさ……。実はセンター試験は2020年の実施を最後に廃止されたんだぜ。
霊夢:
ふぇ……? な、なんで?
魔理沙:
それじゃあ今回は、多くの受験生を困惑させた、「センター試験廃止」の理由について解説するぜ。
霊夢:
よろしくお願いします。 センター試験はどうして無くなってしまったの?
魔理沙:
受験生の恨みは怖いんだぜ……。センター試験は時代が変化したことで廃止することが決定し、代わりに大学入学共通テストが誕生することに決まったんだぜ。
霊夢:
共通テスト? じゃあ今までの努力は無駄だったってこと?
魔理沙:
センター試験過去問も共通テスト対策として有効だからそう焦らなくて大丈夫だぜ。
霊夢:
そう……。
■30年間続いたセンター試験の歴史
魔理沙:
まずはセンター試験とは何か、というところから説明していくぜ。
霊夢:
よろしくお願いします。
魔理沙:
センター試験は1990年から2020年まで、独立行政法人大学入試センターにより行われてきた大学入試者選抜テストだ。
最後に行われた2020年のセンター試験では52万7072人がセンター試験を受験したんだぜ。
霊夢:
センター試験が無くなってるなんて想像もしたこともなかったよ。
魔理沙:
例年1月13日以降の最初の土曜日、日曜日に2日間にわたって行われていたんだぜ。
霊夢:
センター試験と言えば年明けすぐの雪が降る季節をイメージするよね。それにしても、センター試験の歴史は30年間だけだったんだ。もっと昔からあるものかと思ってたよ。
魔理沙:
良いところに目をつけたな。センター試験以前は、1979年から1989年まで、国公立大学入試選抜共通一次学力試験(略称:共通一次)というものが行われていたんだぜ。
霊夢:
初めて聞いたよ。
魔理沙:
その後1990年から共通一次はセンター試験に変更となり、2021年からは共通テストに置き換わったという歴史があるんだぜ。
霊夢:
へえ。3つの試験はどういう違いがあるの?
魔理沙:
まず共通一次試験だが、これは国公立大学と産業医科大学への入学を志願する人を対象に行われていた試験なんだぜ。
霊夢:
国公立大学は分かるけど、産業医科大学というのは何?
魔理沙:
福岡にある産業医学の振興を目指す私立大学のことだぜ。
霊夢:
大学名なんだね。
魔理沙:
センター試験は共通一次とは違い、産業医科大学以外の私立大学も対象に取り入れていることが、2つの試験の大きな違いなんだぜ。
霊夢:
なるほどね。国公立を受けない人もセンター試験は受けると色々なメリットがあるものね。
魔理沙:
ああ、そうだな。共通一次、センター試験とも、毎年40万人以上が受験することから、採点のしやすさも考慮してすべての問題がマークシート式となっていたのもひとつの特徴だぜ。
そして2021年から始まった共通テストでは、従来の知識重視のセンター試験から、「思考力」「判断力」「表現力」を重視する試験へと置き換わったんだぜ。
霊夢:
おお! よくわからないけどすごいね! 共通テスト! それにしても定期的に試験が変わっていくものなんだね。
■共通一次
魔理沙:
まずは共通一次の話からひとつずつ詳しく解説するぜ。
共通一次試験が生まれた理由だが、これは1960年代に国内の大学進学率が急上昇し、特定の大学への志願者が集中したことに端を発した試験なんだぜ。
霊夢:
大学進学率が上昇したことと共通一次試験にはどのような関係があるの?
魔理沙:
1960年当時は共通一次やセンター試験のように、受験生全員が一律で受験する試験が無く、大学進学率が上昇して受験戦争が激化すると、各大学が個別に用意する試験の中には、高校の学習指導要領から逸脱した出題などが現れたんだぜ。
霊夢:
受験生を振るい落とすために、授業で聞いたことも無いような問題を出題してたってことだね。
魔理沙:
そういうことだ。これに対応するように高校教育も学習指導要領に準じた授業ではなく、難化した大学受験の対策として、知識中心の受験準備教育に陥るといった弊害が生じたんだぜ。
霊夢:
なるほど。本来高校の授業は受験のために存在してるわけじゃないものね。でもその弊害は現代にも受け継がれている気がするね。
魔理沙:
たしかにな。そうした問題に対処するべく、1970年ごろから国公立大学の入学試験制度の改革が検討され始めたんだ。
霊夢:
おお!
魔理沙:
1977年に大学入試センターが発足し、全ての国公立大学と産業医科大学の入学志願者を対象とした共通一次試験が1979年から実施されるようになったんだぜ。
霊夢:
それならちゃんと学習指導要領に沿った高校の勉強をしっかりとこなせば、大学に入学できて安心だね。
魔理沙:
ちなみに霊夢が大好きなマークシート方式が試験に採用されたのも共通一次からだぜ。
霊夢:
よくやった! 記述式と違って解答用紙に空白が出来ることは無いのが素晴らしいよね! マークシートこそ受験生の最後の希望! 人生を賭けたロトシックス!
魔理沙:
まあ言いたいことは分からなくも無いんだぜ。ただ、マークシート方式が採用された当時、「鉛筆さえ握れば誰でも正解できる」などと揶揄されることもあったみたいだぜ。
霊夢:
それが良いところなのに。
魔理沙:
こうして生まれた共通一次試験だが、次第に出願や配点の方式、つまり試験制度が問題視されるようになっていったんだぜ。
霊夢:
試験制度に何か問題があったの?
魔理沙:
当時は共通一次試験の結果を元に、全国の国公立・産業医科大学の1校のみを志願することで、二次試験(本試験)を1度だけ受験できる制度だったんだ。
霊夢:
い、1度だけか。
魔理沙:
これは「受験地獄をあべこべに悪化させている」「大学の序列化を不当に招いている」といった批判を受けていたんだぜ。
霊夢:
ふうん。試験に歴史ありだね。
魔理沙:
そうした批判を受け、1990年1月より共通一次試験は大学入試センター試験にリニューアルされた。
霊夢:
よ! 待ってました!
魔理沙:
国公立大学だけでなく、私立大学でも試験成績を利用できるようにするなど、共通一次試験の時代にあった制度上の問題が改善され、さらには学習指導要領に伴い試験内容が随時変更されるように調整されたのが、みんなお馴染みのセンター試験なんだぜ!
センター試験:
そのとおり。
霊夢・魔理沙:
こ、この声は!?
センター試験:
どうも。皆に惜しまれながらこの世を去った1月の風物詩、センター試験です。
霊夢:
何やら悲しげな雰囲気の奴キターーー!
魔理沙:
共通一次試験は従来の大学入試にあった奇問、難問、重箱の隅をつつく問題をなくし、一定の学力基準を図ることを目的として導入されたが、100%それらの問題を排除しきれていなかったこともひとつ問題視されていたんだぜ。
霊夢:
おお? ということは?
魔理沙:
そう、センター試験はそういった問題を排除しつつも、各教科とも平均点が6割程度になるように作成されている安心と信頼のテストなんだぜ。
センター試験:
私こそが受験生が目指す山の頂であり、登頂した者は合格という絶景を拝むことが出来る。その景色を見ることが出来た学生、見られなかった学生にも悔いを残さないよう公平な制度に則り、良問の出題を目指すことこそが私に与えられた大いなる役目。
霊夢:
か、かっこいい!
魔理沙:
そうしてセンター試験は30年もの間、受験を恐れる人々からは忌み嫌われながらも、2月に控える二次試験や私大受験などに先立つ最初の関門として受験生に立ちはだかり続けたんだぜ。
霊夢:
でも何か問題があったから2020年を最後に廃止されたんだよね。
魔理沙:
ああ。センター試験は廃止され、大学入学共通テストに置き換わることになった。その理由は先ほども説明した通り、従来の知識重視のセンター試験から、「思考力」「判断力」「表現力」を重視する試験へと変更するためだぜ。
霊夢:
ふむ?
魔理沙:
センター試験は知識の記憶だけで解くことが出来る、「知識偏重」の傾向が強いことが一部で問題視されていたんだ。
霊夢:
たしかに、いかに暗記しまくって詰め込みまくるかが大学受験というイメージはあるよね。
魔理沙:
もちろん、詰め込み型の勉強によって身につけた学力も当然社会でも役立つ力となる。ところが、センター試験が開始した1990年頃と現在では、国際化やデジタル化などの観点から社会が大きく変化しているんだぜ。
霊夢:
それってどういうこと?
魔理沙:
インターネット技術が台頭し、AI技術やロボット技術なども進歩する中、以前と比較して知識よりも思考力が問われる時代に突入しているということだぜ。
霊夢:
なるほどね。
魔理沙:
野村総合研究所のレポートでは、「日本の労働人口の49%が人工知能やロボットで代替可能になる」とも言われているんだ。
霊夢:
え? 今の仕事の半分は無くなってしまうということ?
魔理沙:
そういうことだな。もっともこれは2015年当時の未来予想でしか無いから、実際にどうなるかは今後も長く生きていくことでしか目の当たりにすることは出来ない。
しかし、こうした社会状況の変化によって、以前の日本と比較して、知識重視の試験を得意とする人材よりも、柔軟な思考力、判断力、表現力を備えた知識のある人材が社会でも必要とされるようになっていくのは確かだろう。
霊夢:
それはそうかもしれないね。
魔理沙:
このような社会の変化に対応する形で、大学入試も変わっていく必要があった。その結果、センター試験は大学入学共通テストに置き換わることで、AIやロボットでは代替できない人間の能力として、「思考力」「判断力」「表現力」を重視することを目指したというわけだぜ。
霊夢:
それは納得の変更だね。
魔理沙:
他にも考えられる理由としては、現在日本の大学は海外の大学と比較して世界の大学ランキングが低いという指摘もあるんだぜ。
霊夢:
そうなんだ。東京大学でも世界では低い方なの?
魔理沙:
そうだな。東大ですら、世界の大学ランキングでは23位に位置しているんだぜ。
霊夢:
へえ。てっきり世界でもトップなのかと思ってたよ。
魔理沙:
一方、ランキング上位の海外大学では、日本の入試とは違って学力以外の面、推薦書や論文の提出、高校の成績などを多面的に評価する傾向があるんだ。
そこで、日本でも知識や暗記だけでなく、受験生の能力を多面的に評価することを目指してセンター試験の廃止と大学入学共通テストの実施に繋がったとみられているんだぜ。
センター試験:
ぼくはもうお役御免ってわけですか。そうですか。
霊夢:
センター試験さん……。
魔理沙:
たしかに時代が変化したことでセンター試験は廃止となってしまった。しかし過去、試験を受験した何千万人という受験生の中には、廃止に対して少し寂しい思いをしている人もいるんじゃないかな。
霊夢:
そうだそうだ!
センター試験:
ふたりとも、ありがとう……。
霊夢:
さようなら、センター試験さん。
魔理沙:
センター試験は30年に及ぶ長い役目を全うしたということだな。
■大学入学共通テストってどこが変わったの?
霊夢:
センター試験からその大学入学共通テストに変わったことで試験内容はどういう風に変わったの?
魔理沙:
そうだな。試験改革の二枚看板として、記述式問題と英語民間試験の活用が計画されていたんだが、
霊夢:
いたんだが?
魔理沙:
それはどちらも無くなったぜ。
霊夢:
え?
魔理沙:
全国で約50万人が受験する試験で記述式問題を出題したところで、採点が大変なのでこれは無しになった。
霊夢:
ええ?
魔理沙:
英語民間試験というのは、英検やTOEICなどの試験を導入するという目論見だったわけだが、こちらは地域格差や家庭の経済格差の観点から見送ることになったんだぜ。
霊夢:
じゃあ、センター試験から何が変わったの?
魔理沙:
そうだな。数学の試験時間が60分から70分に変更されたぜ。
霊夢:
ん?
魔理沙:
他にも英語の出題内容が発音やアクセント、語句整序といった問題が無くなり、設問文も英語に変更された。
霊夢:
うん?
魔理沙:
あとは、センター試験ではリーディングよりリスニングの配点が低かった英語において、リーディング、リスニングの配点がどちらも100点に変更となったぜ。
霊夢:
へ、へえ。
魔理沙:
まあ、それでも全体的に資料を元に解く問題がセンター試験よりも多く、 思考力・判断力・表現力を問われるような内容にはなっているんだぜ。
霊夢:
ふうん。あんまりセンター試験と変わらないような気がするけど。まあいっか!
センター試験:
(それなら名前変えなくても良かったんじゃ……。)
大学受験といえばセンター試験というほどの代名詞となっていましたが、時代の変化にともなって終了してしまいました。
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