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5分で分かる“ピクサー映画”の特徴「泣くタイミングが用意されてる」「実はブラックジョークが大盛り」

現代企業にも必要な「基本理念」の存在が名作を生み出す

マクガイヤー:
 エド・キャットムルが出してる「基本理念」というのがあって、「アイデアよりも才能を持った人が大事である」と。

マクガイヤー:
 管理職の仕事はリスク回避じゃなくて危機に陥ったときの回復であるし。

しまさん:
 それは、本当にそうですね。

マクガイヤー:
 どんなときでも、本音で語り合える環境が大事だし、思い込みを常に見直し常に云々みたいな。これは、それ大事だけどこれを実行するのはすごく難しいわけですよね。

しまさん:
 難しいね。働きやすい職場ですよ、これが実行できれば。

マクガイヤー:
 そうそう。だって、どんなときでも本音で話し合えるのが大事と言っても、平社員が社長にダメ出しとかできないわけじゃないですか。社長にダメ出しとかしたら「ちょっと君こっち来て」みたいなこと言われる。で、管理職はリスク回避をどうしても考えちゃうもんなんですよ。自分の立場を守るために。

しまさん:
 そりゃそうだね。

マクガイヤー:
 常に欠点を探し続けるって言っても、すごい成功した人に「ここダメでしたよね」ってダメ出しとかしたら「お前何言ってるんだ」みたいな逆ギレとかされたりするわけじゃないですか。

しまさん:
 本当だね。何重にも解釈できるね。才能とは何か、リスクとは何か。

マクガイヤー:
 こういうのを意識してシステムとしてやるのはものすごく大変で、それがここに書いてありました、この本に。

しまさん:
 これは面白い本なんですか?

マクガイヤー:
 この本はすごい面白かったですね。

しまさん:
 これはエド・キャットムルさんが書いた本なんですね。

マクガイヤー:
 エド・キャットムルが書いたか聞き出しかはわかんないですけど、結構あけすけに喋ってて、本当にスティーブ・ジョブズがすごかったみたいな話とかが最高に面白かったですね。

 これに比べるとこっちの文庫本の方は翻訳口調で結構読むのが大変だったんですけど、唯一面白いのがやっぱりスティーブ・ジョブズに関するところで。

マクガイヤー:
 ジョブズが途中でアップルに戻ったんですよ。ジョブズはアップルを追い出されたんだけど、『トイ・ストーリー』が成功したあと別にピクサーとは関係なくアップルの社長に戻ったじゃないですか。それで本当に安心したと。

 スティーブは、あまりにも頭が切れてあまりにも多くを与えたがり、あまりにもエネルギーが有り余っていたから他にもはけ口が必要だった。

しまさん:
 (笑)。もうわしらだけで面倒見られんと。

マクガイヤー:
 そう。だからピクサーに全精力を傾けられたらもう俺たち困ると。

しまさん:
 もたんと。

マクガイヤー:
 もたんと。スティーブがピクサーに与えたいと思っていたことを、実はピクサーはそれほど必要としていなかった。そのことを巡ってギクシャクしていた……だからアップルに復帰してくれて本当によかった。

 スティーブが情熱をそちらに注ぎながら、ピクサーが本当にスティーブにやってほしいことだけをやってくれるようになったから。つまりディズニーをうまく取り仕切ってピクサーに有利な配給条件を引き出すことよ。

しまさん:
 いやあ、そんなことを言われる人もすごいよね。すごいわ。

マクガイヤー:
 この本の本当に面白いところは、ピクサーに買収される前の場面で、いろいろ条件を詰めるところでいろいろ揉めたと。ただジョブズとしては、まずルーカスから『ネクスト』というコンピューター部門を買い取って、自分の好きなパソコン会社のようなものを作りたかったんだけど、その後ネクストっていうのを自分で作ったんで、そこはオッケーになった。だからだいぶ軟化してきたと。

しまさん:
 さて、それでピクサーと何をやるか。

マクガイヤー:
 それでピクサーと何をやるかっていう時に「SIGGRAPH(シーグラフ)【※】」という、見本市みたいなのがあるわけですよ。アメリカの展示会みたいなのが。そこでいろいろ話をしてたと。そのときにですね、サン・マイクロシステムズの創業者のもうひとり、ビル・ジョイというのが出てきて、ビル・ジョイとスティーブ・ジョブズが同じ感じで鼻を突き合わせて話をしたと。

 「ふたりがこの時どんな立ち話をしたのか覚えていないが、その話し方は今でも覚えている。両腕を後ろ手に組み、鼻を突き合わせるようにして立ち、完全にシンクロして左右に体を揺らしていた。周りで起こっていることに、まったく気づかない様子だった。その状態がかなり長い間続いたが、ようやくスティーブが他の誰かと会うために話を切り上げた。スティーブが立ち去るとビルは私の方を向いて言った。『まったくもって傲慢な男ですね』と。その後、うちのブースに戻ってきたスティーブは、私のところに来てビルの感想を言った。『まったくもって傲慢な男でしたね』と。私はこのタイタンの戦いの瞬間に衝撃を覚えたものだ。」という、なかなかキャットムルさん、良い。

※SIGGRAPH(シーグラフ)
アメリカコンピュータ学会におけるコンピュータグラフィックスを扱う分科会であり、同分科会が主催する国際会議および展覧会。

しまさん:
 なかなか良いディティール切り取ってきますね。

マクガイヤー:
 だってこのあとスティーブ・ジョブズはこいつの上司になるわけですからね。

しまさん:
 もうコンテで浮かんでるんですよね、エド・キャットムルの中ではね。

マクガイヤー:
 いい話ですよ。こういう話が、特にスティーブ・ジョブズに関する話は全部面白い。

しまさん:
 この人がジョブズのアニメ作ればいいのにね。

マクガイヤー:
 できそうですね。

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