ピクサーの“神ってる”社員待遇! 本社で働く日本人が語るクオリティの高いものが作れる理由
ニコニコ生放送では、『ファインディング・ドリー』Movie NEXの発売&配信を記念して、日本初となるピクサー・スタジオ(アメリカ・カリフォルニア)からの潜入生放送を敢行!
朝食からランチ、そして仕事風景など、ピクサー・スタジオの公私を約12時間に亘ってお届けした放送内でも、とりわけ印象的だった『ピクサーで働く日本人2人への直撃インタビュー』部分を特別に記事化。
映画ライターのよしひろまさみち氏をインタビュアーに、ピクサー・スタジオで働く小西園子氏、原島朋幸氏に“『ファインディング・ドリー』で担当した仕事”、そして、ベールに包まれているピクサーの福利厚生面からリクルート事情まで伺います。
「すげぇ!」と感じずにはいられない“ピクサー流働き術”とは!? ピクサーで働くために必要なこととは!? 現地で実際に働いている日本人スタッフだからこそ知り得る、ピクサーの内部に迫ります!
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二人の日本人はピクサーでどんな仕事をしているのか!?
よしひろ:
映画ライターのよしひろまさみちです。本日はピクサーで働いている日本人スタッフお二方にお話を伺うため、ピクサーのスタジオへやってきました。
(入室するよしひろさん)
よしひろ:
お久しぶりです。本日はよろしくお願い致します。
二人:
こちらこそよろしくお願い致します。
よしひろ:
まずは自己紹介をお願いできますでしょうか。
小西:
テクニカルディレクターの小西園子です。よろしくお願い致します。
原島:
キャラクターアニメーターをしている原島朋幸です。よろしくお願い致します。
よしひろ:
お話をお伺いする前に、お二人にお土産を持ってきました。
よしひろ:
『ファインディング・ドリー MovieNEX 初回限定版』でございます! 角度によってパッケージの絵面が変わる特別仕様になっています!
小西:
あ! ホントだ! カワイイ!
よしひろ:
日本ってこういうものを作ることは上手いですよね(笑)。というわけで、どうぞ~
二人:
ありがとうございます~。
『ファインディング・ドリー』で担当したキャラクターたち
よしひろ:
Blu-ray+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)が一つにまとまっているいつでもどこでも見ることができる“MovieNEX”、オススメです! ……宣伝、すみません(笑)。では、お話を聞かせていただければと思うのですが、見ている方の中にはお二人を初めて知る人もいると思いますので、どんなお仕事をされているのか……特に『ファインディング・ドリー』でどんなことを担当されたのか教えてください。
小西:
私の仕事はシミュレーションといいまして、映画の中のキャラクターや物体を重く見せたり、キャラクターの部位をなびかせたり、海の中のプランクトンの動きなど、ディテールを処理する仕事になります。今回、特に力を入れたのがタコのハンクです。タコの足の動き、ぐにゃぐにゃした全体の動き、一つ一つくっつく吸盤などなど……大変でした(笑)。
よしひろ:
動きがまったく読めないキャラクターだけに大変だったでしょうね。
小西:
アニメーターの方にも頑張っていただいたおかげですね。
原島:
私はハンクのアニメーションは担当していないんですよね(苦笑)。
よしひろ:
というと、今回原島さんが担当したキャラクターは?
原島:
まず、キャラクターアニメーターという仕事は、「キャラクターに命を吹き込む」ことです。映画によって異なる部分はあるのですが、ハンクはコントロールする部分が多く難しいキャラクターだったと思います。ハンクを担当するアニメーターのチーム、といっても最初からハンクを担当するわけではなく、プロセスが進んでいくと徐々に決まっていく。ハンクを担当していた人たちは、次第にハンクをメインに仕事をするようになるという具合ですね。私は『ファインディング・ドリー』では、主に魚……ベビー・ドリーとドリーのお父さんとお母さんなどを担当しました。
よしひろ:
主要キャラばっかりじゃないですか!? 原島さんは『アーロと少年』でも大変なアクションを担当されていましたもんね。
原島:
そうですね……Tレックスを担当させていただきました(笑)。
ピクサー歴22年! 夢見て掴んだピクサーへの道
よしひろ:
ピクサーで働き始めたきっかけを教えていただきたいのですが、そもそも小西さんはすごい古株ですよね!?
小西:
そうですね。今年で22年目になります。
よしひろ:
ひぇぇぇ~~~!
小西:
一緒に仕事をしている同僚の子たちは20代中盤です。若いな~って(笑)。インターンシップで来ている学生の中には、22年前はまだ生まれていない子もいるほど。はははははっ。
よしひろ:
小西さんくらい長年ピクサーに席を置いている人って、ジョン・ラセターさん(『トイ・ストーリー』の監督などを務める)以外で何人くらいいらっしゃるんですか?
小西:
スタジオの中には1200人くらいいるのですが、『トイ・ストーリー』のクレジットに載っている人は45人くらいかなぁ。
よしひろ:
けっこう残っているんですね~。
小西:
でも、皆さん、監督さんとかプロデューサーさんというように出世しています(笑)。ですから、現場にいる古株は多くないと思います。
よしひろ:
となると、原島さんのように新しく現場に入ってきてくれる方はありがたいわけですよね!?
小西:
そうなんですよ。色々な方とお仕事できるのは楽しいですね。
よしひろ:
原島さんのきっかけは何でしょう? 元々、ピクサーに行きたかった……みたいな?
原島:
ですね。CGのアニメーターになりたいと思ったときに、CGはアメリカから始まっているところがあって、手書きのアニメーションはディズニー。でも、コンピューターアニメーションと言えば、最初はピクサー。ですから、いつかはピクサーで働きたいという気持ちはずっとありました。
よしひろ:
小西さんのように黎明期からいる方と一緒に仕事をするって、どういうお気持ちですか?
原島:
日本でCGを勉強し始めた頃からすでに園子さんはピクサーで働いていて、雑誌でお名前を拝見したこともあるくらいでした。
よしひろ:
『CGWORLD』とかに出ていましたよね(笑)。
原島:
出てました(笑)。今、一緒に仕事をしているというのは不思議な感じがしますね。
こんなにすごいぞ! ピクサーの福利厚生
よしひろ:
自分が憧れていた人と一緒に仕事をする……しかもピクサー自体が憧れの職場。私は今回のスタジオ訪問でまさかの10回目(!)になるのですが、何度も訪れて思うのはピクサーってすごく福利厚生が良いですよね!?
小西:
たしかに(笑)。
よしひろ:
アメリカの企業って、社員の方を大事にする風潮がありますよね。家族との時間を大事にすることを尊重したり。とりわけピクサーは社員の方々を大事にしているように思えます。
小西:
長編映画を作っているときは、非常に体力が必要になるんですよね。プロダクションは体力が必要です(笑)! 体調を崩すとプロダクションに影響が出てしまうので手厚い対応……マッサージなどもしてくれます。
よしひろ:
えぇッ!? マッサージですか!?
小西:
締め切りが近くなったりすると来てくれるんですよ。
原島:
私は昨日、マッサージをしてもらいました。
よしひろ:
なんですと!?
原島:
だんだん忙しくなってくるとプロダクションの中で、「今日は何時から何時まで誰々さんがいるから、マッサージをお願いしたい人はサインアップして」という具合に、オンラインでイントラに上がるんです。希望を出すと5~10分ほどでマッサージ師が来てくれるんです。
よしひろ:
うわ~いいなぁ~。
まだまだあります、ピクサー社員への手厚い配慮!
原島:
あとは怪我の防止、特に腱鞘炎にならないように、机の高さや姿勢、マウスやペンなど、健康な状態で仕事ができているかチェックしてくれる人もいます。
よしひろ:
人間工学的な見地から?
原島:
そうです、そうです。怪我をしてしまうと工程に影響が出てしまう。会社としては、その人の仕事がストップすることで損失が出てしまうので、未然に防ごうということですね。
よしひろ:
1200人いると仰いましたが、一人一人が代えのきかない仕事ということでしょうか?
小西:
そうですね。メンバーが少なくなると本当に困ります。
よしひろ:
手厚いなぁ~。
小西:
お仕事を一生懸命していますから(笑)。
よしひろ:
たしかに(笑)。この前小西さんの部屋に行ったときに、椅子に座らないで仕事をしていたと思うのですが、あれは……?
小西:
立ったまま仕事をしていました。数時間立って、その後座って仕事をするという感じです。
よしひろ:
それは運動で!?
原島:
デスクの高さを調節できるようになっているんです。立っている方が姿勢としてはいい。座っていると前かがみになりますが、立っていると背筋が伸びやすい。ピクサーでは立って仕事している人が多いですね。
よしひろ:
へぇ~意外だなぁ。
小西:
でも、やっぱり腰痛や肩こりはありますけどね(苦笑)。J-POPを聞きながら小刻みに動いているので、自分なりに対策は講じていますけど。
よしひろ:
J-POPを聴きながらなんだ(笑)。
原島:
私はセリフを聴きながら仕事をするので、音楽が聴けない(笑)。とは言え、ストレッチブレイクもあるので、上手く切り替えることはできるかなぁ。
小西:
ヨガとかストレッチとか、ね。
よしひろ:
そんなことも!
小西:
カフェテリアでも食事に気を遣ってくれます。カロリー計算やオーガニック食材を使用した料理など、いろいろと体のことを気にかけてくれますね。