なぜ街の本屋は減っているのか? 全盛期から店舗数が半減した理由を「読書離れ」「通販や電子書籍の台頭」「業界の構造的問題」3つから読み解く
今回紹介する、敗北図鑑ゆっくりルーザーズさん投稿の『【書店】店舗数半減!?街の本屋が次々に閉店している理由とは【ゆっくり解説】』という動画では、音声読み上げソフトを使用し、街の本屋が衰退していった理由について解説していきます。
時代の変化が招いた本屋の衰退
魔理沙:
実は町の書店が閉店しているのは全国的な傾向なんだ。
霊夢:
そ、そうなの?
魔理沙:
書店調査会社のアルメディアによると、1990年代末に2万3000店ほど存在した全国の書店たが、2018年の地点で1万2000店ほどまで減少したそうだ。2022年現在、正確な数字は分からないものの、既に1万店以下となっているという見方が強いんだ。
霊夢:
20年が経つ間にそんなに減っちゃったんだ。いったいなんでなんだろう……。
魔理沙:
本を読まない人が増えたのも書店が衰退した一因ではあるが、そのほかにも書店が減少したことにはいくつかの理由があるんだ。書店の数が全国的に減っている理由は、読書離れ、アマゾンや電子書籍の台頭、業界の構造的問題という3つの理由に分類できるんだ。
霊夢:
なんかややこしそう。
魔理沙:
そうだな、分かりやすく説明するために、まずは出版業界の事から解説していく。霊夢は出版業界がどういう仕組みか知っているか?
霊夢:
そうだね。集英社とか講談社が本を作って、それを書店で売っているという感じ?
魔理沙:
おおむね正解だぜ! 日本には約2700社の出版社が存在し、それらの会社が書籍、雑誌、漫画などの出版物を製作。それらを取次(とりつぎ)会社と呼ばれる物流商社を通して日本中に存在する書店に卸すという仕組みとなっているんだぜ。
霊夢:
へえ。商社が間に挟まるんだね。
魔理沙:
そう。取次が全国の書店に対して書籍の配本を行い、同時に返品を受け付けているというのが出版業界の構造なんだぜ。
霊夢:
返品?
魔理沙:
知らなかったか? 日本の出版業界には返品制度というものが存在するんだぜ。
霊夢:
それってどういうこと?
魔理沙:
例えば霊夢がカードゲームを新たに考案して、カードショップで販売することになったとしよう。カードショップA店で10箱のカードを発注したにもかかわらず、1箱しか売れなかった場合、残りの9箱はカードショップ側の損失となるのは分かるか?
霊夢:
発注ミスしたお店の責任になるってことだよね。
魔理沙:
そういうことだぜ。ところが出版業界においては返品制度があるおかげで、10冊本を発注して1冊しか売れなかったとしても、残りの9冊を取次経由で出版社に返品することが可能なんだぜ。
霊夢:
それはすごい便利だね。
魔理沙:
こうした仕組みが存在するおかげで、書店は大量の在庫を抱えたとしてもリスクを背負わずに済んでいるということなんだぜ。
霊夢:
それは知らなかった。
魔理沙:
代わりに再販売価格維持制度と言って、書籍は安売りすることが出来ないようになっているんだ。
霊夢:
なるほどねえ。でも不思議だな。
魔理沙:
何がだ?
霊夢:
そんなふうな制度で守られているなら低リスクで書店の運営が出来るわけだし、今のように書店が減っている理由がますますわからなくなってきたよ。
魔理沙:
そうだな。返品制度や取次という便利なシステムによって、日本の書店は栄えに栄えまくったんだ。最初に説明したように、1990年代末には日本中で2万3000店舗、平均すると1都道府県あたり500店舗ほどの書店が立ち並んでいたということになるんだ。
霊夢:
それはすごいね。
魔理沙:
こうして書店は日本国民誰しもが通う存在となったんだ。
??:
その通り!
魔理沙・霊夢:
こ、この声は!?
書店A:
どうも、若者の読書離れによる被害者、書店Aです。やれやれ、最近の若者には呆れかえるよ。なあ霊夢さん。
霊夢:
ああ、そうですね。(私も本を読まないことは黙っておこう。)
書店A:
書店経営が厳しくなったのはひとえに若者のせい! 昔はよかった! みんな向学心を持って日常的に読書をしていたんだ! いつからこうなった!
霊夢:
そうなの? 魔理沙。
魔理沙:
確かに若者が読書をしなくなったというのも書店衰退の一因ではあるが、それは原因の1つに過ぎないんだぜ。
書店A:
え?
魔理沙:
書店全盛の時代、その売り上げをジャンル分けするとこのようになっていた。
霊夢:
へえ、雑誌の売上が大半を占めてるんだね。
魔理沙:
ところが、2020年はこうなっている。
書店A:
クッ……!
霊夢:
え! 全体的に減っているけど、特に雑誌の売上が減ってるんだね。
魔理沙:
その通りだ。ジャンル別に切り分けて考えると、書店が減っている最大の要因は雑誌の売上減少によるものなんだぜ。
霊夢:
そうなんですか?
書店A:
気づいてた……気づいてたさ、そんなこと!
魔理沙:
元々書店の売上の大半を占めていたのは雑誌だったが、2000年代に入りコンビニが増えてくると、雑誌の売上がコンビニに持っていかれてしまったんだぜ。
霊夢:
なるほど。たしかに雑誌を買うとしたら書店というよりはコンビニかもしれないね。
魔理沙:
さらにはインターネットが台頭したことによって多くの雑誌売上部数が減少してしまったんだ。
霊夢:
え? なんでインターネットが出てきたら雑誌が売れなくなるの?
魔理沙:
雑誌が読者に提供している情報は、各分野の専門的かつ速報的な情報だったわけだが、雑誌よりもインターネット記事の方が早く情報を提供するようになったことで、相対的に雑誌の需要が下がったというわけだ。
霊夢:
インターネットが無い時代は最新の情報を得るのに雑誌が便利だったんだね。確かに今なら最新情報が知りたければ、GoogleやTwitterで検索すれば済むもんね。
書店A:
た、たしかに。
魔理沙:
若者の読書離れというのは、実は単に情報の入手経路が紙媒体からインターネット媒体に置き換わったことが原因だと私は考えているんだぜ。
霊夢:
それは納得できるかも。あとはAmazon?
魔理沙:
そう。ネットで書籍を購入できるAmazonの存在も書店の下火に拍車をかけたんだ。今ではAmazonはあらゆるものを購入できるオンラインストアとなっているが、元々はオンライン書店として立ち上げられた事業だったんだ。
霊夢:
えー! 知らなかった!
魔理沙:
書店は返品制度を武器として持っていながらも、やはり大量の書籍在庫を抱えるには売場面積が必要になる。一方オンライン書店であれば売り場を持たずに多くのタイトルを販売することが出来る。また、ユーザーにとっても欲しい本を簡単に探すことが出来るAmazonは非常に便利な存在となった。
霊夢:
それは、そうだろうね。
書店A:
悔しいです。
魔理沙:
さらには電子書籍まで生まれた。これも最大手はAmazonが提供するKindle。書籍を購入するユーザーにとっては、①書店で買う②Amazonで買う③電子書籍を買うという3パターンの購入方法が生まれたことで、結果的に書店売り上げは減少、ひいては全国的な書店数が半分以下になるという事態に繋がったというわけなんだ。
霊夢:
そういう事情を考えると書店が減ってもなんら不思議ではないね。
書店A:
たしかにそうかも。
魔理沙:
まとめると書店が衰退した理由は、出版物売り上げの減少、とりわけインターネットの普及によって雑誌が売れなくなったこと。Amazonや電子書籍の台頭によって書店以外での書籍購入手段が生まれた事だと言えるんだ。
書店A:
こんなのどうしようもないよ。
霊夢:
たしかに時代の変化にはかないっこないよね。
魔理沙:
そうだな。こうした出版市場を取り巻く急激な変化に対して、書店はあまり変わることが出来なかったのが最大の敗因と言えるんだぜ。
霊夢:
それってどういうこと?
魔理沙:
この20年の間にはインターネットが普及し、Amazonが生まれ、電子書籍が生まれ、中古書籍販売のブックオフが生まれ、と、次々に出版物を提供する新たなサービスが生まれた。しかし多くの書店は20年前と変わらずに、ただ取次から送られてきた書籍を並べ、売れなければ返品するという経営を行い続けた。
霊夢:
つまりのんきだったってことね。
書店A:
君失礼だな。
魔理沙:
全国的に書店の数が減っていることは、時代の変化に応じて商習慣も変化しなければいけないという良い例だと言えるんだ。
霊夢:
なるほどなあ。じゃあ書店はどう変化すればよかったんだろうね。
魔理沙:
そうだな。書店ならではの強みを生かすことが生き残りの鍵かもしれないな。
書店A:
強み……?
魔理沙:
Amazonがいかに便利と言っても書店に足を運んで大量の書籍の中から気になる本を発見するという体験は書店ならではの強みなんだ。
霊夢:
そうなの?
魔理沙:
Amazonにはレコメンド機能と言って、過去の購入傾向と似た商品をオススメされるために、全く新しい書籍を発見することは難しい。
霊夢:
言われてみればそうだね。その点、書店ならランダムに並んでいる大量の書籍を見ることになるから、過去の購入とは関係なく良い本を見つけられる可能性が高まるということだね。
魔理沙:
その通りだ。そういう意味で、今日本で大手取次を経由せずに書店運営を行う「独立系書店」が増えているのも、書店ならではの良さを生かそうという発想が根底にはあるんだろうね。
霊夢:
なるほどね。取次を挟まないってことは、店主のこだわりや個性が生かされた書店になるもんね。
書店A:
それがこれまでの商習慣に頼らないってことか……。
魔理沙:
他にもカフェを併設したり、定期的なイベント開催を行うなど、書店の力で書店を盛り上げる工夫を行い始めた書店は数多く存在するんだ。
霊夢:
そういえば蔦屋書店にはおしゃれなカフェが併設されているよね!
魔理沙:
リアル店舗ならではの強みを生かしている例だな。
霊夢:
でも私は昔ながらの書店も好きだよ。
書店A:
れ、霊夢さん……!
霊夢:
さて、それじゃあ私も……。
書店A:
書店に行くの?
霊夢:
うん。この辺でポケモンカード売ってる書店知らない?
書店A:
君さあ……。
様々な要因が重なった結果、街の書店は衰退の一途を辿る結果となっています。しかしながら、今では様々な事業や形態を展開して書店も存在しているようです。
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