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月に着陸したあと、宇宙飛行士はどうやって帰還する? NASAで実際に検討されていた「アポロ計画」4つの方法を解説

 今回紹介する、スカイ三平さん投稿の『【ゆっくり解説】どうやって月まで行くの? 4種類あった有人月面着陸 アメリカの宇宙開発の歴史27』という動画では、音声読み上げソフトを使用し、有人月面着陸計画について解説をしていきます。

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月へ往復する4つの方法

霊夢:
 今回はどうやって月に着陸して、その後に離陸して地球へ帰還するかの検討について解説するわ。

魔理沙:
 つまり、どうやって往復するかってことか? そんなのバーっと飛んでって月に降りた後、またエンジンを吹かして飛んでいけばいいだけだろ? 行って帰ってくるのに検討する余地なんかあるのか?

霊夢:
 あるわ。莫大なエネルギーが必要だからね。地球から打ち上げた宇宙船は、地球から遠く離れつつ、地球を周回している月に追いつくためにとても速いスピードで月へ向かうわけなんだけど、そのままのスピードじゃあ月を通り過ぎちゃうから、近くなったら減速をかけて、月の重力圏につかまるようにするのね。

 そして月に着陸するにも速度を落として軟着陸するわけだし、月から離脱する際も、上昇しつつ水平加速して、月の重力圏から離脱するわけだから、簡単に言っても大量のエネルギーが必要なんだよね。

 ケネディー大統領が、月に人間を送る宣言をした頃、どうやって送るのか具体的な方法がまだなくてね。1961年から翌年にかけて4種類の方法が検討されたわ。

 最初に検討されたのは最もシンプルなダイレクト上昇方式で、この方法はアメリカ初の有人宇宙飛行が始まる1961年から検討されていた方式で、ロケットから分離された宇宙船が、そのまま月に着陸、そのまま離陸して地球へ帰還するってやつね。

魔理沙:
 まぁシンプルっていうか、それ以外に方法があるのかって感じだな。

霊夢:
 この方法は確かにシンプルなんだけど、たくさんのエネルギーを必要とするんだよね。大きな宇宙船を分離したりすることなく、そのままの姿で減速・降下・上昇・加速をするわけだから、なにをするにもいちいち重たいのよ。

 そんな重たい宇宙船をコントロールしようとすると沢山のエネルギーが必要となるし、そのエネルギー自体も加わって重くなるから、さらにエネルギーが必要となるんだよね。

 そこで問題となるのは、そんな巨大で重くなった宇宙船をどうやって打ち上げるのかってやつでね。マーキュリー宇宙船やジェミニ宇宙船を打ち上げてたロケットとは比べ物にならないほど強力なロケットが必要だったわ。

魔理沙:
 それが有名なサターンVってことだな。

霊夢:
 最初はそれじゃなくサターンC-8というロケットだったわ。

魔理沙:
 聞いたことないけどサターンVの仲間なのか?

霊夢:
 そんな感じだね。C-8はサターンファミリーの中で、最も大きなロケットで、これの何がスゴいのかっていうと、サターンVの1段目にはF-1ロケットエンジンという、今でも世界最強のエンジンが搭載されてて、それを5基搭載して重たい2段目や3段目、宇宙船を上昇させていたんだけど、C-8はそのF-1ロケットエンジンを8基も搭載する予定だったし、2段目はJ-2エンジンを5基搭載したサターンVに対してC-8は8基搭載していたわ。

魔理沙:
 それはダイレクト上昇方式だと宇宙船が重くなるからなのか?

霊夢:
 そうね。アポロ宇宙船は45t前後だったけど、ダイレクト上昇式の宇宙船は74t前後になると見積もられてたわ。

魔理沙:
 どっちもめちゃくちゃ重たいな。

霊夢:
 ジェミニ宇宙船が3.8トン前後だったから一気に重くなったね。

魔理沙:
 遠いのと月に離着陸するから、それだけいろいろ積み込まれてるのか。

霊夢:
 そんだけ重いと、強力なロケットが必要だから開発計画が立てられて、C-8開発計画が立ち上がったってわけね。

 このダイレクト上昇式はドッキングとか分離といったリスクが高い工程をしなくていいシンプルな方式だったけど、そのぶん、ロケットが重く巨大になってしまうし、製造する工場や、運搬手段、組立棟や発射台などを、すべてそのサイズに対応させないといけなくて、それらが全てコストとしてはね返ってくるから1962年に却下になったわ。

魔理沙:
 ちなみにコストはいくらぐらいになるんだ?

霊夢:
 見積もり段階しかわからないけど、アポロを打ち上げたサターンVが一発およそ35億ドルで、サターンC-8はその1.5倍から2倍かかると見積もられたわ。  ここで魔理沙にクイズです。計画途中で白紙になったサターンC-8の総質量はどのくらいでしょうか。

魔理沙:
 じゃあ、1500tで。

霊夢:
 残念。正解は4770tよ。

魔理沙:
 もう想像つかねーよ。

霊夢:
 そこで私、似たようなのを探してきたわ。あきづき型護衛艦よ。

魔理沙:
 海上自衛隊の船か。

霊夢:
 この船の基準排水量がおよそ5000tだし、全長はC-8が131m、あきづきが150.5メートル。C-8の直径は12.2m、あきづきの幅は18.3mってことで、大雑把に似てるね。

魔理沙:
 でも5000t近いものを打ち上げるってすごいな。

霊夢:
 そうね。推進剤を除く質量がおよそ260tだから、およそ95%が推進剤だね。

魔理沙:
 とんでもない量の推進剤が必要なのか。そりゃコストもハンパないだろうな。

霊夢:
 でもすごいと思わない? 宇宙船はここにあるんだよ。

魔理沙:
 たったこれだけかよ。

霊夢:
 この宇宙船を打ち上げるために、これだけのサイズが必要って、いかに地球の重力が強いか分かるよね。

 さて次に紹介する案は、地球周回ランデブー方式で、これは宇宙船のパーツをたくさん打ち上げて地球を周回しながらドッキングして組み立てる方式で、巨大なロケットで宇宙船をまるごと打ち上げるダイレクト上昇方式とは反対に、現実的な小さなロケットを何度も打ち上げるって感じね。

魔理沙:
 何回くらい打ち上げるつもりなんだ?

霊夢:
 だいたい10回から15回くらいよ。こっちは小さなロケットで打ち上げるからまだ現実的と考えられていたけど、小さいとはいえ、ロケットを何度も打ち上げないといけないし、ドッキングに失敗するとまた同じものを打ち上げないといけないから、手間と時間、コストがかかりすぎるとして有力候補とはならなかったわ。

 次に紹介する候補は、月面ランデブー方式でね、これは有人宇宙船と推進剤を搭載した無人船を用意して、まず先に無人船を打ち上げて月面に着陸させ、その後、有人宇宙船を打ち上げて人間を月面に送るという方式よ。

魔理沙:
 なんで別々に送るなんて面倒なことしてんだ?

霊夢:
 これは無人船をガソリンスタンド代わりにするってやつでね、さっきも言ったけど、月に行くまでに軌道調整や減速、着陸で大きなエネルギーが必要だし、月から離脱上昇して水平加速したのち、地球へ帰還するにも大きなエネルギーが必要で、それをひとつの宇宙船として打ち上げると大きなロケットが必要だから、片道分の燃料だけ積んだら、宇宙船を軽量できるし、ロケットの小型化もできる。

 帰りの燃料は、月に贈った無人船から補給させれば帰ってこれるねって方式よ。

魔理沙:
 なるほど。帰りの燃料分を別に送るってことか。

霊夢:
 でもこれは実現性が低く、すぐに却下になったわ。

魔理沙:
 何が難しいんだ?

霊夢:
 最も難しいのは無人船の近くに着地できる技術でね、移送ホースが届く範囲に降りないと補給できないわ。

魔理沙:
 確かにそうだな。

霊夢:
 その他、船外活動で推進剤を扱わせるリスクもあるし、補給に失敗したらもう帰ってこれないから、あまりにもリスクが高いってことで却下になったわ。

魔理沙:
 確かにちょっと無謀だな。

霊夢:
 そして最後に紹介するのは月周回ランデブー方式でね、これは実際に採用された方式だからみんなも知っての通りなんだけど、宇宙船を司令塔・機械船・着陸船の3つの区画に分けて、打ち上げ後、司令船と着陸船をドッキングさせて地球を周回せずそのままロケットパワーで直接月へ送り込み、月周回軌道に乗ったら、月面着陸をするクルーふたりが、着陸船に移動し、着陸船だけドッキングを解除。着陸船は高度を落としていって月面に着陸するわ。

魔理沙:
 司令船とかはどうするんだ?

霊夢:
 そのまま月を周回しながらかえってくるのを待つわ。この着陸船は着陸する際に使う降下段と離脱に使う上昇段に分かれていて、着陸船まるごと離脱させるためには、大きなエネルギーが必要だから、離脱するときは降下段を月面に残したまま上昇段だけ離脱して、周回してる司令船とドッキングして地球に帰還するわ。

 こうすると上昇の時に余計な質量を抱えなくてよくなるから、エネルギーも節約できるし、宇宙船全体の軽量化につながりロケットに多大な性能を求めなくてよくなるわ。

魔理沙:
 なるほどな。ここまで聞いていると、いかに必要な燃料を小さくするかに重きが置かれてる気がするな。

霊夢:
 そうね。必要なものだけ着陸させて、用が済んだ機材や道具などは、余計な荷物になるから、すべて月に置いていったって感じね。この方法が採用されたのが1962年の終わりで、ここまでに至るまでさんざん揉めたわ。

魔理沙:
 最後の案が一番現実的だと思うけどなんでだ?

霊夢:
 技術的にはドッキングをしないダイレクト上昇方式が一番リスクが低くて、ロケットさえ何とかすれば可能となるから、NASAの中で最も有力な案だったわ。当時のアメリカは、ようやく人類を宇宙に飛ばすことができたくらいで、しかも地球を周回するんじゃなくて、弾道飛行でわずかな間だけ宇宙を経験するだけだったのに、そんな宇宙空間でランデブーとドッキング技術を確立させるには、あまりにも高難度だったし、それを月周回でやるだなんて考えられなかったわ。

魔理沙:
 ロケットのほうが難易度が低いということか?

霊夢:
 まぁ当時はそう判断したってことだね。そのダイレクト上昇方式を強力に支持したのが、マキシム・ファジェットという人物でね、アメリカ初の有人宇宙船マーキュリー宇宙船の設計チームを率いていて、過去には極超音速実験機X-15の設計も担当していたベテラン技術者だったわ。

 ファジェットはとても頑固な人で、一旦決めたことは絶対に曲げないし、人の言うことに耳を貸さなくて、それでもファジェットが持つ優秀な頭脳と長年の勘があったから、それまではファジェットが正しかったわ。 今回もダイレクト上昇方式が絶対に正しいとファジェットは思っていたし、他のNASA技術者の大半もそう思ってたし、ロケット界のエースであるフォン・ブラウンもそれを支持していたわ。

魔理沙:
 じゃあなんで却下されたんだ?

霊夢:
 唯一それに異議を唱える人物がいてね。その名もジョン・フーボルトと言うんだけど、フーボルトはファジェットと同じラングレー研究所に勤める技術者で、後にアポロ宇宙船に採用される月周回ランデブーを提案した人物だったわ。

魔理沙:
 なんでフーボルトは月周回ランデブーを提案したんだ?

霊夢:
 さっきも言ったけど、NASAが有力としていたダイレクト上昇方式は、ドッキングとかしないから宇宙船が大きくなりがちで、制御するのに膨大なエネルギーを必要とするせいでC-8のような巨大なロケットが必要なんだけど、フーボルトが提案した月周回ランデブー方式は、必要ないものはその場に置いていくようなものだから、何するにもコンパクトなんだよね。

魔理沙:
 余分な燃料を搭載しなくてよくなるのか。

霊夢:
 でもフーボルトの提案には、ひとつ問題があったわ。月面から上昇した着陸船と月を周回している司令船が、どうやってランデブーするのかってやつでね。  時速およそ6000kmで周回する司令船に合わせてランデブーするためには、高度と速度、タイミングを合わせる必要があるんだけど、GPSなんてないし、ランデブーに失敗したらもう二度と会合できず、宇宙飛行士は地球に帰還できないわ。

魔理沙:
 なるほどリスクが高いわけだな。

霊夢:
 フーボルトは、レーダーで位置を捕捉すれば可能であると主張して、NASAの技術者らにアピールしてまわり、少しずつではあるけど支持者が増えていったわ。

 その中でフーボルトはいち技術者の身でありながら、NASA副長官宛てに手紙を送り、月周回ランデブーが有利であることを説明しながら、月に行きたいのか行きたくないのかと迫ったわ。

 この大胆な行動が決め手になったわ。この手紙はNASA上層部で回覧されて、同じ時期に政府の特別委員会が開かれて、どの方式にするか話し合いが行われたんだけど、そこでNASA副長官はフーボルトが提案した月周回ランデブーを推奨すると発言して、有人宇宙飛行を担当している今のジョンソン宇宙センターも月周回ランデブーを推奨した結果、これまで最有力だったダイレクト上昇方式を打ち破って、アポロ計画に採用されたわ。

魔理沙:
 形勢逆転したのか。

霊夢:
 まあダイレクト上昇方式の宇宙船を設計している途中で、これ無理じゃね? と技術者たちが気づきだしてたってのもあるんだけどね。

魔理沙:
 早めに気づいてよかったな。 


 月面着陸に関する4つの方法を紹介しました。ちなみに解説のあとには脱線話もありますので、解説をノーカットで楽しみたい方はぜひ動画をご視聴ください。

▼動画はこちらから視聴できます▼

【ゆっくり解説】どうやって月まで行くの? 4種類あった有人月面着陸 アメリカの宇宙開発の歴史27

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