「宮崎駿の後は誰が夏の長編アニメを公開するかという“ポスト・ジブリ・ウォー”が起きている」——昨今のジブリ事情を解剖してみた
「ジブリが原作レイプしても(大抵)怒られない(笑)」
マクガイヤー:
あとゲド戦記ですよ。ゲド戦記は最初に主人公が国王を殺すじゃないですか? これは、あからさまですよね。これは宮崎吾朗が宮崎駿を殺す! その上で、俺はこのアニメを作るんだという所信表明をやったわけです。
だから、この映画の冒頭は最高なわけです。問題は宮崎駿を殺した後、おまえ、どういうアニメを作るのかというところだったんですけど。まあ、それが失敗の原因なんですけど。だから押井守もここだけは褒めてましたね。
那瀬:
最初、面白かったですよね。最初は。
マクガイヤー:
それはですね宮崎吾郎の親父を殺すと言った宮崎吾郎ですら、宮崎駿の方法論でしか作れないとところが問題だったわけですけれども、それは、この『コクリコ坂から』で、ものすごくあからさまでした。これは、かなり面白いアニメだったんですけれども、最後に徳間書店の社長が出てくるんですよ。
徳間社長にお金をもらうために東京まで行って、徳間書店の社長室に行くんです。ちょっと、それあり得なくないですか? 現実とアニメがごっちゃになってるってことですよ。
つまり、これは、原作には当然そんなのないです。大人模様はアニメオリジナルというか、ほぼアニメオリジナルなんですけど。だからキーマンとして徳間書店の社長がでてきます。で、スタジオジブリは徳間書店の金で作られてますよね。だからこの「カルチェラタン」はスタジオジブリみたいなものだと思ってくださいねっていうメタ作品なんです。
那瀬:
全然そんなふうに観てなかった。
マクガイヤー:
特に後期のスタジオジブリには、いっぱい出てきます。これがスタジオジブリ史観です。スタジオジブリで作られるアニメはスタジオジブリの物事を題材にしてます。特に『もののけ姫』以降。『もののけ姫』で宮崎駿は自分の作りたいものを一通り作り切ってしまったんですよ。
だからですね、ジブリが作るアニメは原作とほとんど変わってますが、ここでみんながびっくりするのが、ジブリが原作レイプをしてもたいてい怒られないということです。『ハウルの動く城』も原作から全然変わっているんですが、みんなそれをあんまり怒りません。
那瀬:
そうですね。あと、あんまり本屋さんでも買い求めようと思わないですよね。
マクガイヤー:
そうでしょ? ただ『ゲド戦記』だけは別だったんです。『ゲド戦記』、これは『指輪物語』と並ぶファンタジーの名作だったんですよね? 宮崎駿自身も自分はこの『ゲド戦記』を元に、心のよすがにして作品を作っていたと。
で、とうとうお許しが出て監督をしようとしたら、監督が宮崎吾郎だったということで原作者のアーシュラ・K・ル=グウィンがめっちゃ怒ったりしたのが、ネットニュースになったりしました。で、その最たるものが『コクリコ坂から』で、全然原作と違うという話をさっきしました。
那瀬:
知らなかったです、こんな作品。
マクガイヤー:
そうでしょ? 俺も知らなかった。だから、むしろジブリさんがフックアップしてくれるんだぞ、みたいな感じです。レイプしてもガタガタ言うんじゃないよ、ぐらいにみんな言うわけです(笑)。
那瀬:
そうかも、と言っていいのかな(笑)。
マクガイヤー:
例えば、これありますよね。『メアリと魔女の花』。これも原作本なんですけど、ジブリっぽい絵柄の表紙を付けて売られて、やっぱりこれ1万部とか2万部くらい売れるでしょ。でもジブリがアニメ化を押してくれなきゃこんな売れないわけでしょ。レイプされてもガタガタいうな、みたいな感じになるわけですよ。
那瀬:
まあ売れた方がうれしいのかな。出版社的には。
マクガイヤー:
なぜレイプするかというと、レイプする意味というのがあります。
那瀬:
意味があるんですね(笑)。
マクガイヤー:
例えば『ルパン三世 カリオストロの城』というものがありました。これ、誰もが認める名作ですよ。しかし、『ルパン三世』モンキーパンチ原作の『ルパン三世』とは、まったく違うというのは、みんなが認めるところですよね? あと、『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』。これは押井守が監督ですけれども、これに対して原作者は本当に気まずいことしか言わないですよね。
マクガイヤー:
確かに面白いけど私の『うる星やつら』じゃないみたいなことは、もう言うことすら憚られるみたいな感じになってますよね? ノーコメントを貫いてます。そして『ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島』これは細田守の隠れた名作で本当に面白いんですけど、ワンピースファンの僕の友達が公開された時に、「いや、あれでも、サンジはあんなこと言わない」とか言っていたんです。
那瀬:
もう正に原作レイプじゃないですか?
マクガイヤー:
この後ですね、尾田栄一郎は『ONE PIECE FILM GOLD』かなんかでプロデューサーをしたじゃないですか?これはですね『オマツリ男爵』を観て、「ちくしょう」と思ってやったんだと俺は思っています。俺の原作と全然違うけど面白いから「ちくしょう」と思って、やったんじゃないかと俺は穿った見方をしています。
あと、『猫の恩返し』の森田監督が『ぼくらの』を監督したんですけれども、これも原作レイプみたいなことを言われていますんで。
那瀬:
ロボアニメですよね。
マクガイヤー:
これはすごいロボアニメで、ロボを10何人かで操縦するんですけど、「誰かが死なないとロボ同士の戦闘に勝てない」というデスゲームものみたいなやつですよね。
那瀬:
監督が「原作が嫌い」と言っちゃったやつなんですか。
マクガイヤー:
その後、原作の鬼頭さんと対談とか普通にしてたんですけどね。しかし、その監督がジブリで映画監督をしていたというのは、ちょっと面白いところですよね。だからジブリで原作レイプの仕方を学んだと勘違いするじゃないですか。
一同:
(笑)
那瀬:
「レイプの仕方」というのは、パワーワードだわ(笑)。
マクガイヤー:
そんな感じのジブリなんですが、ちょっと話を戻すと、宮崎吾郎と米林宏昌は自分たちがジブリの「落とし子」とか「申し子」であることに自覚的であるということです。例えば宮崎吾郎が監督するときに、宮崎駿が「ちょっと監督さま」と話しかけたそうです。
那瀬:
怖すぎですよ。言われたくないですよね。
マクガイヤー:
これを言って平然としてられるのは、本当に子供だからですよ。このあと宮崎駿は、「吾郎」とか言って金平糖とかあげたりしているんですよ。それって本当に宮崎吾郎じゃなかったら発狂しちゃいます。
那瀬:
そうですね。
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