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タイで“放射線治療器”を長期間放置した結果……病院を渡り歩いた中古の医療機器が起こした「被ばく事故」の悲劇とは?

 今回紹介する、ゆっくりするところさんが投稿した『【2001年】「これは金になりそうな金属だ」→分解中に大量被曝【ゆっくり解説】』という動画では、音声読み上げソフトを使用して、2001年にタイで発生した放射線被ばく事故について解説していきます。

投稿者メッセージ(動画説明文より)

今回紹介するのは、以前からリクエストがありました「遠隔放射線治療器被曝」です。
タイにあったガンセンターでは、中古の遠隔放射線治療器を購入し、数年間使用していましたが、新型の導入にともなり、古いこの機種を廃棄しようとしましたが、別の病院に「買い取りたい」と申し出たため、売却を決定。装置はこの別の病院に渡りました。
しかし、この装置は1975年に作られた古いもので、数年使用しただけで故障してしまいました。
そのため、この病院は装置を破棄。倉庫で保管されることになりました。
ですが、この倉庫は数年後に廃業してしまいます。
廃倉庫となったこの場所に、とある廃品業者が侵入するのですが・・・

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様々な要因が重なって起きた事故

魔理沙:
 1989年、タイの某所にあったがん治療センターでは、腫瘍などに放射線を照射し、治療を行うための装置が設置されていた。この装置は「コバルト60」という放射性物質を線源に、ガンマ線を照射して、腫瘍を攻撃するといった装置だった。この装置は、1970年にドイツから輸入され、こことは別の病院で使われていたもので、1975年にこの病院が中古で買い取ったものだった。

 この中古の放射線治療装置は、1985年までの約10年間使用されたが、装置の劣化と新型装置の登場により、廃棄されることとなった。この装置はそのまま廃棄処分となる予定だったが、さらに別の病院か買い取りたいと申し出たため、このがんセンターは装置を破棄せず、その病院に格安で売却した。売却された装置は、その後2年ほど使用されたが、修理不可能なほどの故障が発生したため、ついに廃棄処分となった

霊夢:
 中古の中古を使っていたの怖すぎなんだけど……。でもまだ事故が起きてないわね。

魔理沙:
 この時点ではまだ事故が起きていない。この装置は廃棄されることになったが、もちろんこういった放射線を使用している装置は、通常の粗大ゴミなどとは違い、届出を行った後、専用の倉庫で保管される。これは完全に偶然なんだが、この装置が保管されることになった場所は、最初に装置を中古で購入していたがんセンターのすぐ近くにある倉庫だった。

 この倉庫には、すでに他にも放射線治療装置が2台保管されており、合計3台の装置が保管されていた。しかしこの倉庫は1990年まで管理され装置が保管されていたが、2000年に経営破綻してしまい、倉庫の経営者が失踪。保管庫は無人になってしまった。

霊夢:
 破綻したあと、そのまま放置されていたの?

魔理沙:
 ああ。詳しいことは不明だが、この後事故が起こった時点ですでに管理者は行方不明。おそらく倉庫が倒産してから、そのままの状態だったんだろう。結局倉庫はそのままの状態で放置されていた。それから約1年半後。倉庫のすぐ近くにあったがんセンターで、入院していた患者、そして病院関係者の中に、原因不明の体調不良を訴える人が続出していた。

 実はこの日の前日、例の倉庫には廃品処理業者が侵入し、あの放射線治療装置を運び出していた。その業者は、この装置がなんのための機械なのかよくわからなかったが、「解体して金属部分を売れば、いい金になる」と考え、倉庫の中で装置の分解を行っていた。業者の作業員は、アセチレントーチで装置を解体し、各パーツに分解していた。その最中、円筒状の容器の中から黄色い悪臭を放つ気体が発生していた。

霊夢:
 絶対やばいやつ!

魔理沙:
 その気体を見た直後、作業員は強い不快感と吐き気を感じていたが、その日は装置を解体後、売れそうな金属のみをトラックに積み込み、残りを倉庫に放置していった。だが解体した作業員は、翌日になっても激しい嘔吐感と頭痛に苛まれ、さらには両手の指が赤く腫れ上がるなど、様々な症状が現れていた。彼はその後すぐに病院を受診し、検査を受けた結果、重度の放射線被ばくを受けていたことが分かった。

 一方、倉庫近くのがんセンターでは、作業員ほどではないものの、原因不明の不快感や、嘔吐感を訴える人が続出していた。作業員を検査した医師は、これらのことから「近くで放射線関係の事故があったのではないか」と考え、地元の公衆保健衛生局に連絡。その後、衛生員が周辺の調査を行った結果、例の倉庫で放射線レベルの上昇が認められたため、倉庫内を捜索。放置されたコバルト60が発見された。

 原因が究明されたため、衛生員はすぐに警察に連絡し、倉庫周辺の住民を避難させ、あたり一帯を封鎖した。その後、緊急対応チームが組織され、遠隔操作具によって線源の回収が行われ、コバルト60は無事に鉛容器に封印された。最終的な被害としては、例の作業員1名が亡くなったほか、病院関係者に軽度の被爆症状が現れたが、命に別状はなく、今後どうなるかはわからないが、現在の時点では健康体だということだ。

霊夢:
 よかった。一歩間違えたら、もっと大変なことになってたわね。

魔理沙:
 この事故は様々な要因が重なって起きてしまった、不幸すぎる事故だった。例の装置の所有者、そして倉庫の管理人が行方不明になっていたため、責任の所在がはっきりとしなかったが、最初にこの装置を中古で購入し、その後売り払っていたがんセンターは、線源を移動させる時の届け出をしていなかったことがわかり、厳しく非難されたらしい。

 廃品業者は不法にあの倉庫に侵入し、装置を解体していたので「自業自得だ」という意見の人が多かったそうだが、根本的な事を考えると、病院や倉庫など、各施設での放射性物質に対する扱い方がずさんだったことも否定できない事実であった。

霊夢:
 確かにね。届け出もしてなかったし。

魔理沙:
 取り扱いには細心の注意が必要であるはずの放射性物質を、こういったずさんな体制や怠慢によって、いい加減に扱ってしまい、今回のような被災者が出てしまう事故は、世界的に見るとかなりの数がある。エネルギー問題や放射性物質の利用の是非を語るつもりはないが、現在の我々に深く関わっているこの物質を利用している限り、こういった事故はゼロにはならないのかもしれないな。


 長期にわたる怠慢な管理、放射線に関する知識不足など、さまざまな要因が重なった事故でした。現在の解説をノーカットで楽しみたい方はぜひ動画を視聴してみてください。

▼動画はこちらから視聴できます▼

【2001年】「これは金になりそうな金属だ」→分解中に大量被曝【ゆっくり解説】

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