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ステーキの焼き加減はどうします? レア、ミディアム、ウェルダンで変化する牛肉の「やわらかさ」を”ワーナーブラッツラーのせん断力価”を用いて計測してみた

※この記事は農研機構(NARO)の提供でお送りします。

 ステーキの焼き加減、レア、ミディアム、ウェルダン。
 お肉は焼き加減によって、食べた感じが違います。その違いを生み出しているものの一つが「やわらかさ」で、お肉のおいしさを決める重要な指標です。
 なんとなく加熱をほとんどしていない生のお肉に近い方がやわらかそうな気がしますが、その真相を科学的に検証するべく、科学者たちが本気で実験・計測してみました。

 この実験をしたのは、「農研機構(NARO)」という国立の研究機関です。
 ここでは日々、日本の農業と食品産業の発展のため、基礎から応用まで幅広い分野で研究開発を行っています。

 「牛肉のやわらかさ」という身近なテーマですが、プロの研究員たちが専門的な機械を使い、「ワーナーブラッツラーのせん断力価」という世界中のお肉の研究室でやわらかさの指標を用いて実験しています。
 皆様の身近にあるおもしろ科学の本格実験、ぜひご覧ください。

※今回ご紹介するのは牛肉でのお話です。豚肉や鶏肉、ジビエや内臓肉の場合は、中心まできちんと火を通してからお召し上がりください。
※加熱殺菌基準では、中心が75℃で1分間以上加熱されるよう、保健所で指導されています。


 お肉は焼き具合によって、内部温度が変わってきます。加熱が低いレアだと内部温度が55~65℃、ミディアムだと65~70℃、しっかり焼くベリーウェルダンだと90~95℃となります。
 今回は、焼き具合によって柔らかさが変わるのか、実際に国産牛のロースを焼いて、機械を使って実験をしてみます。

実験に使用するお肉の準備

 まずは、お肉に物差しを当てて、2cmの厚さに切ります。
 さらに厚さをそろえた肉を縦4cm、横4cmに切って、同じ大きさのブロックをたくさん用意します。

 形が違うと火の通り具合が変わってしまうので、慎重に形を揃えます。

 温度のセンサーをお肉の真ん中に差し込みます。
 これで準備完了です!

お肉を焼いてみた

 それでは、実際にお肉を焼いていきます。
 お肉に差し込んだ温度センサーを見ながら、今回は以下の温度になるようにお肉を焼いてみました。

 焼き時間を計りながらお肉を焼き始めます。裏表均一に火を通すために、1分ごとに裏返して焼きます。
 温度を測定しながら、中心温度が加熱不十分レア相当ウェルダン相当ウェルダン以上(ベリーウェルダン)になるように焼いていきます。

いよいよ「やわらかさ」を測定!

 焼けたお肉の準備が出来たところで、いよいよ実験です。
 まず、器具を使ってお肉を同じ太さに抜き出します。筋肉の繊維の方向に沿ってくり抜くのがポイントだそうです。

 抜き出したお肉を、測定機械の台座の真ん中に置いて、V字のカッターで切ります。
 切るときにかかる力を計るのですが、やわらかいお肉は弱い力で切ることができて、固ければ固いほど強い力が必要になります。

  お肉を切ったときに一番大きな力がかかった時の数値をやわらかさの指標として使います。
  この値は「ワーナーブラッツラーのせん断力価」と呼ばれ、世界中のお肉の研究室でやわらかさの指標となっているそうです。

気になる測定結果は……?

 それでは、測定結果を見ていきましょう。
 以下のグラフは、加熱不十分レア相当ウェルダンベリーウェルダン、それぞれ3つのサンプルを取って結果を記録したものです。
 緑色の線はそれぞれの中央値を取ったものです。

 加熱不十分からレア相当までは、剪断力価が下がります。つまり、やわらかくなっているということが分かります。
 ウェルダンウベリーウェルダン
と進むにつれて、剪断力価が上がっています。これは、レア状態からさらに焼くにつれて、お肉がかたくなっているということです。

 
お肉のやわらかさ、という観点だとレア(60℃)付近で焼いたものが一番やわらかく、それから加熱が進むと、かたくなっていくことが明らかになりました。
 このように、お肉の焼き具合によって食感が変わることがお分かりいただけたかと思います。

ステーキも立派な研究対象

 この実験のように、食肉の品質は機械などを使って測定することができます。ただ、「味」や「におい」については、まだ評価する方法が確立されていません。

 農研機構では、「味」や「におい」を含めて肉の美味しさを測定する技術を研究しているそうです。
 お肉の味が科学的に測定できるようになれば、お肉の品質をより高めることもできるのではないでしょうか。そんな未来が、いまから待ち遠しいですね!


お知らせ

 農研機構は、本記事でご紹介した他にも、農研機構は、本記事でご紹介した他にも、ドローンを使ったスマート農業の実験牛のゲップの測定など、面白い研究をたくさん行っています。
 この秋は「オール農研機構 秋の一般公開 農業と暮らしを結ぶサイエンス」と題し、研究所のオンライン見学ツアーや研究成果の動画コンテンツなどを公開します。

 さらに、ニコニコ生放送では10月24日(日)に特別番組の放送が決定!
 農研機構の開発した品種を使ったお料理紹介や、視聴者の皆様に参加いただける農業に関するクイズ企画もあります。
 こちらもぜひご視聴ください。

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