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『エヴァ』『ポケモン』の元ネタは『ウルトラセブン』? アスカのプラグスーツが白かった理由

 円谷プロダクション・TBSによって制作された特撮テレビドラマ『ウルトラセブン』は、放送から50年以上経過した現代でも人々の心に残る不朽の名作です。

 ニコニコ生放送「山田玲司のヤングサンデー」にて、漫画家・山田玲司氏は、『エヴァ』や『ポケモン』など後世の人気作の源流にあたる『ウルトラセブン』がどのような作品なのか解説。さらに、当時の時代背景にも触れ、『ウルトラマン』との違いについても言及しました。

左から山田玲司氏、久世孝臣氏、シミズ氏、うらまっく氏、奥野晴信氏。

※本記事はニコニコ生放送での出演者の発言を書き起こしたものであり、公開にあたり最低限の編集をしています。

▼タイムシフト視聴はこちら▼
第197回『赤くなかったウルトラセブン〜エヴァやポケモンまで生んだ現代アート「セブン」の構造と哲学!!』

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■『ウルトラセブン』を見れば『エヴァンゲリオン』がより深く楽しめる!?

奥野:
 コメントでも書き込まれていましたが、なぜいま『ウルトラセブン』(『セブン』)の回をやるんだという疑問が巻き起こっております。玲司さん、これはなぜなんですか?

山田:
 BSで再放送がやってたから(笑)。

奥野:
 違うでしょ(笑)。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(『シン・エヴァ』)を見るうえで、『セブン』を知っておかないと『シン・エヴァ』にいたるまでの系譜がわからないので、基礎教養として押さえておこうということですよね。

山田:
 もうさあ……『エヴァンゲリオン』(以下、『エヴァ』)の話をすると、『セブン』の話題が出てくるわけですよ。

奥野:
 じつは、聞くたびにちょっとぽかんとしてました(笑)。

山田:
 『セブン』を知っていれば、『エヴァ』の登場キャラクターの格好や発進シーンの元ネタがわかるんです。

久世:
 実際に『セブン』を見たら本当にその通りでしたね(笑)。

山田:
 『エヴァ』の監督の庵野秀明さんは、「『セブン』に影響を受けていますか?」と聞かれたら、「光栄です。その通りです」と答えると思いますよ。

 『エヴァ』と『セブン』に関係があることが納得できていない方のために、先にこれだけ見てもらっていいですか。こういう描写、『エヴァ』でいっぱい見ませんでしたか? ちょっと斜めになってる感じとか、ちょっと上に飛んでる感じとか。

久世:
 リリンとかリリスとか言うてるやつや!

山田:
 そして俺は『セブン』が日本の特撮作品のナンバーワンだと思います。しかも日本の現代アート(モダンアート)のナンバーワンだとも思うんです。

 美術館でアートをやってる人たちも『セブン』はアートだと納得するはず。『セブン』は日本が誇るモダンアートでもあるんです。それがどういう流れでできたのかということを今回は説明します。

■初期案から変わっているウルトラセブンのデザインにおける裏話

山田:
 まずは、うらまっくさんから『セブン』とは何かということをお話してもらっていいですか?

うらまっく:
 『セブン』を見ていない人も多いと思うので、僕が好きなところを3つまとめてきました。まず1番は、ウルトラセブンが強いというところです。

 ウルトラマンは中性的なイメージで、菩薩のような、アルカイックスマイルのような顔つきをしていて、体つきも華奢な印象だと思います。

 一方、ウルトラセブンはガタイがよくて、そもそもファイターなんですよね。顔周りが西洋の甲冑をモチーフとしていて、技も多彩で、最初から戦うことをテーマに作られているんです。

奥野:
 ああー、スパルタとかローマの感じ。わかるー。

うらまっく:
 ウルトラマンの中に入って演じている人は、ウルトラ警備隊のアマギ隊員も演じていた古谷敏さんという役者さんなのですが、手足が長くて日本人離れした体型の人なんです。怪獣のケムール人やラゴンも演じてました。

山田:
 『セブン』において、怪獣を含めて作品の美術全般を担当していたのがデザイナーの成田亨さん。彼のデザインに関する話を抜きに『ウルトラ』シリーズを語ることはできません。

 その成田さんは、『セブン』でも古谷さんが演じると思って準備していたんですね。でも実際には体型が違う人が来てしまって……。

 それで、体型が違う人が来たときどうしたか。このままでは不格好な頭でっかちになってしまいマズイというので甲冑をつけるという。

うらまっく:
 上半身に視線が行くように、下半身のデザインをシンブルにしているんです。

山田:
 そうなんです。じつは最初のデザインを模写してきました。こちらです。

一同:
 えっ!?

奥野:
 かっこいいじゃん……。

山田:
 最初のデザインは肩だけが赤くなっているものと、青をメインにしているものがありました。

 なので、奥野さん。『シン・エヴァ』で白くなっているキャラクターがいましたよね。

 『セブン』について詳しく知っている人たちは、アスカのプラグスーツが『セブン』の初期設定に戻ったんだなと思って、ほくそ笑んで楽しんでいたんですよ。

(画像は「『シン・エヴァンゲリオン劇場版』特報3【公式】」より)

■戦争と侵略の話が多く、ドラマが深い『セブン』

うらまっく:
 2番目のポイントは、メカがかっこいいところです。ウルトラホーク1号、ポインター号、ハイドランジャー、マグマライザー……などの合体変形メカ。

 それらのメカは、イギリスのテレビ番組『サンダーバード』の影響をすごく受けているんです。

 『セブン』のメカが、割れた山肌から出てくるところとか、滝から出てくるところは、すごくかっこいい。そんなメカのデザインも成田さんが担当しています。

山田:
 代表的なのは、ウルトラホーク1号、もうかっこよすぎです。これはバラバラになって変形するのですが、ロボット怪獣のキングジョーも同じように分離します。1967年に放送が始まっていた作品に、合体ロボがもう登場していたんです。

 ちなみに奥野さん。キングジョーは、金城哲夫さんのお父さんのニックネームなので覚えておいてくださいね。

奥野:
 それは誰なんですか(笑)。

山田:
 円谷プロの企画部長ですよ! 金城さんは沖縄の方で、メインの脚本もやってますし、番頭格として活躍していました。

 金城さんのお父さんがキングジョーというあだ名を付けられていたので、それが怪獣の名前にも使われていたんです。

うらまっく:
 3番目のポイントは、物語が深い。前番組だった『ウルトラマン』はバラエティ色が強く、子どもでも楽しめるような明るい雰囲気だったんですね。

 一方『セブン』は、戦争と侵略の話が圧倒的に多いので、ドラマが深い。そのうえ、子どもたちに容赦がない話も多くて、全体的に雰囲気が暗いんですね。

 音楽の曲調などもかっこいいので、年齢を重ねていくと『セブン』の面白さに気付いていくんです。

奥野:
 大人向けのコンテンツでもあるということなんですね。

山田:
 それに脚本家チームのレベルの高さが半端ないんですよ。「豪腕」金城哲夫を「愛弟子」の上原正三が支えているところに、若き「実力派」の市川森一が加わります。

 その中で、「無頼派」の佐々木守が暴れなかったら『セブン』にはなりませんでした。そこに「苦労人」の藤川圭介が入ってバランスを取ることで、あらゆるピッチングができるフォーメーションになっています。

■1960年代の明るさを象徴する『ウルトラマン』。1970年代の暗さを予感させた『ウルトラセブン』

山田:
 僕が思うのは、和の要素が強いのが『ウルトラマン』で、洋の要素が多いのが『セブン』なんです。

 また、1960年代の明るさを持っている『ウルトラマン』に対して、『セブン』は70年代の暗さを予感させているんです。これが大人向けと子ども向けの違いになっているところでもあります。

 そして、カラータイマーが付いているから、3分で帰らないといけなくてハラハラする演出が『ウルトラマン』にはあります。しかし、ウルトラセブンには付いていないので……。

奥野:
 ずっと戦えるってこと!?

山田:
 だから、ウルトラセブンが出てきたら解決しちゃうので、脚本家が苦しむことになったんです。そこで、カプセル怪獣というアイデアが出てくるんですね。

 いままで出てきた怪獣をもう1回、味方として出そうというアイデアなんですが、これが『ポケットモンスター』の原点ですよね。ただカプセル怪獣が出た後に敵を倒したら番組が終わってしまうんです。

奥野:
 カプセル怪獣は絶対に負けるよね。

山田:
 「帰ってこい、ピカチュウ」というのとまったく同じなんです。でも、その後にサトシが変身して戦いに行くのが『セブン』という作品なんです。

奥野:
 最初からウルトラセブンが戦いに行けばよくない?

山田:
 だから、これは脚本家の力量が試されるアイデアなんです。

 また、『ウルトラマン』と『セブン』には、どちらも宇宙人が出てきます。『ウルトラマン』では古代の怪獣がよみがえるようなことが多い一方で、地球を侵略しに来る宇宙人と戦うのが『セブン』なんですね。

 『セブン』に出てくる怪獣は、宇宙人が引き連れている怪獣なんですよ。

奥野:
 確かに。黒幕がめちゃくちゃ来るなと思いました。

山田:
 1960年代は明るいから、侵略という印象がないんですよ。だけど、1970年代は色々なものが入ってくることによって起こってしまった公害、犯罪などのマイナス部分がたくさんありました。

 そして、人々の階層もはっきりしてくるので、貧乏というテーマが出てきます。虐げられし者たちの視点が入ってくるので、『セブン』は社会派の作品なんですね。

 この問題に対して「物申す!」と言っていたのが、当時の若者たちだったんです。

 覚えておいてもらいたいのが1960年代と1970年代の境目がどこにあったかということなのですが、それは『ウルトラマン』と『セブン』のあいだにあったんです。

 1960年代の「科学最高! 民主主義イエー!」という雰囲気を表しているのが『ウルトラマン』ですね。

 一方で「そうも言ってられない。みんな貧乏だし、オイルショック来ちゃうし、団塊世代は挫折するし、三島由紀夫はいなくなっちゃうし」みたいな不安を『セブン』が予感させていたんです。


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