死刑囚とその家族は切り離して考えないといけない──和歌山毒物カレー事件から“加害者家族バッシング”について考える【話者:久田将義・吉田豪】
1998年に起きた和歌山毒物カレー事件で死刑が確定した林眞須美死刑囚の長女と孫が、6月9日に大阪府泉佐野市の関西国際空港連絡橋から飛び降りて亡くなったことが一部メディアで報じられました。
昨今では、事件を起こした加害者本人に限らず、その家族にまで厳しい目線や攻撃が向けられる「加害者家族バッシング」が問題となっています。
久田将義氏と吉田豪氏は自身がパーソナリティをつとめるニコニコ生放送「久田将義と吉田豪の噂のワイドショー」でこの話題について言及。
埼玉愛犬家連続殺人事件の関根元・元死刑囚の娘を取材した経験のある久田氏は「少なくとも死刑囚とその家族は切り離さないといけない」と述べ、「この手の悲劇は繰り返されちゃうんじゃないかなとは思いますね」と警鐘を鳴らした。
※本記事はニコニコ生放送での出演者の発言を書き起こしたものであり、公開にあたり最低限の編集をしています。この番組は2021年6月23日に放送されたものです。
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■「あなたにとっては殺人鬼ですけど、私にとってはお父さんなんです」
久田:
僕は『冷たい熱帯魚』という映画のモデルになった埼玉愛犬家連続殺人事件【※】の関根元死刑囚の娘さんの取材をしたことがありますが、本当に悲劇ですよね。
※埼玉愛犬家連続殺人事件
1993年に埼玉県熊谷市周辺で発生した殺人事件。愛犬家ら4人が殺害された。関根元死刑囚は刑が執行されないまま病気で亡くなっている
娘さんの「(父は)あなたにとっては殺人鬼ですけど、私にとってはお父さんなんですよね」という言葉はグサっときて、ずっと覚えてるんです。手紙のやりとりも全部見せてもらったんですけど、普通の親子の会話ですよね。
ただ、やっていることはひどいわけです。
娘さんは僕から音信不通になって今はたぶん結婚して無事に暮らしていると思うんで、それは僕はいいことだと思うんですよね。命を絶つようなことがなくて良かったと思いますよ。
吉田:
和歌山毒物カレー事件【※】の場合はまだ冤罪の可能性もある。確かにいろいろ問題のある保険金詐欺とかをやっていた夫婦ではあるけれども、この件に関してはまだグレー。
※和歌山毒物カレー事件
1998年7月に和歌山県和歌山市園部で発生した毒物混入・無差別大量殺傷事件。地区の夏祭りで提供されたカレーライスに毒物が混入され、カレーを食べた67人が急性ヒ素中毒になり、うち4人が死亡した
久田:
でも被害者がいるというのはヒ素を入れた人がいるということなんですけどね。それで判決では林眞須美服役囚に極刑が下った訳だけども。
吉田くんが言ったとおり、状況証拠だけでグレーなんですよね。
本当に悲劇なのは、宮崎勤の東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件【※】もそうだし、こういう悲劇はまた起こると思います。加害者本人と家族は関係ないのに……。
※東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件
1988年から1989年まで4人の幼女・女児が誘拐、殺害された事件。宮崎勤が被疑者として逮捕・起訴され、死刑判決が確定し、2008年に死刑執行された
吉田:
そのときはお姉ちゃんが婚約破棄になって、お父さんが自殺でしたっけ。
久田:
そう。お父さんが自殺しちゃって今は宮崎家の跡地は更地になっていてね。
林眞須美の和歌山毒物カレー事件というのがフィーチャーされすぎちゃって、家族や親せきは関係ないはずなんだけど追いかけるやつはいるんだな。本当に悲劇ですよね。かわいそうですよね。
あと吉田くんが言ってくれたけど、本当にやったかどうか。林眞須美の長男がTwitterをやっていますけれど、確かにそこなんですよね。
2021.06.19
— 和歌山カレー事件 長男 (@wakayamacurry) June 19, 2021
母、林眞須美からの手紙。
居室に花を供え、供養につとめる、
夢の中で、子供達が会いにきた
とも書いていました。 pic.twitter.com/RLJF1p7EZR
吉田:
わからない段階で、攻撃が家族にまで移っているのは怖いですよ。
久田:
ダメですよね。もし林眞須美がやってたとしてもダメですよ。
吉田:
家族は何もしていないですから。
■今は以前よりも身元が割れやすくなっている
吉田:
地獄だなと思ったのが、週刊誌の記事とか読む限りは林眞須美の孫が結構な虐待を受けていたとか。
※週刊誌の報道によると、林眞須美死刑囚の長女は4人家族(長女、長女の夫、孫娘2人)で、孫娘のうち1人は長女の夫による虐待で死亡(傷害致死の疑い)、長女ともう一方の孫娘は関西国際空港連絡橋から飛び降りて亡くなっている
久田:
メディアの伝え方も良くなかったんじゃないですかね。
吉田:
あと水をぶっかける林眞須美がミキハウスの服を着ていてイメージダウンとかにもなってましたね。当時その映像が相当流れていました。あれは悪い人なんだなというイメージを与える。
久田:
林眞須美の夫・林健治さんの当時の応対も非常に悪かったですからね。
この手の悲劇は繰り返されちゃうんじゃないかなとは思いますね。
吉田:
被害者もなぜか攻撃されるケースとかもあるし、加害者の周辺も攻撃されるし、昔からあったことではあるんですけど、今はそれがエスカレートしやすい状況。昔よりも身元がわかりやすくなっている。
久田:
その通りなんですよね。関根元死刑囚の娘さんが言っていた「私にとってはお父さんなんです」ってたぶんそれだけなんだよ。
林眞須美の長男もそうだと思うし、家族にとってみれば「僕にとってはお母さん」「私にとってはお父さん」ってそれだけなんだよね。そこは理解して話を切り離してあげないとと僕は感じていますね。
吉田:
週刊文春で読んだんですけど、たぶん林眞須美の亡くなった長女が児童養護施設にいたとき、給食当番で学園長にカレーをよそったら、「おい、これ、ヒ素、入ってるんちゃうん?」っていじられたって話があって。
確かにその状況だと言いたくもなるだろうけれど、その立場の人が言ったら駄目じゃないですか。
しかも、しばらくしてから自宅に荷物を取りに帰ったら壁には「人殺し」とか落書きされてて、さらには放火されて家が全焼しちゃったりで、それは死にたくもなるだろうなって。
久田:
だってお母さんは死刑確定囚ですからね。人も亡くなっているわけだから、亡くなった人の遺族の気持ちもあるしね。
そこまで言っちゃうと考えもバラバラになっちゃうんですが、少なくとも死刑囚とその家族は切り離さないといけないなと思ってますね。また悲劇が起こっちゃいますからね。
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