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米大統領選当日、市場に放たれるのはトランプ砲orヒラリー砲? 両者の経済政策と市場の動きを徹底分析

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共和党は小さな政府、民主党は大きな政府

今泉:
 まずは共和党から説明していきますね。共和党政権では“小さな政府”を政策として進めています。そして、2年目の景気が悪くて、1年目に株安になる傾向にあります。歴代の共和党政権の表部分を見ていくと、NYダウの1年目は▲印があるようにマイナスです。2年目のGDPも平均で0.7%というように非常に低いです。小さな政府を目指しているため仕方ない部分もあるのですが。

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今泉:
では仮に民主党政権になったとすると、“大きな政府”を目指し、財政出動をどんどんやりまして、2年目の景気が良くて株高になる傾向がある。2年目のGDPも先ほどの共和党0.7%に比べると民主党では5.1%と明らかです。また、NYダウも1年目の株価が13.4%も上昇している。どちらが大統領になっても何もできないのでは? という懸念があるものの、ヒラリーさんになったほうがアメリカの株が上がりやすく、景気もよくなりやすいという憶測になるでしょうね。

飯田:
 なるほど。民主党政権は財政出動が行われやすかったり、社会保障の充実で貧困層の消費が増えたりして、次の年の景気が良くなる傾向になる。共和党政権は財政出動をそんなに行わず、弱者救済に対しても一生懸命ではないので短期的には上がりづらくなるわけですね。一方で、先のデータだと共和党政権では3年目の株価が高くなっている。つまりは、どちらかというと短期的な影響は民主党の方がポジティブな傾向にある、と。

今泉:
 そうですね。さらには3月になると債務上限を凍結していた問題が起こりますから、ねじれた政権でこれまで民主党がやってきたような大規模な財政出動ができるどうかも疑問符がつきます。

飯田:
 あと、ヒラリーさんの経済政策が一体何なのかよく分からないという意見も聞かれます。民主党の大統領候補の候補だったとき、つまり予備選を戦っているときからいろいろなものをどんどん取り入れた結果、全部中立のような形になっていると感じるのですが、いかがでしょう? TPPも反対に鞍替えしているほどです。

今泉:
 激戦州、五大湖の周辺にある製造業の中心と言われたミシガン州やオハイオ州で票を取るためには、保護貿易的な取り入れていかないと票が取れないという背景があったと思います。

飯田:
 ですよね。ミシガン、オハイオはまさにこの州を取った方が大統領に……なんて言われている激戦州ですもんね。と、言っているうちにそろそろアメリカの雇用統計が発表されるようですので、リアルタイムのチャートを見ながら話を進めていければと思います。

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みんなで見ようFX為替チャート

雇用統計に対して相場はどう反応するのか? アメリカは利上げをするのか?

飯田:
 現在のレートは102円95銭~95銭といったところでしょうか。今回の雇用統計で注目したいのは、ここのところ8月と9月はパッとしなかったというのが正直な印象です。もの凄く悪くないけど、期待されるような非農業部門雇用者数20万人越えみたいなものも見えてこなかった。発表前に恐縮ですが、今泉さんの予想はどのようなものでしょうか?

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今泉:
 私の予想は前月比+15万程度。ただし9月分が15万6000人から20万人に上方修正されると予想しております。9月の雇用関連指標、10月の雇用関連指標が全体的に赤が多く悪くはない。私が注目しているのは、失業保険継続受給者件数。つまり失業保険を受けている人が9月から10月にかけてどんどん減っているということが表からも分かります。基調としては悪くないだろうと思われます。

飯田:
 9月の速報値が少し情報修正されて、その一方10月は前月の速報値並みになると。

今泉:
 これを見ても分かるように、しょっちゅう修正されているんですね。予想平均値より良いか悪いかで相場は動きます。では、その数字が本当に悪いのかということを冷静に考えてみますと、利上げするのかしないのかという判断の中では、ダドリーNY連銀総裁のコメントを見ると、「月間5万~10万の雇用者があればあれば失業率は安定する」と言っている。就業者が増えていけば失業者は減ります。FRBとすると10万あれば十分とみている節がある。私は今日の数字が10万であってもアメリカは12月に利上げ可能と見ております。

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飯田:
 9月の15万がどれほど上方修正されるか、さらには10月の速報値を合わせながら相場を見ていく必要があるわけですね。雇用統計は15万を超えるとまあ悪くなく、20万を超えると(とても)良いというイメージがあると思うのですが、これを受けて12月の利上げ予想に関しても、よほど悪い数字が出れば別でしょうけども、大きな変動はなさそうという読みですか?

今泉:
 そうですね。10月の雇用関連指標を見ても非常に強い材料が多く出ていたので、速報ベースでも5万というような弱い数字が出てくるとは思えないですね。

飯田:
 逆に5万という数字が出てしまったら、来月大きな修正があるんじゃないかと思ってしまいますよね。コメントにもありますが、“利上げするぞするぞ詐欺”と言いますか、12月の利上げが先送りされますと、為替相場は二つの国の金融政策施政の比で決まるので、12月の利上げ予想が外れると為替レートにも大きな影響を及ぶわけですよね。

今泉:
 今年は4回利上げするという予想があったのですが、12月も先送りするとなると、「なんだよ来年もできないんじゃないか?」というイメージを与えかねない。しかもトランプさんになってしまうと、もっとできなくなる可能性があるためマーケットへの影響は非常に大きいです。

飯田:
 それでは今一度チャートを見てみましょうか。ちょっとヒゲが上に伸びていますね。

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今泉:
 指標直前に逆指値オーダーが並ぶ影響でしょうね。

飯田:
 「うわさで買って事実で売る」(Buy the rumor、Sell the fact)なんて言葉もありますからね。

今泉:
 指標もでましたかね!?

飯田:
 16万1000人!? ほぼ予想通りの結果ですね。

今泉:
 失業率は4.9%……それにしてもドル買いが先行していますね。

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飯田:
 もっと弱含みを予想していた、という人が多いんですかね?

今泉:
 平均受給はどうなってるんだろう?

飯田:
 お! 今データが届いたので正確な結果をお伝えします。失業率は4.9%、非農業部門雇用者数増加は16万1000人です。9月分の修正も追って報告したいと思います。それにしてもこれほどチャートの動かない雇用統計があっただろうか(笑)。

今泉:
 チャートを見ていると上にひげが伸びているのでそれっぽく見えますけど、ほとんど動いていませんからね(笑)。あともう一つ、今週末発表される世論調査、あるいはウィキリークスがヒラリーさんのメールで国家安全保障に関わる重要なメールを暴露したとすると、一気に相場は変わります。ですので、現状は様子見という人も多いのかもしれません。そして9月ですが、やはり19万1000人に上方修正されましたね。そこも加味して予想通りなのであまり相場も動かなかったということでしょうね。

飯田:
 なるほど。相場の動きも30銭ほどの動きに留まっているようなので、本題の大統領選の方に話を戻していきましょうか。

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大統領選当日は、Brexit(英国のEU離脱問題)の二の舞にならないのか!?

飯田:
 これまでは長期的な視野で考える経済政策でしたが、大きなリスクとしては短期……つまり来週中から選挙結果からの数日間はどのようになる可能性があるか? そこも大きな注目点だと思います。いくつかユーザーから質問が届いているので紹介していきましょう。

ユーザー質問(30代男性):
 「大統領選が判明するまでの間、ドル円はどのような動きをすると思われますか?」

飯田:
 なかでも注目は開票期間中にどういう動きをするか!? ですよね。まさに短期予想(笑)。現状はヒラリー勝利というシナリオを予想して投資活動を行っていると思うのですが、「ヒラリーヤバいんじゃない!?」という空気が流れただけで為替相場が大きく動くことも予期される。

今泉:
 相当動くでしょうね。

飯田:
 思い返されるのは、Brexit(英国のEU離脱問題)の国民投票の開票速報。分単位で大きな動きがありまして、悲鳴や怒声が飛び交ったことは記憶に新しい。

今泉:
 あの日は私も朝から相場を見ていたのですが、「Remember 6/24」ということで、あのときと非常に似ている気がします。残留派が強いと思われていたものの、6月に入って離脱派が世論調査で増えてきたことによってポンドが売られたことで、ポンド円が売られ、ドル円が売られるという相場になりました。

 その後、議員の方が刺された事件が起こり、残留の流れに傾き相場も戻りました。24日(現地は23日)の開票が終わった直後の出口調査でも、「どうやら残留に決まったようだ」との声が占め、さらには離脱派のイギリス独立党の党首・ファラージさんも「残留派が勝った」というコメントを発表したため、一時的にポンドが買われたんですね。

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今泉:
 ところが、大票田で離脱派が勝ったという知らせが出ると、一気にポンドが売られ、ものの見事に下がっていった。フリップに表記されているレンジを見ても分かるように、ドル円、ポンド円、ポンドドル、ともにものすごいことになっています。事前の予想と違うようなことが起きてしまうと、とんでもない値幅が出てしまうことになるでしょうね。

飯田:
 となると、ヒラリー勝利よりもトランプ勝利予想が強まったときに荒っぽい相場になることが予想されるわけですね。

今泉:
 そうでしょうね。投機数字は恐らくリスクOFFになる相場に対して強く攻めてくるはずです。リスクOFFなので株安円高という相場になると思うのですが、落ちたら買おうと思っている投資家さんもどこまで落ちるかが分からないので、いったん買いは引いているはずです。ということは、買いがない中でリスクOFF相場にかける投機的な動きが一気に出るはず。あっという間に99円なんてこともありえますよね。

ヒラリーが勝った場合、トランプが勝った場合のドル円相場予想

飯田:
 なかなか難しい予想だと思うんのですが、大統領選後のドル円相場のイメージについてはいかがでしょうか?

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今泉:
 トランプ候補が勝利した場合は、100円割れという水準に下落するのではないかと思われます。

飯田:
 全面的なリスクオフ相場となって円が高くなる。そして、日経平均は安くなる、というわけですね。

今泉:
 はい。ただし注意として事前の世論調査からトランプ確定という状況になればその段階から相場は動く可能性はある。噂一つでも影響を及ぼすことがあります。例えば、歩いていたヒラリーさんが転んだだけでも、「やっぱり病気なんじゃないか?」などと噂され相場に影響が出かねない。

飯田:
 たしかに健康不安説はずっと煽られ続けていますからね。

今泉:
 最近ネット検索で、ヒラリーさんの病気の件を検索する人が多いと聞きます。またウィキリークスの問題もあります。もし選挙前に安全保障に関わるような爆弾メールが暴露されれば、大統領選挙前から相場はこのフリップにあるような動きを形成していくかもしれません。

飯田:
 とは言え、ヒラリーさんが勝利した場合は、ドル円は落ち着いた動きになると?

今泉:
 安心相場というか、下値では落ちたときがどこまで落ちるか分からなくて怖いので、あまり積極的に買おうということにはならないでしょうが、上値は戻ったところでしっかり売っていこうという日本の堅実かつ着実な輸出企業さんの売りが並ぶと思うので、下に比べると上にあがるスピードはゆっくりかなと。

飯田:
 107円~110円を想定為替レートにしている企業も多いようですから、その水準まで戻ると日本株に関してもある程度安心材料になるでしょうね。

今泉:
 しかも今回の決算発表で想定為替レートを100円~105円に下げてきている企業も少なくなかった。

飯田:
 そうすると想定より差益がでるということですもんね。

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今泉:
 105円まで上がったらうれしくてしょうがない企業も多いでしょう。

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