「核ミサイルからサイバー攻撃へ」血が流れない戦争の時代が来る? 国際政治学者・三浦 瑠麗が語るトランプ政権下の軍事力
トランプの狙いは核兵器ではなく、サイバー攻撃
三浦:
トランプ政権は軍人の影響力が強いですよね。軍人達の一番嫌がることは予算のカットで、それはしないでしょう。ただこれからの軍拡競争のなかでどこに投資するかというと“人”ではなくて宇宙やサイバー、そこでアメリカの覇権は確立する。
他方で核兵器は更新しなければいけない。今後数十年の間に更新しなければいけない核弾頭が増えていってそこにはお金を使う。では局地紛争はどうするか、というとあまり興味はないでしょうね。
山本:
大統領がトランプになったからといって、米中、米露が急に良くなるとは言えない。台湾に電話したかと思っていたら、Twitterでは「中国には関わらない」などと言って、みんなパニックになっている。
三浦:
これは彼自身が、何が彼を偉大な大統領にすると読んでるかなんですよ。外交では偉大な大統領にはなれないので、イラク戦争、アフガニスタン戦争の結果からこの政権が誕生していることを考えると偉業は撤退ですよ。
山本:
すごく面白い表現をしていたよね。
三浦:
「意気揚々と撤退」ですね(笑)。
山本:
意気揚々と地域紛争みたいなものからは撤退するということね。そこで聞きたい。退役軍人が怒るので軍事費は削れない、そこで地域紛争からは手を引いて、宇宙とかサイバーに予算を使うのは正しいと思うのですが、軍人出身の人は怒るんじゃない?
三浦:
手を引くといっても介入しないだけで、基地は保有するかもしれない、基地の保有の負担は同盟国に担わせる方向にいく可能性もある。でも、本質的な変化は核兵器が最大最強の兵器じゃなくなるという所にある。それよりもっと上の不戦勝出来る、宇宙サイバーの分野があると、ミサイル防衛に打ち込む必要がなくなる。
人を殺さなくても覇権を確立出来る時代が来るとすれば、威勢のいいロシア、中国に多少譲っても別に問題ない。ヒラリーさんは完全にテクノクラート【※】寄りなので、この発送の転換は出来ないですよね。大きな転換として核兵器が重要ではなくなって、例えばウクライナ政府が変な動きをしたらサイバー攻撃すればいいとなったら、領土がそこまで重要じゃなくなるという変化ですね。
※テクノクラート
技術官僚。科学者、技術者出身の政治家、高級官僚。
山本:
ワシントン・ポスト紙がすっぱ抜いていましたけど、オバマが(サイバー攻撃で)イランの遠心分離機を止めたらしいですね。サイバー攻撃の能力が上がってくると、例えば北朝鮮のミサイルも止めることが出来るかもしれない。サイバーというのは大きなコンセプトを変えてきますね。