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【全文掲載】安倍首相と山中教授が新型コロナに関するネットユーザーからの質問に回答。9つの質問と回答内容まとめ

 2020年5月4日、政府は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、5月6日までを期間として全国に発令していた緊急事態宣言を5月末まで延長しました。見えないウイルスへの恐怖、今後の生活への心配など、長期化しているコロナ禍で不安な日々を過ごしている方も多いのではないでしょうか。

 そんな中、ネット上で新型コロナウイルス感染症対応についての質問を募集し、直接、安倍晋三首相にお話をうかがう特別番組「安倍首相に質問!みんなが聞きたい新型コロナ対応に答える生放送」が、5月6日20時より配信されました。(主催:niconico・Yahoo! JAPAN)

 本番組では、PCR検査や給付金、マスク配布についてなど合計9個の質問に対して、安倍晋三首相と京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥所長が回答。本記事では、番組で取り上げられた質疑応答の全文をお届けします。

安倍晋三 首相
京都大学iPS細胞研究所 山中伸弥 所長 ※リモート出演
聞き手:馬場典子(フリーアナウンサー)

 

行動制限の緩和による感染リスクについて

──行動制限を一部緩和した県と特定警戒都道府県の2つに分かれたことで、かえって人々が移動し、感染を広げるリスクが高まるとの指摘があります。こうした問題にはどう対応されるのでしょうか?

安倍首相:
 これまで緊急事態宣言の下、国民の皆様には最低7割、極力8割、人との接触を削減する本当に大変なご協力をいただいたことに感謝申し上げたいと思います。その結果、成果も出てきております。

 ただ、いまの現状においてはまだ医療現場は大変厳しい状況でございまして、この状況を変えていくうえにおいてはいま入院療養されている方々がおられますが、退院されるあるいは回復されて退院される方の数を新たな感染者が下回るレベルにしていきたいと思っております。

 そのためにさらなるご協力をいただきたいと思いますが、その中で特に警戒が必要な13都道府県につきましては、この極力8割というお願いは続けさせていただくところでございますが、いままで大変なご協力をいただいた結果、収束の方向に日本全体が向かっておりますので、この13都道府県を含めて、博物館や美術館や図書館や公園もこれからはどうか利用していただきたい、行っていただくのは問題ないというふうになりました。

 それ以外のところについては、社会経済活動と感染拡大、感染を防止するこれを両立をさせる方向で段階的に前に進んでいくということになると思うわけでありますが、その中でも三密は避けていただきながら注意もしていただきたい。
 そういう中で全国ではやはり、そういうところを含めまして大きなイベントは控えていただきたいと思いますし、県をまたいでの移動ということもできる限り控えていただきたいと思います。なんとかその中で我々は収束を目指したいと思っています。

──万が一リスクが高まってしまったらという心配の声がありますが、緩和された県であっても県外への移動は控えてという工夫をしながらということですね。

安倍首相:
 緩和された県と特別警戒の都道府県との違いはあるのですが、そういうところをまたいで行くことはどうか控えていただきたいと思います。

──山中先生はどのようにご覧になっていますか?

山中教授:
 今首相が言われたとおり、できるだけ不要不急の都道府県をまたがる移動は引き続き避けるべきだと思っています。
 私は大阪に住んでおりますが、たとえば感染者が出ていない岩手であったり、ここ一週間ぐらい全然出ていない県もありますがそういうところには決して行かないです。

 ただ、たとえば里帰り出産を予定されている方ですとか、あとは田舎の高齢のお父さんお母さんが具合が悪くなるといったような事情で、どうしても東京から岩手に、大阪から沖縄にと帰ったりしないとダメなケースが出ると思います。

 私はいま国民に求められているのは優しさだと思っていますので、ぜひそういうやむを得ない事情で都道府県をまたいで移動をされる方には優しく接する、そういう気持ちを日本人はみんな持っていると思いますので、ぜひそういう優しさは忘れないでいたいと思っています。

──そうですね。本来このコロナ禍というのは誰かの責任ではなくて、みんなで乗り越えて行かなければいけないもの。かかりたくてかかる人はいないということで、みんなで支え合う気持ちが大切ということですね。

PCR検査の実施件数の少なさについて

──新型コロナウイルスの感染の有無を確かめるPCR検査の実施件数の少なさが問題視されています。検査数や検査率など数値目標を掲げるお考えはありますか。また唾液を使ったPCR検査の活用は考えていますでしょうか。

安倍首相:
 PCR検査につきましては、医師が必要と判断すればPCR検査を受けられるような体制にしなけばならないと思っています。
 そしていま、能力を、日本は低かったんですが、15000までありまして20000まで上げていきます。大切なことは20000まで上げた中において、それを活用できる体制を作っていかなければいけないと思っています。

 問題点としては、大都市を中心に、特に東京なんですが、目詰まりがあるということでありまして。それは保健所の業務過多、あるいは検体採取の体制などに課題があるのは事実でありますから、早急に強化をしていきたいと思います。
 特に東京では、PCRセンターを12か所設置をして、全国で20なんですが、体制を強化をしていきたいと思います。
 ただ、実際は、海外と比べて検査数が少ないので、もっと陽性数が多いんではないかという方がおられるんですが、しかし検査の陽性率を見ると、たとえば米国が17%です、また英国は27%近いんですが、日本は5.8%となっています。
 
 日本は比較的、クラスターに対して、そのクラスターと見られるところにみなさんPCR検査をかけたり、陽性率の高い方々のところに入っているんですが、特別、陽性率が高くないという、そういうファクトも申し上げておきたいと思います。
 そこで、唾液を使った検査でありますが、米国の一部でも実用化をされている。いま日本では制度等について研究をしているわけでありまして、使えるものはどんどん使っていきたいと思いますし、特にいまインフルエンザの検査と同様の抗原検査も有力でありまして、もうすぐ実用化をしていく段階に入っていきます。
 あらゆる手法を使って、簡便な検査手法を使って、なるべく実態をしっかりと把握していきたいと思っています。また、できる限り、陽性になった方はただちに治療を受けられるような、そういう体制を作っていきたいと思っております。

──そのあたりが具体的にもうすぐというのはいつなのかというのは後ほど伺うとしまして。陽性率を正確に出すためにもやはりPCR検査のそれなりの母体数というのは必要かと思うのですが。山中先生どうお考えでしょう。

山中教授:
 まったくその通りだと思います。今後、経済を再開していくひとつの鍵は、私はPCR、徹底的な検査と、それから感染者を同定した場合の隔離、このふたつを徹底的に行うことだと思っています。

 首相が言われたように、最初の第一波、中国から入ってきた方々を日本は見事に抑え込みました。これはクラスター対策で、PCR、能力、限られていたんですが、ここを重点的にクラスターを叩くことによって、第一波を乗り切ったんですけれども、いま、その後、ヨーロッパ等からたくさん感染者が入ってきて、残念ながら東京、大阪等では、かなり市中に蔓延してしまって、ちょっとクラスターだけでは対応できない状態になってしまいました。
 この状態ではやはりいまの10倍、ひょっとすると100倍くらい、PCR能力を上げて、隔離していく。これによって、経済の再開がかなり促進されるんじゃないかと、私、専門家でないんですがそんなふうに考えています。
 
 PCRというのはふたつボトルネックがございまして、ひとつは検体採取が非常に危険です。ここがまずボトルネックで、ただこれは各医師会等のご努力で、ずいぶんドライブスルーであったり、だいぶ検体採取できる体制になっていると思います。
 もうひとつのボトルネックはPCRの反応そのもので、これは特殊な機械が必要で、この検査に慣れた検査技師さんも必要です。ここが今後ボトルネックになると思います。いま保健所の方とか、各都道府県の衛生研究所の検査技師さんは本当に大変な過重労働で、この連休中も検査していただいていると思います。
 
 私の提案と言いますか、たとえば、いま私iPS研究所におりますが、このひとつの研究所だけで、新型コロナウイルスのPCR検査をできる機械が30台くらいあります。また、その機械を使って普段からPCR検査を行っている研究員や技術員がもう何十人。
 いまは自粛要請で、多くの人が実験せずに在宅になっています。こういう大学等の研究所の力をうまく利用すれば、かなりPCR能力が20000を超えて、もう10万くらいいける可能性があるんじゃないかと思っておりまして、それができていないのは、研究者、私も非常にこう責任をいま感じています。
 これまで保健所とか国の都道府県の衛生研究所に丸投げでしたので、なんとか、研究者として検査能力の向上にも貢献したいと。長丁場になって、今後、1年以上、この検査、どんどんやっていく必要あると思っていますので、ぜひ、その点にも貢献したいと思っています。

──さきほど総理から20000はいくだろうとお話がありましたけれども、山中先生としては1日どのくらいあればいいとお考えですか。どのくらいを理想とされていますか。

山中教授:
 件数の問題というよりは、やはり必要な方は速やかに検査を受けられる。たとえば発熱等があっても、現状では大都市では2週間くらい検査を受けれないと。そのうちに重症化してしまうという例をいろんな方から聞いています。
 また、いろんな病院で入院してくる手術が必要な患者さん、この方々ももしかたら感染しているかもしれません。こういう方に検査をしないと、そこで手術をしてしまうと院内感染が一気に広まってしまいますので。手術をするべき方がたくさんおられますから、こういう方に速やかに検査できる体制、そのためには20000件では足りないかもしれないと思っています。

──ありがとうございます。大学の研究所など利用すれば、もっと多く検査できるのではないかとご提案がありました。これについてはいかがですか。

安倍首相:
 総力を上げて、対応する体制を作っていきたいと思っています。さきほど申し上げました抗原検査についても、短時間のうちに結果が出る方法であります。
 ただ、精度に若干の弱点はあるんですが、陽性となれば陽性間違いないんです。ですから抗原検査で陽性が出ている人はただちに陽性。ただ陰性の場合は、陽性である可能性がありますので、そういう方はPCR受けていただく必要があるかもしれませんが、こういものも活用しながら、体制を強化していきたいと思っています。早く結果を出せるようにしていきたいと思っています。

──検査できる機械が30台ありますよ、と。これもぜひ活用してくださいというお声に関してはどうでしょう。

安倍首相:
 ぜひそういう調整もさせていただきたいと思います。ぜひ活用したいと思います。

山中教授:
 いま総理、非常に大切なポイントを言われまして、抗原検査は私たちも京都大学の附属病院と協力して、明日から検討を始めます。
 いま総理が言われたこと、おそらく正しくて、PCR検査のほうが感度がいい。抗原検査だと、本当は陽性なのに陰性と出てしまう場合もあると思いますが、それはそれで二段構えで。
 
 まずは抗原検査をやって、抗原検査というのはその場で結果が出ますので、PCRやる必要まったくございませんので、そこでもし陰性と出て、でも症状等から陽性が疑われる場合だけPCRに回すと。そういう二段階でやると、ずいぶん状況が改善すると思われますので、いま総理が言われた方法が、僕は絶対やっていくべき方法だと思っています。

──いまの体制では大変な限界ギリギリですけれども、まだまだ日本全体では余力があるということで、ぜひよろしくお願いします。

医療従事者の保護と補償について

──中国や欧米の状況を見て予測できたにも関わらず、医療従事者のマスクや防護服等が不足し、感染も多発しています。最前線で働く医療従事者の保護と補償についていかがお考えでしょうか。

山中教授:
 これは本当に大変な問題だと思います。
 中国やイタリアは、患者さんが急増したために医療崩壊が起きたんですが、日本は幸いそこまでまだ急増していないのですが、別の理由で医療崩壊が起ころうとしていまして、それは医師や看護師さんに負担がかかりすぎていて、しかもいろんな偏見や差別のようなことがあって、医療従事者の方が疲弊されてしまって辞められていくと。

 気持ちでいま頑張っていただいているのですが、長期になりますので医療従事者の数が減ってしまって患者さんの数が急激に増えたというよりは、医療従事者の方が疲労困憊してしまって医療崩壊が起こる。
 そういうことがかなり日本では懸念されていますので、僕の周りには医療従事者の方がたくさんいます。いま大学院生で給料をもらっていない若手の医師達がコロナの対応に駆り出されたりもしています。また、若い女性で妊娠中の女医さんの方であったり、看護師さんもたくさんおられますが、彼女たちも辞めると自分で言えない、周りの同僚が必死にされているので言い出せない。
 そういう状況の中で気持ちで頑張ってくれています。

 そして、もっと現実的な事を言うと、こんな危険なことをやっていただいているのに、手当がなかったり、1日290円だったり、一番いいところでも2000~3000円だったりという。
 お金で動くわけじゃないですけど、でもこういう方々の努力に見合うきちっとした手当は付くべきだと思いますので、ぜひ首相のリーダーシップで改善していただけたらなと思っております。

──これだけのことが起きまして、今まで抱えていた問題がより大きくなっている面もあると思います。いかがでしょうか。

安倍首相:
 山中先生が言われたように、欧米のような状況ではもちろんありませんが、だた実際に医療現場は過酷で、いまこの瞬間も命を守るために医師、看護師、看護助手、あるいは医療従事者のみなさんが本当に頑張っていただいておりますし、大変厳しい状況にあるのは事実であります。
 たしかにその中で「医療防護服が不足しているではないか」といった切実な声も私どもに届いております。

 ほとんどを中国、海外に依存していたということもありまして、その中で国が中心になって確保をしまして、3月に国が買い上げて都道府県経由で配っております。4月中に7000万枚を超える医療用サージカルマスクを提供させていただいておりますが、ただ、都道府県において多少の目詰まりもございますので、ウェブを利用しまして医療機関へ国から直接お届けするということも始めました。
 とにかく非常に困難な状況にあるところに、一日も早く必要な医療防護具をお届けしたいと思っております。

 また、今までそういう物を作っていなかったさまざまな製造業の皆様に、ご協力いただいていることも感謝申し上げたいと思います。
 これを教訓として、こうしたいざというときに必要なものは国内で確保できるという体制を、今後作っていきたいと思いますし、また医療現場の皆様大変でありますから、さらなる確保のために全力をあげていきたいと思います。

 いま山中先生からご指摘があった、処遇の改善、たしかにその通りだと思います。重症者治療への診療報酬をについて、倍増するということさせていただいて改善、努力をしておりますが、皆様の貢献にさらに応えていきたいと思っています。

──緊急事態宣言が発令されている中ですと、本来なら政府が確保していち早く届けられるはずですし、そのための努力もされていると思うのですが、新しいシステムはいつから始められたんですか?

安倍首相:
 それは先月からですね。
 先程も申し上げた通り、今まで7000万枚を超えるサージカルマスクをお届けしているはずなんですが、現場に届いていないというところがありますので、そうであるならば、そういう医療現場から直接ウェブを使って国に言ってきていただいて、そこに国が直接届けるという仕組みも別途作っていまお届けをしているということです。

──確たるお答えはできないと思いますが、どのくらいで行き届きそうですか? みなさんマスクを手作りしていて、一番感染リスクの高い当事者たちが手作りの物でしのいでいるという現状もあるようなのですが。

安倍首相:
 サージルカルマスクでN95も不足しているのですが、いま世界中から国が中心となって買い付けを行っております。また、ガウンやフェイスシールド等についてもしっかり確保しておりまして、早急にウェブを使って直接お届けする仕組みを多くの方に活用し始めていただいております。
 まだもちろん十二分な量の確保はできてないのですが、サージカルマスクも量が出てまいりましたので、これはかなりお応えできるのではないかと思っております。

──山中先生いかがでしょうか?

山中教授:
 いま中国からN95等が入ってきていることは聞いているのですが、一部にはかなりの不良品も混じっているということ、中国も急いで生産しているのか、ということを聞いております。N95が不良品ですとそれを付けたドクターやナースは一瞬で感染する可能性がありますので、ぜひ品質チェック、一定の基準を満たしたものの提供をお願いします。

──どうしても「ありがとう」という言葉では頑張り切れないほどの現状かと思います。どうか政治の力でなんとか少しでも精神的なものも負担が軽くなるように願います。

一律10万円の追加給付の判断はいつ頃にされるのか

──一律10万円の追加給付について総理は会見で「事態の推移や状況を十分に見極めながら判断したい」と発言されました。アルバイトができないためギリギリの生活が続いています。いつ頃判断されるのでしょうか。

安倍首相: 
 まずはこの一律10万円の給付、たとえば800を超える自治体では、オンライン申請を受け付けてございます。また、それ以外の方々については、申請書が郵送されいくわけでございますので、まずは1日も早くお届したいと思っています。
 また、アルバイトができない方々もたくさんおられますが、アルバイトの方々も含めまして、雇用調整助成金の対象に、いままではなかったんですがその対象にいたしました。

 また、この急変で生活が大変な方々も多いと思います。緊急小口資金の貸付、これは最大80万円まで貸付が受けられます。その中で状況が厳しい方々については返済免除の特例付きもございますので、ぜひご活用いただきたいと思います。

 アルバイトの仕事がなくなって住んでいる住居費を払うのが大変だという方々もおられます。そういう方々に対しては住居確保給付金という制度があります。
 これはご存知ない方も多いんですが、東京では53,700円まで出ますので、ぜひこれも活用していただきたいと思います。このあとさらに長引いていく状況になってくれば、そのときの状況を見極めて、さらなる対策も当然考えていきたいと思います。

──あとはやはり先日の会見ですと、追加給付の質問ではあったのですが、元の一律10万円も手元に届いていないところが多くて、早くても5月8日申請、早くてもその1ヶ月後に給付と記憶しているのですが、そのあたりのスケジュールは変わらないでしょうか?

安倍首相: 
 一番早いところは、自治体によって既に5月1日から配っておられるところもあるんだろうと思います。まずは申請していただいて、その上で自治体がお届けをするということでありまして、できるだけ早くお届けをしたいと思っています。自治体ごとに多少の違いはあると思いますが。

──各自治体がそれぞれの例のいいところを見習いながら早急に進める面もあるかと思います。

安倍首相:
 これはマイナンバーを活用していただければ大変早くいくわけでありますが、まだマイナンバーの普及は16%ぐらいに留まっておりますので、郵送していただいた方々にもなるべく早くお届けするように地方自治体と協力をして全力で取り組んでいきたいと思っています。

──マイナンバーを活用するには、セキュリティ面も両輪で進めていかなければいけないという部分もあると思いますが、早く有用に活用されることを願います。山中先生の身近なところでも、こうした給付の問題、悩みを抱えてる方はいらっしゃいますか?

山中教授: 
 もう飲食店の方ですとか本当にお気の毒で、できるだけそういうところでテイクアウトをしたりしていますが、普段の収入に比べると本当にわずかだと思いますので、ぜひいろいろな経済的な支援をお願いしたいと思っています。

 これはいまの緊急事態宣言というのはダッシュをしているような感じなのですが、あと何週間かダッシュが続くと思いますが、それで終わるわけではなく、その後も持久走のようにかなり、いまよりペースを落とすことはできると思いますが、かなり長期間の対策が必要になると思いますので、いまは10万円でなんとか乗り切れても、そのあとの長期戦というのは乗り切れない方がたくさんおられると思いますから、ぜひ追加の支援というものも先手先手でお願いしたいと思っております。

──本当に睡眠もままならないというふうに悩んでいる方も多いですね。スピード感が必要な問題かと思います。

学生・学校への支援策について

──大学生・短大生・高等専門学校生・専門学校生への経済的な支援と、それらの学生が在籍する大学・短大・高等専門学校・専門学校自体への支援策をどの程度の規模でお考えでしょうか?

安倍首相:
 学生のみなさん大変だと思います。4月に入学して授業が何もないのに授業料を払わなければいけない。そういう声も大変伺いました。
 そこで我々は各大学にお願いをいたしまして、授業料の納付について、あるいは減免についてお願いをさせていただきました。そうしたことを実行していただいた学校に対しましては、国として支援をしていくということを決めていくところでありますが、ほぼ100%の大学において先月末に授業料未納の学生のみなさんも引き続き在籍が可能ということになっていますので、どうかご安心をいただきたいと思います。

 そしてまた、アルバイト等もできないようになってしまっているでしょうし、またご両親の経済的な事情も大きな変化が出てこられていると思います。
 この4月から高等教育の無償化が5400億円の予算でスタートしたところなのですが、そのなかで給付型の奨学金という制度が始まりました。
 これを今回の新型コロナウイルスという事情で、大きく経済状況が変わったみなさんも利用できることになります。1年間91万円の給付がいくわけでありまして、ぜひこれも活用していただきたいと思います。 

 もちろんそのアルバイトにおいても雇用調整助成金の対象にはなるわけでありますが、実際なかなか難しいという声も聞いていますが、そうしたものもぜひ活用もしていただきたいと思っています。そのうえにおいて、アルバイトで学費を稼ぎながら生活を支えている学生のみなさんもたくさんおられると思います。
 なかなか家にも頼ることができない。でももちろんいま申し上げたようないろいろな制度を活用していただきたい。
 しかしその中でも大変であろうと思いますので、今後そういう支援について具体的な支援の仕方、さらなる支援の仕方を、早急に検討して速やかに追加的な対策を講じていきたいと思っています。

──もちろんいろいろな課題を抱えていらっしゃるので一概には言えないと思うのですが、いつ頃を現時点で目標とされていますか?

安倍首相:
 現時点では与党とも相談しているんですが、なるべく早く対策を今月中に当然練っていきたいと思っています。

──我々、新聞で「待ってた」ということが、「あ、でも一ヶ月先なのか」というところで気持ちがくじかれてしまう方も少なくないと……。

安倍首相:
 大切なことは、申し上げましたようにたくさんの制度はあるんですね。そのことをまだご存知ない方もおられますから、先程申し上げましたような、給付型の奨学金も活用していただきたいと思いますし、この学費を納付しなくてもこれは除籍とかにもなりませんから、どうか安心していただきたいと思います。
 また緊急の小口資金、先程申し上げましたね。10万円、20万円、最大で80万円になるんですがこういうものも、ぜひ活用していただきたいと思います。

──山中先生はiPS細胞研究所が京都大学のなかにありまして、大学としてあるいは学生さんを近くで見ていてどんなことを感じていらっしゃいますか?

山中教授:
 私たちの研究所には修士課程、博士課程の大学院生がたくさんいます。彼らはもしかしたら一番困っているかも知れません。20代後半、30代の人もおられまして結婚しておられて奥さんもおられて子供もおられると、ご主人がおられると、そういう形でいまもうバイトもできない。
 でも普通の一人暮らしよりもお金がずっとかかるということで、いま大学院生が入っていませんでしたので、ぜひ大学院生の存在も頭に入れていただけたらと思います。

 もう一点、これは経済的な支援も大切なんですが、あと本来受けれるべき教育がいま受けることができていないと。こちらに対する支援も先日もオンライン(授業)をどんどん前倒しでやると言っていただいておりましたが、ぜひ大至急、すべての児童、学生さんがオンライン(授業)を家で受けれると、そういう体制に一日も早くなったらいいなと思っております。

安倍首相:
 ちょっと追加させていただきたいと思います。ずいぶん誤解があるんですが、さきほど私の奨学金のコメントについて、「返さなければいけないではないか」というコメントがあるんですが、これは給付型ですから返していただく必要がない給付であります。
 同時にさきほど申しました91万円というのは学費とは別です。学費は無料ですから、そのうえおいて生活費やあるいは住宅費等のための91万円が出ると、学費は無料で91万円が出て、これは返さなくていいのでありますから、ぜひ活用していただきたいと。
 これは返さなければいけないんではないか? という誤解もずいぶんあるようでございます。

──給付は返済の必要がない、と。

安倍首相:
 給付型ですから。

──山中先生から本来は立場とか業種で区切れるものではないと思うのですが、大学院生もいま総理がおっしゃったような制度は活用できるのでしょうか?

安倍首相:
 大学院の方ですが、これはあくまで学部(大学生)ということでありまして、今後将来の課題として大学院ということも考えていかなければいけないと思っております。

山中教授:
 給付型は、私も学生のときに給付型の奨学金をたしか月3万円くらいいただいて、本当に助かってそのおかげで医者になれたようなものなのですが、ただだいぶ敷居が高くて、競争率が高くてなかなかそれをもらえる人が限られていました。ですから、いま給付型をもらいたいと思ってもなかなかもらえない人もいるんじゃないかなと思います。
 そのへんの件数がどうなっているのか、僕も最近のことはわかってないのでそのあたりもできるだけ給付型の奨学金の割合を増やしていただけたら本当にたくさんの学生さんが助かると思います。

安倍首相:
 いま申し上げた5400億円という予算なのですが、これは義務的経費でありますから予算を上回る対象者がいれば、それは当然それに対して対応していくということになります。そこはご安心いただきたいと思います。

──ぜひこの制度をご存知で活用されている方は周りの困っている方とも分け合ってシェアしていただきたいと思います。

緊急事態宣言の解除基準の数値を示す考えはあるのか?

──大阪府は緊急事態宣言の独自の解除基準を示しました。「明確な数値の条件が無ければ何処に向かって頑張ればいいか分からない」「精神論ではなく、数値の基準を」という声もあります。国として指標を示すお考えはありますか?

安倍首相: 
 今回、1ヶ月、5月の末まで緊急事態宣言を延長させていただきました。しかしその中で、ずいぶん、新規感染者がゼロの県も増えてきています。
 それは皆様から大変なご協力をいただいてきた成果だと思っております。そこで、14日を目処に専門家の皆様に再評価をお願いしたいと思っています。
 それは感染者数の動向や、あるいは医療提供体制の逼迫状況等を勘案して、詳細に分析、評価をして、可能であれば期間の満了を待たずに、その段階で緊急事態宣言の解除を行いたいと思います。

 その中において、当然、どういう基準で解除したのか。あるいは解除しなかったところは、どういう考え方、どういう基準で解除しなかったか。ということについてお示しをさせていただきたいと思います。
 ですから、我々はこのまま、そういうものを示さないというわけではなく、今まさに、この変化を見ながら、専門家の皆様に見極めていただいて、その基準を作っていただこうと思っております。

──14日よりも前の段階でも、こうした基準で進めていきますよ、という方針が固まりましたら公表されるということでしょうか?

安倍首相:  
 当然そうですね。しかし、それまでに皆様に分析をしていただかなくてはなりません。
 分析をしていただいて、分析の上において、分析をしていくというのは、緊急事態宣言を行って、どういう変化があって、どういう対応をしている、その結果、医療現場はどうなっているか、新規の感染者数はどうなっていくかという分析をする。その中において基準を決めることができる。

 ですから、専門家の皆様は、当然そうなんでしょうけども、できるだけギリギリまで見極めておきたい。という考え方を持っておられます。我々行政としては、できるだけ早く、そうした基準を作っていただきたいと思っていますが、専門家の皆様はできるだけギリギリまでその変動を分析しながらその基準を見極めていきたいというご意向を持っておられると思います。

 大阪府においては解除基準というのを示されたのですが、それは大阪が決めた営業自粛等に対する解除の基準でありまして、国が決めたものとは違います。
 各自治体が、国が緊急事態宣言を決めて、「こういう中でこういうことをしてください」ということを申し上げるのですが、その中で各業態に対してどのような自粛を求めるかというのは、各自治体のみなさんが独自の判断をされるというのが特措法の基本的な考え方でありまして、その考え方に則って大阪府の知事が判断しておられるんだろうと思います。

──大阪モデルについて分析をされたり、評価される立場ではないと思うのですが、どのように受け止めていらっしゃいますか?

安倍首相: 
 大阪モデルというのは、当然、自治体が行うもので国が行うものではないんですね。ですから、大阪は大阪でご判断いただいて、各自治体がそういう判断をしていただきたい。今度、14日に我々は国としての判断を示しますから、その中で各自治体がそれぞれの判断をしていただくことになるんだろうと思います。

──山中先生、このあたりは数値となりますと、PCR検査やデータの話に戻ってしまう気もしますが、どう受け止めていらっしゃいますか?

山中教授: 
 やっぱり、検査を十分行ってできるだけ全体像を把握するというのが、最大の条件になってくるんじゃないかなと思います。
 でも、そう言っていたらいつまで経っても前に進めないですから、いまあるデータでいろんな判断をしていかないとダメだと思うのですが。これは一番大切なのは医療崩壊を防げるかということで、一昨日の会見で首相が言われたように、まだ毎日の感染者、新たな感染者の方が退院される方の数を上回っている状況ですから、ここでゆるめるわけにいかないのは当然だと思います。

 いまの頑張りを続けるとおそらく2週間、1ヶ月ぐらいでかなりベッドに余裕が出てきて、医療従事者の方の過重労働も少し和らぐ可能性が高いと思いますから。
 その段階で、少しいろんな制限を弱めていけるんじゃないかということで、僕が一昨日の安倍首相の会見を聞いていると、僕にとっては結構出口はしっかり示されたなというふうには理解しておりました。

──大阪と東京も大都市ということで、検査のデータの出方に違いがあるそうですね?

山中教授: 
 そうですね。集計の仕方等も違うと思います。ですから繰り返しですけど、PCR検査、抗原検査も含めて、しっかり行うと。氷山の一角で判断するのではなくて全体像で判断するというのが、まず今後は必要になってくると思います。

 数値で言いますと、世界中で、おそらく日本でもそうだと思いますが、「R」という数値、これは一人の感染者が何人に移すかという、この数値を基準にしていると思います。

──実効再生産数と呼ばれているものですね。

山中教授: 
 そうですね。Reproduction numberで「R」ですけども。この新型コロナウイルスは、何も対策しないと2.5ぐらいだと言われています。たとえば、僕が感染して、もし同じ部屋で近くで話をすると、首相にも馬場さんにも移してしまう。もう0.5人ぐらい移してしまうと。

 だいたいこのウイルスは5日ぐらいで移すと言われていますから、5日ずつで2.5倍ずつになると大変なことになってしまいますから、これは絶対対策が必要で、いまかなり患者さんが増えましたから、このRを0.5ぐらいまで抑えたら、どんどん患者さんが減っていくということで。

 この2.5を0.5に抑えようとすると、8割人と人との接触を減らす必要があると。これは本当に単純な算数。だからこの8割は極めて根拠のある数だと思います。

 たぶんいま、0.5ぐらいに下がっていると思いますが、患者さんの数が減るのは退院までの時間が2週間とかあるから、もう少しかかるので、もう少し待たないと、医療従事者が倒れてしまいますが、そこで退院者がどんどん増えていくと、今度はRを1ぐらいまで緩めることができると思いますので、2.5を1というのは4割にしたらいいわけですから、今度は6割減になりますから、8割減から比べると6割減はずいぶん状況が変わってくると思いますので、そういう意味で、僕はやっぱりこのRをできるだけリアルタイムで首相に報告するという姿勢が大切じゃないかなと思います。

 大阪モデルっていうのは、Rの正確な値がわからないので、陽性率とか1日あたりの感染者、新規のトレースできない数とか、言ってみればRを推測していると私は理解しておりますので、ぜひこのRを、ドイツとかは毎日出していると思いますので、専門家が首相に毎日報告すると。「さあ、首相決めてください」という姿勢が日本も必要だと思います。

安倍首相:
 いま先生がおっしゃったことはまさにポイントでありまして、東京都に対しては、その日に発生した新規の感染者数について報告していただきたいということを申し上げているのですが、発生ベースではなく報告ベースの場合が多いんですね。そうすると正確なRがわからないという問題もありますので、お願いさせていただいています。

 しかし、いままでの経緯を見ても、3月14日においてはR値が2.6だったんですね。それが一時は0.5近くまで下がっています。
 ただ、日々によって違いはありますが、日本全体で見ると0.7までは下がってきています。これをしっかりと下げていきたいというのと、実効再生産数を正しく見るためには、ぜひ、保健所は大変だと思いますが、そういった数値の対応もPCRもあります。
 その中でもできるだけ頑張ってその日その日の数値を出していただきたいということも東京都あるいは国も保健所にお願いしているところです。

──シンプルに検査数だけでは割り切れない、新規の検査がどれだけだったのかということがポイントになってくるということですね。また、1を切れば収束に向かうと我々最初に思っていましたけれども、医療現場の現状を考えると、0.5がひとつの指標であると。
 総理、これは今後、公表をマメにしていただけるということでしょうか?

安倍首相: 
 もちろん、政府は把握しているものを全部公表しています。しかし、それが正確かどうかですね、正確性を期すためには、保健所がいま大変な仕事の中で報告していただいているのですが、それがその日の発生ベースであるようにしていただけるように要請しているところであります。

 我々が持っている数字を隠していることはもちろんありません。全て公表しているのですが、大切なことはそれが、いま言ったようなものなのかどうかということでありまして、大変なことではあると思いますが、保健所、また特に東京都、大阪などもありますが特に東京都に頑張っていただきたいと思います。

山中教授: 
 いま、保健所とか対策チームの方は本当に日夜大変な状況だと思います。
 一方で、私もそうなんですが、自粛に協力するために仕事をしたくてもできない優秀な、僕は優秀じゃないですが、いろんな能力を持った人が京大にもいっぱいいますし、東京にもいっぱいおられると思いますので、ぜひ普段の縦割りじゃなくて、各地に潜在的におられる仕事をしたくてたまらない優秀な人がたくさんおりますから、そういう人材を、さきほどのPCRもそうなんですけども、ぜひこの緊急事態とも言える非常事態ですから、活用していただけたら、保健所の方、厚生労働省の方の過重労働もずいぶんましになると思いますし、Rという数値もより正確に、よりリアルタイムに出せると。
 それによって安倍首相の政策判断も科学に基づいて迅速にできる体制ができると思いますから、これは絵に描いた餅かもしれませんが、ひとつの可能性としてご考慮いただけたらと思います。

マスクの配布とマスク不足について

──欧州各国でマスク着用が義務化されたと知り、政府がマスク配布を妥当だったと思う反面、不良品や契約まわりで疑惑を持たれたのは問題です。今後の全面解除に向けてマスク着用がさらに重要となりますが、日常的に購入できるのはいつ頃からになるのでしょうか。

安倍首相:
 今回、マスクについて我々2枚配布をさせていただきました。厳しい状況でございましたので、洗うというご面倒おかけしますがずっと使えるものになるわけでございますので、この逼迫した状況を改善したいという気持ちで、まずは介護施設、次は学校という順番で広げて参りましたが、各戸に配布をさせていただきました。
 すべての業種のみなさん、あるいは製造業のみなさん、本当に一生懸命作っていただいたと思います。

 疑惑というのは、野党がそういうこと言っているんですがまったくそんなものはありませんし、それぞれ本当にみなさん一生懸命作っていただいて、数も抑えていただいたと思っています。
 我々がこれをやり始めた後、パリやあるいはシンガポールでもこういう配布をスタートしたというふうに思います。

 また、官民連携してマスクの生産の増強を行っています。またこういう品薄状況を解消できる考え方のもとに布マスクも配布をさせていただきました。こういうものを出すと、いままでたまっていた在庫、ためられていた在庫もずいぶん出て参りました。価格も下がってきたという成果もありますので、そういう成果はあったのかなと思います。
 いずれにしても多くのメーカーのみなさんにも増産に参加をしていただいていますし、我々も補助をしています。もちろん余るということはないんですが、基本的には国が全部買い取るということも約束して、安心していま製造していただいているところであります。

──なかなかいつ頃というのは難しいかと思いますけれどもありがとうございます。

東京オリンピックの開催にワクチンの開発は間に合うのか?

──来年、東京オリンピックの開催に間に合うまでワクチンが開発される目途はあるのでしょうか。3000億円と言われる追加費用やスポンサー離れの不安がある中、東京オリンピック開催のメリットとはなんなのか教えてほしいです。

安倍首相:
 東京オリンピックは、1964年の東京オリンピック・パラリンピック以来のオリンピック・パラリンピックになります。
 あのとき私10歳だったんですが、世界のすごいスポーツマンと互して日本人が頑張っている。本当に小さな身体に力を感じる想いでありました。
 まさに、日本のソフトパワーを世界に発信する、最大の機会だと思いますね。障害者のみなさんが本当に住みやすい街を日本が作っている、そういう大会を運営している、文化も発信できます。

 アスリートのみなさんが、あるいは観客のみなさんが、本当に感動できる。安心して観戦できる、そういう大会にしていきたいと。スポーツの魅力を世界に発信しつつ、国際貢献をしていく、本当に大きなこれは魅力、力になっていく、と私は確信をしています。
 
 と、同時に、オリンピックを開催するうえにおいては、今日、山中伸弥先生とご一緒しているんですが、科学者の皆様の力が大変いま必要とされています。
 お薬とワクチンがしっかりとできる。このことによって、新型コロナウイルスの終息というのは日本だけではなくて、世界中で、アフリカを含めて、世界中で終息させなければなりません。そのためにはやっぱりそうした治療方法、ワクチンがぜひとも必要だと思ってます。
 
 薬につきましては、アビガンついて今月中の承認を目指したいと思ってます。レムデシビルについては、明日(5月7日)承認の予定であります。あと、山中先生よくご存じの大村先生が開発された、ノーベル賞をとられた、イベルメクチンというものについても治験を開始をしていく予定であります。

 こうした力を、日本の力も尽くしていきたいと思います。ワクチンについては日本においても、東大や阪大や感染研で研究をしておりますし、世界の叡智を結集しなければいけませんから、日本もCEPIやGSKにしっかりと資金を提供して、世界で協力してワクチンの開発を進めています。
 できるだけ早くワクチンが開発されることを期待したいと思いますし、早いものでは秋くらいに人への治験が開始するということも視野に入ってきてるということも聞いております。オリンピックを成功させるためにも、治療薬、ワクチンの開発、日本も中心になって進めていきたいと思います。

山中教授:
 来年7月にオリンピックの延期、僕は2年後になるのか1年後になるのかと思っていて、1年後に決まったときに、これは研究者にすごい宿題を与えられたなと思いました。
 やはり首相言われたように、ワクチン、治療薬の開発がもう絶対条件になっていると思います。
 その中でも、ワクチンは早いものはもう治験が海外では始まっておりますが、ただオリンピックを開催するくらい。オリンピックというのは世界中から選手が来、世界中から観客が来る、すごい人間の大移動が起こる大会ですから、これを可能にするだけのワクチン量を1年で準備できるかどうかというと、これは研究者として率直に、かなり幸運が重ならない限り、ワクチンだけでは難しいんじゃないかと思います。

 でも幸運が重なればあり得ますが、僕がワクチン以上に期待しているのはやはり薬でありまして、この薬も新たな薬の開発はもう絶対間に合わないので、首相が言われたアビガンであるとかイベルメクチンであるとか、そういった既存薬によって新型コロナウイルスがインフルエンザと一緒くらいの怖さなんだと、そこまで持っていけたらもう全然状況変わると思います。

 普通、日本の薬の承認だと、アビガンが今月中に承認なんてもう僕、絶対あり得ないと思ってたんですが、それが今月中といまも発言されましたし、一昨日に記者会見で言われて、もう飛び上がって喜びました。
 ぜひこれ実現させていただきたいですし、もう少し厚かましいお願いをすれば、アメリカのレムデシビルが、アメリカのデータをもとにこんな短時間で承認されようとしているわけですから、日本でアビガンはもう安全性のデータも相当揃っていますし、いま効果のデータもかなり揃っていますから、本当言うと今月中、今月中でも十分ものすごいことだと思うんですが、できたらレムデシビルと同時くらいになんとか首相の鶴の一声でやっていただけないかと、本当思います。

 と言いますのは、これから月末までも、多分日本だけでも何千人かは発症されて、そのうち何百人かは重症化されます。
 そういう方にもしアビガンを全員に使えば、何十人、もしかしたら何百人かの重傷化を1ヶ月でも防げる可能性ありますから。
 ほぼ承認されることが間違いない状態だと思いますので、こういう非常時ですから、特例的に同時承認とかこれは本当に特例中の特例だと思いますが、ただ世界はそういう状況で特に日本はオリンピックという大きな目標がありますので、これを実現させるためには相当普段と違うことをやらないとだめな状態だと思いますので、ぜひ首相にもうひと頑張りしていただけたらというのが私のお願いです。

安倍首相:
 レムデシビルについては、もう明日なので間に合うことはないんですが、たしかに承認は今月中、これもいま先生に言っていただいたようにいままでから比べれば相当短くしたんですが、ただ一般の患者のみなさんに使っていただくことにおいては、患者のみなさんが承認していただければ、病院が倫理委員会で承認していただければ、みなさん使っていただける。観察研究という仕組みが先生もよくご存知のとおりかと思いますが、承認までのあいだはこれを使ってどんどん活用していただきたいと思います。
 また、これ以外にも国産のものでフサンとか、オルベスコ、こういう効果が認められているたくさん国産の薬が既存の薬でありますので、こうしたものを総力をあげていきたいと思います。

山中教授:
 あと、アクテムラというリウマチの薬がございます。
 これも日本で開発された薬ですが、特に重症の肺炎の方にはかなり効果が期待されていますので、実は新型コロナウイルスの治癒力に関しては日本はすでに世界をリードしつつあると思いますから、ぜひオリンピックのためにも僕はこれがひとつの鍵じゃないかなと思いますので。

 日本はいろんな薬害もあって、薬の承認は非常に慎重になっているのは当然ではあるんですが、いまは他の病気で安全性が確認されている薬でしたらかなり特例的に使っていけると思いますので、本当に世界のモデル、Jモデルではないですけれどもそういう姿を示せるチャンスというもの変ですけど、立場にあると思います。ぜひお願いしたいと思っています。

 新規のこのウイルス専用の薬の開発も科学者は一生懸命やっていますが、これはやっぱりいくら頑張っても、普通にやったら10年20年かかりますから、いくらウルトラCで頑張っても2年3年かかってオリンピックには間に合いませんので、ぜひ日本にたくさんある既存薬の早期の承認をお願いできたらと思っています。

スマホを活用した接触追跡技術とプライバシーについて

──では、最後の質問となります。スマホを活用した接触追跡技術が注目されていますが、プライバシーの侵害だという声があります。しかし利用者が多いほど感染拡大を早期に収束することができるはず。命の問題を「監視社会かプライバシーか」の二元論だけで考えていいのでしょうか。

安倍首相: 
 これはプライバシーを守ることと感染拡大を防止するために、こうしたIT技術を使っていく、両立させなければならないと思っております。

 いまは極力8割、最低7割ということをお願いしておりますが、それだけではなかなか難しいわけであります。こうしたものを使って、たとえばシンガポールや台湾は活用してます。
 一方、じゃあ自分がどこにいるかを知られるのは嫌だなと、当然それはみんなそうだと思いますね、私もそうですから。そこで位置情報は守られる。いわば、位置情報は把握しない。伝えなくていいんですね。電話番号は伝えなくていい。誰と誰とが携帯同士が接触したということはわかります。
 ということになれば、もし感染者が居た場合は、接触した可能性のある人達にメールで送信するということになれば、こういう事態に対して、たとえばクラスターをただちに把握して、クラスター対策もあっという間に進みますし、これはその人達の命を守ることにもつながっていきます。

 プライバシーをしっかりと守りながらも、人々の健康と命を守るということを両立させていきたいと思っております。

──総理は具体的にこちらを活用されていくんだなということをうかがい知れましたけど、山中先生はどうお考えですか?

山中教授: 
 本当に必要なことだと思います。本来、Rが2.5のものを1ぐらいまでにずっと維持する必要があって、これをやるには原則的にふたつしか方法がなくて、ひとつは人と人の接触を6割削減することです。これは算数で2.5が1になります。ただこの6割削減だといろんな飲食店が経営大変だと思います。

 もうひとつの方法は徹底的な検査と隔離。隔離をするためにも濃厚接触者の追跡というのが大前提になりますから、いまGoogleとAppleのライバル同士が協力して、携帯から濃厚接触者を同定するというアプリを開発されていると思いますが、これは本人が同意しないとオンにならないということですので、ぜひこれをできるだけたくさんの人がいまの間だけはオンにして、万が一、自分が感染したら、もしくは誰か感染したときに自分が濃厚接触者だとわかると、そういう努力をできるだけたくさんの方がすればするほど、経済の再開がよりできるということになりますから、やっぱりもう、一人一人の努力だと思います。

 安倍首相にも今日たくさんいろんなことを僕も今日お願いしましたし、みなさん政府にお願いしているんですが、でもやっぱり私たちが自分の責任をしっかり果たしてようやく経済の再開への道が続いていくと思いますから、いいとこ取りはできない状態で、みんなで痛みを分かち合うことが本当に求められていますので、ぜひこういう接触者の追跡というのは協力して、できるだけ全員がやっていくべきだと思っています。

──もうすでに予定の時刻を超えながらお答えいただきました。最後に、皆様に伝えたいことがありましたらお願いします。

山中教授: 
 私たち日本は素晴らしい国で、普段、好きなところに行ける、好きなことができるという自由を満喫しています。これ実は自分だけの力でしているのではなく、社会に守られてしているということをこういう事態になると痛感しています。

 社会を支えている人たち、医療従事者であったり、いわゆるエッセンシャルワーカーのレジを打たれる方とかバスの運転手さんであったり、いろんな方、いまも感染のリスクに耐えながら一生懸命働いている方々に守られながら、普段自由を満喫しています。
 いまは逆に、私たちがそういった方、エッセンシャルワーカー、医療従事者、そして社会を守る恩返しをするときですので、みんな大変なんですが、ぜひ心をひとつにして、頑張っていきたいとこれからも思っています。

 安倍首相にぜひ、今後もこの難局を乗り越えるリーダーシップを、本当に大変だと思うんですけども、お願いしたいと思っております。
 2月末にまだ感染者が増えていないときに、一斉の休校であったりイベント自粛を要請されました。ああいう先手の対策、きっと反対した方もおられると思うのですが、ああいう強いリーダーシップが本当にいま必要ですので、今後もぜひ強いリーダーシップを続けていただきたいと思っています。

安倍首相:  
 日本は欧米のように強い強制力や罰則をもって人の動きや社会や経済の動きを止めるというようなロックダウンのようなことはやっていません。あくまでも要請をさせていただく中において、国民の皆様のご協力のもとでここまで成果を出すことができました。本当に感謝を申し上げたいと思います。

 たとえば夜の街クラスターということも言われたのですが、そこも本当に営業状況は1割以下に下がっていますし、東京の各駅の改札口を見ても8割~9割減少している。
 そういう中において、なんとかここまでくることができました。さらなる延長ということで本当に皆様にご迷惑おかけする、辛抱をしなければいけないという状況になっていることは申し訳ない思いでありますが、また国民の皆様のご協力いただきながら必ず収束させたいと思いますし、同時にその間、しっかり事業や雇用を守っていくことは我々政治の責任であります。

 最初に申し上げた10万円の給付、あるいは小規模事業者、中小企業の皆様に100万、200万の給付を行います。
 早ければ明後日(8日)には、早い方で現金をお届けすることができます。これはよく海外に比較されるのですが、たとえばドイツも給付を企業に対して行っています。
 ただ、ドイツは10人以下の小さな企業にしか行いません。最大180万円ですから日本の方が多い。より広い範囲でやっています。

 まだまだそれでは不十分だという声ももちろんございますが、これからさらに長引いていくようにであれば、そのときの状況を見ながら思い切った対策を講じていきたい。必ず、雇用、事業の継続を守り抜いていくということは、お約束をしたいと思います。
 今後とも、国民の皆様のご協力をいただきながら、みんなでこの困難を乗り越えていきたいと思います。

安倍晋三首相のメッセージ動画

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