「土人」発言は氷山の一角? 吉田豪が切り込む反権力派と警察の深い溝
沖縄・高江のアメリカ軍ヘリコプター発着場建設予定現場で、大阪府警から派遣された巡査部長らが「ボケ」「土人が」などと暴言を吐き、大阪府警が「不適切な発言」だとして、2名を戒告の懲戒処分とした問題。
10月23日に放送された『久田将義×吉田豪のタブーなワイドショー』では、この問題について久田将義氏と吉田豪氏の2人が、反警察・反権力と問題そのものを分けて考える難しさについて語りました。
「土人」発言は氷山の一角?
吉田豪氏(以下、吉田):
今、地上波で「土人」という言葉が解禁になっているってことが画期的ですよね。ニュースから「土人」ってフレーズが流れるなんて、凄い時代になったよな……(笑)。
久田将義氏(以下、久田):
ビックリですよね。僕、この問題の動画も見ました。大阪府警の人なんですけど、でもこういう大きな騒動の場合、神奈川県警とか他のところから派遣されてきたりすることがあるんですよね。それこそマル暴の人間とかも。
だから、確かに機動隊の人ではあるかもしれないですけど、もしかしたらマル暴とかの人かもしれませんよね。だとしたら、警察官によっては非常に気が荒い人もいるので。
吉田:
まず大阪府警は口が悪そうですよね。
久田:
まぁ大阪府警は山口組とかもあるし。だけどこの「土人が!」っていうのはね……。
僕はこれ、氷山の一角のような気がしてしょうがないですけどね。今回たまたま「土人」って言葉がフューチャーされただけで、「土人」以外にもいろんな言葉を言ってるような気がしてしょうがない。
吉田:
でもなんだろう、「土人」って黒人の方以外になかなか使わない、よく分かってないと使えないフレーズじゃないですか。「日本にも、こういうものがあって」みたいな。
久田:
うん、そうだよね。なんで「土人」って言葉を使ったのかね。普通ちょっと違いますよね。
吉田:
「旧土人保護法」の存在とか、日本にも色々とありますからね。あと、言い訳がすごく下手だなと思いました。
久田:
どんな言い訳だったんですか?
吉田:
「全然そういう意味だと分からずに使ってしまいました」とかって。
久田:
あと、府知事が庇ってたのも、問題になったじゃないですか。
吉田:
あぁ、「お疲れさま!」ってやつね(笑)。
久田:
そうそう。確かに相当な抵抗をしていたんで、警官も人間だし、しかも若い人だから「相当エキサイトするんだろうな」っていうのはありますけどねぇ。
吉田:
「警察も挑発されてたんじゃないか」ってマジで怒る人もいたりとかね。もう両サイドが噛みつきあっちゃってる。
久田:
そうなんです。だからこの問題でいちばん気をつけなきゃいけないのは、「悪い言葉を使った」ってことと、「警察が」っていうのをゴチャゴチャにして論じると、もう収拾が付かなくなりますよってところ。これは分けて考えた方がいいと思いますね。
吉田:
言葉がいけないのは間違いないけど、こういうことがあると、とりあえず警察批判にすごく流れやすいし。
久田:
そうそう、そうなんですよね。
警察のすべてが敵なわけではない
吉田:
僕、前に警察批判映画のトークショーに呼ばれたことがあって。そこで監督と色々話していくなかで、「でもどこだって同じで、悪人もいれば善人もいる。警察って言っても普通の世界じゃないですか?」って言ったら、怒られたんですよ。「何言ってるんですか! 警察は悪人しかいませんよ!」って。でも絶対にそんなことないじゃないですか。
久田:
そうなってしまうと、もう議論ができないんですよ。
吉田:
そう、出来ない(笑)。 半警察組織までは分かるんですけど、「警察官全員が悪」ってなっちゃうと、それはそういうわけじゃないでしょうと。普通に「僕は真面目に、正義の人間になろう!」って思って警察に入って、「あれ?」って思ってるような警察官だっているだろうし。
久田:
うん、両方いるでしょうね。僕の先輩である、反警察のジャーナリストに「じゃあどうすればいいと思いますか?」って聞くと、「殲滅すべき」とか言ってた。
吉田:
「殲滅」。当時の専門用語ですね(笑)。
久田:
殲滅ってさ……。じゃあ「殲滅してどうするんですか? 殲滅した後は?」って聞いたら「新しい警察をつくるべき」とかなんとか言って。
吉田:
新しい警察も絶対腐敗しますよ、そんなもん(笑)。
久田:
まぁそうは言っても、警察だって中には良い人もいるんだよね。 良い人っていう言い方も変だけど。
吉田:
まぁ普通の、真面目な人ね。
久田:
真面目な人もいるんじゃないですか? その先輩は「いや、ひとりもいない」って言ってたけど。
吉田:
でも単純に落とし物届けたときの対応ひとつ見ても、ろくでもない奴もいれば「この人良い人だな」って思う人もいるじゃないですか。
久田:
いるいる。交番勤務レベルでも両方いるもんね。
吉田:
逆に訳分かんないことで絡んでくる奴もいるし。道を聞いただけなのに、「この鎖を理由にお前を逮捕できるんだぞ!」って言ってくるような奴とか。「はぁ!? この最高の鎖で!? ……っていうか何で道聞いただけでケンカ売られてるの俺、何これ?」みたいな状況とか(笑)。
久田:
警官同士でもありますからね。僕が警察の取材をしている時も、「職務質問の態度が悪い」「あんなとんでもない奴ら…!」って感じで、警官が(警官に対する怒りを) 僕に伝えてきたこともありますからね。こういう事もあるんで、ごっちゃにしないように論じたいですね。
吉田:
僕の友達というか後輩に、警察に絡むのが趣味な奴がいて、その話を聞いているときはずっと「警察頑張れ!」って思ってましたよ。
久田:
逆にね(笑)。
吉田:
財布にお金が無いから警察にお金を借りに行くんですけど、そいつ、それの常習だったんですよ。で、「今ちょっと交番にお金がないって言われたら、「お前が自腹切ればいいだろう!」とか言って、「財布見せろ」ってゴネて。
それで最終的に「ダメだからそこのサラ金で借りてこい」って警察に言われたんだって。そしたらその瞬間に路上で「皆さん聞いてください!ここの警察官は僕にサラ金でお金を借りろと言っています!酷い警察です!」って大声で叫んで、結果、応援呼ばれて囲まれたって。でも「それはお前が悪いよどう考えても」って話だよね。
久田:
でもここでそう言うと、また「吉田君は警察の味方じゃん」みたいな論調にね……。
吉田:
いや、味方とかじゃなくてそれはシチュエーションごとの判断ですよ。警察を好きか嫌いかで言えば、好きではないですけど、でも全員が敵なわけではない。
久田:
僕も好きではない。はっきり言って好きではないけれど、でもそれはなんかね……。難しいよね、反警察と警察って。この問題を反権力と混ぜて語っちゃうとすごく難しいんで、そこは分けて、冷静に論議した方が良いと思います。
吉田:
はい。言葉は良くないけどね。
久田:
うん、差別用語は絶対ダメよ。だけど、これは別です。