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「勧善懲悪ヒーローモノは子供しか観ない」『デッドプール』にみる、アンチヒーローの魅力を映画評論家が徹底解説

コントロールされた第4の壁

『デッドプール』公式サイトより。

中井:
 原作を踏襲している部分だと思うんですが、第4の壁【※】を超えて来ますよね。

※第4の壁
想像上の透明な壁であり、フィクションである演劇内の世界と観客のいる現実世界との境界を表す概念。

堺:
 そこはデッドプールが一番原作ファンに面白がられている所だと思う。

添野:
 若い読者がデッドプール好きなのも、まずそこが大きいと思うね。

番組スタッフ:
 第4の壁というのは、見てる人に語りかけるような。

中井:
 キャラクターが観客に向かって喋りかけてくるという(笑)。

堺:
 映画では、この第4の壁も実は監督がコントロールをしているんです。主役のライアン・レイノルズが現場で撮影に使っているマイクを掴んで敵を叩くというギャグをやりたいと言ったら、監督がそれはやめてくれ、と言って(笑)。

中井:
 それはダメなんだ(笑)。

堺:
 そこに一線があるのかと(笑)。

添野:
 正解だと思うな。

中井:
 映画の撮影現場は入れ込まないで欲しいんですね(笑)。

アンチヒーローが愛される理由

添野:
 色んなことをわかったうえで下ネタとか汚い言葉を使ったり、残酷に人を殺したり、たまにこういうものが無いとつまんないじゃんって思う自分がいるんです。

堺:
 デッドプールの残虐シーンがどこか笑えるのは暴力行為そのものを対象化して、客観視してるから面白いんですよね。

番組スタッフ:
 勧善懲悪のヒーローばかりだと子供しか見なくなるんですよね。自分の中のもやもやした、ちょっとアナーキーな部分を反映したヒーローがいないと、大人は楽しめないんじゃないかな。

堺:
 でもやっぱりヒーローには良い人でいて欲しい部分もあるから、上手いことその間に存在するのがアンチヒーローなんじゃないかな。

番組スタッフ:
 だから真逆にいるキャプテン・アメリカは童貞ですもんね。

堺:
 そう思うと誰もキャプテン・アメリカになりたくないよね、デッドプールがいいよね(笑)。あとアンチヒーローが好まれる理由はヒーローの中でもニヒル系が好まれる理由と一緒です。結局性格的に大きな欠陥を持っているから人間臭いんです。

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