「オタク文化とラップが結びつくとは誰も思ってなかった」 ニコニコ動画黎明期に花開いたラップ文化をレジェンドが語り尽くす【らっぷびと×タイツォン】
なぜニコ動を発表の場に選んだのか?
――では、どうしてニコニコ動画を発表の場に選ぼうと思ったのでしょうか。投稿し始めたのはまだニコニコ動画が出来たばかりのころだったと思いますが、反響はどうだったでしょうか。ニコニコで発表する前に2ちゃんねるで発表していた時期がお二人ともあったんですよね?
らっぷびと:
そうですね。
――そこからニコニコ動画が出来て、ニコニコに曲を載せてみようと。
タイツォン:
「Alkaloid」だったらレスの数が目標になっていたけど、やっぱりいろんなレスポンス、いろんなところからの意見を聞きたいっていうのはあって、それでいろいろ転々としていたんですよ。で、動画を流しながらコメントっていうシステムが「え、これめっちゃ感想もらえるんじゃない?」ってところからニコニコ動画に注目するようになりました。入った形は全然ラップからじゃないんですけど。
――ということは、最初あげたものはラップじゃなかった……?
タイツォンニコ動デビューはラップではなく歌ってみた?
タイツォン:
当時流行っていたニコニコ動画の組曲みたいなのを、ちょっとふざけて歌っただけとか。ニコニコではラップしかやってないって訳ではないんですよ。
――「歌ってみた」ですか?
タイツォン:
そうですね。割と変なこともやったりしていて、その中でたまたまラップも上げたいな、と。
――初めてニコニコに曲をアップしたときっていうのはどういう心境でしたか?
タイツォン:
新参者なので、とりあえず習わしみたいなのに沿って組曲あげたんですけど(笑)、さっき言ったサイトのレスポンス数より、全然多くのコメントもらえてたので「結構楽しい!」となって。
らっぷびと:
掲示板だとレス10行ったらいいほうだもんね。
タイツォン:
レス10って超伸びてる感じだったよね。
――ちなみにその時初めて上げていた曲って、今でも残っていますか?
タイツォン:
残っていると思います。まあ、ちょっと聴かないで欲しいんですけど。めっちゃ恥ずかしいんだけど。ホントに。これがよく伸びたなと思う。40万再生いったからね。ニコニコ上げたての頃はそんな曲ばかり上げていたっていう。
――そこからどういう過程を踏んで、ラップを投稿するようになったのでしょうか。
タイツォン、ニコラップへの道
タイツォン:
「Alkaloid」の時はラップしか上げてなかったわけだから、ラップは基本的に好きなんですよ。ピンとくるトラックがあった時に、やっと初めてニコニコでラップをあげたのかな。最初にあげたのが、フィンランドかどっかの民謡の曲を初音ミクに歌ってもらったっていう感じの曲があって、そのトラックにラップをのっけて、っていうのが多分ニコニコにあげたラップの初めての曲。
らっぷびと:
懐かしいね。
らっぷびと:
時代を感じるなあ。
――これがいつごろですか。
タイツォン:
2007年とかじゃないですか。10年くらい前。
――Alkaloidに曲アップした時と比べて反応の違いってありました?
タイツォン:
プレイヤーではない、「聴く専」の人からのレスポンスがあるっていうのはなんか新しい感覚だったんで楽しかったかな。
――ちなみに、らっぷびとさんがニコニコ動画に来たきっかけは?
なぜらっぷびとはニコ動を発表の場として選んだのか?
らっぷびと:
2ちゃんねるに『涼宮ハルヒの憂鬱』のオープニング曲「冒険でしょでしょ?」をラップしたものを上げて、それが2ちゃんねるのVIPで流行った音楽をまとめた仮想アルバム的なものに入ったんですよ。
そこで自分のラップにコメントが流れていて、「あっ!コメントもらえるんだ!」と。それを見てから自分のラップを上げるようになりましたね。ああ、そういう使い方もできるんだな、と思って。
――ダイレクトに動画を見ながらコメントを読めるってところが大きかったんですね。
らっぷびと:
そうですね。今までいた場所がプレイヤーのコメントばっかりだったんで、そこはもう、すごく簡単にコメントもらえるんだな、嬉しいと思った。
ニコラップ誕生のきっかけ
――ニコラップという言葉は2007年9月頃にらっぷびと、enju間で起こったBEEFの動画に「ニコニコラップ対決」というタグがついたのが元だとされています。
らっぷびと:
ニコニコ大百科の記述ですね。そうらしいですね。
――その当時のことを教えてほしいです。何が原因でBEEFが起こったのか。
らっぷびと:
いやー、もうあんまり覚えてないんだけど。
一同:
(笑)
ニコラップを盛り上げたBEEF
らっぷびと:
突如湧いてきたんですよ、enjuくんが。「Underground Theaterz」とか「Alkaloid」みたいな掲示板でもBEEFという文化はあって、dis曲が上がったらアンサーを返すという流れはあったんです。で、enjuからdisられた時に、アンサーを返そうっていうのが自然と起こりましたね。これのアンサーが『踏んどけ!らぶれたぁ』という曲なんですけど。
らっぷびと:
当時一緒にMIXをしてくれていた「みくすびと」というやつがいて、そいつがトラックも作れるやつだったんですね。「みくすびと」は元々別名義で一緒にやっていたんだけど、その中でMIXしてくれるから「みくすびと」という名前で、俺が「らっぷびと」という名前になった由来でもあるんですけど。それでenjuからBEEF起きた時に、みくすびとのトラックを借りて1日くらいで作りました。
――ちなみに、そのenjuさんという人とは、どこかで関わりはあったんですか?
らっぷびと:
俺、会ったことないんです。
――全く?
らっぷびと:
enjuにしても、そのあとにMCアリカって奴もいたんですけど。もう、両方とも正直会いたい気持ちはあったけど、全く会わないですね。
――イベントとかでも?
らっぷびと:
向こうから名乗られないと分からないというのはありますけど。顔を知らないし、俺。だから、enjuと名乗らずにコンタクトを取ってきている可能性はありますね。
――ネットならではですね。disがあったってことは、もうその曲がいきなりネットにポンって上がった感じなんですか。ニコニコに。
らっぷびと:
enjuくんのdis曲はそうですね。
――それをどうやって知ったんですか?
らっぷびと:
えーっと、どうやってだったかなあ……。その当時ニコラップってタグないですもんね。
タイツォン:
そうですね。本当どうやって知ったんだろう。
らっぷびと:
誰かから知ったんだろうな、「disられてるよ」みたいなのが、smで始まる動画のidをらっぷびとの動画に書き込まれて、「聴け」って感じだったと思いますね。
ニコラップタグが無き時代の検索方法
――ニコラップっていうタグがなかった時に、ラップの曲を検索する時どうしていたんですか。
らっぷびと:
俺ニコニコ動画でニコラップができる前にラップを検索したことないですね。
タイツォン:
ないですね。
――じゃあもう投稿するだけで。
らっぷびと:
ニコニコ動画の中にニコラップという文化があると思ってなかったし、プレイヤーがいるという発想がないですね。
――じゃあやっぱりその時点では例えばAlkaloidとかそういうところがメインで、そのプラスアルファとしてニコ動を使っていた。
らっぷびと:
そうですね。
――で、そこで起きたBEEFがきっかけでニコラップっていうタグが使われ始めた、というような感じですかね?
らっぷびと:
うん。
――本人たちは意図してなく、その文化が発生してしまったと。それで急に自分がdisられた時ってビックリしませんでしたか?
らっぷびと:
ビックリしましたけど、それ以上におもしれーと思いましたしね。あ、そうなるんだ。みたいな。
タイツォン:
確かに面白いよね。曲作るきっかけが出来るわけだからね。単純に。
らっぷびと:
そうそう。やっぱり、特にネット上だったし、顔合わせてらっぷびとみてえな、つまんねえことやっているんじゃねえよ、ってメンチ切られているわけじゃないし。
タイツォン:
うんうん。
らっぷびと:
ネット上で、ただdis曲を上げられているだけだから、こっちも、じゃファイティングポーズ取るよ。みたいな。いい試合にしよう! みたいな
――(笑)。プロレスじゃないですけど。
らっぷびと:
うん。