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なぜ中村太地は将棋を選んだのか?【叡王戦24棋士 白鳥士郎 特別インタビュー vol.21】

 6月23日に開幕した第4期叡王戦(主催:ドワンゴ)も予選の全日程を終え、本戦トーナメントを戦う全24名の棋士が出揃った。

 類まれな能力を持つ彼らも棋士である以前にひとりの人間であることは間違いない。盤上で棋士として、盤外で人として彼らは何を想うのか?

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 ニコニコでは、本戦トーナメント開幕までの期間、ライトノベル『りゅうおうのおしごと!』作者である白鳥士郎氏による本戦出場棋士へのインタビュー記事を掲載。

 「あなたはなぜ……?」 白鳥氏は彼らに問いかけた。

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メッセージ(広瀬章人八段)【叡王戦24棋士 白鳥士郎 特別インタビュー vol.20】


叡王戦24棋士 白鳥士郎 特別インタビュー

シード棋士 中村太地王座

『なぜ中村太地は将棋を選んだのか?』

 中村太地。
 名門・早稲田実業学校中等部から高等部をへて早稲田大学に進学。
 大学の学部は政治経済学部。早稲田を代表する、超難関学部である。
 入るだけでも難しいその政経で、中村はさらに『無党派層の政党好感度 政策と業績評価からのアプローチ』という論文を上梓。論文コンクールにおいて奨学金を得る。

 棋士としては、高校2年の終わりに四段昇段。
 2011年に史上2番目の高勝率を記録すると、翌2012年からコンスタントにタイトル戦に登場しはじめ、昨年は遂にあの羽生善治から王座のタイトルを奪取。
 NHK将棋講座の講師はもちろん、首都大学東京でも法学部の授業を受け持つなど将棋界以外の場にも活躍を広げ、その知名度は既に棋士としての枠を大きく超えている。
 極めつけは、NHK『NEWS WEB』や夕方の情報番組『シブ5時』にコメンテーターとして起用されたことだ。
 これは中村の棋才と人柄、そして深い知性と教養があってこその起用だっただろう。私もテレビを見ながら、中村が低く染み渡るような声で語るコメントと落ち着いたその佇まいに、常に感心していた。
 とはいえ真面目すぎるわけでもない。
 イベントでは「タイトルを取っても未だに冷凍食品とか食べてますから」など、場を和ます冗談がポンポン飛び出す。

 そんな中村を様々なメディアやイベントで見るにつれ……私の中で、こんな疑問が日に日に大きくなっていった。
 それは――

──よろしくお願いします。まず、タイトル戦に昇格しました叡王戦の印象についておうかがいしたいのですが。

中村王座:
 あ、そうですね。本当に新しい仕組みで、持ち時間の件もそうですし、本戦の抽選もそうですが、ワクワクするものを感じています。

──中村先生的には、どの持ち時間がお好きとかはあるんでしょうか?

中村王座:
 特にはないんですけど……じっくり考えるのも好きですし、早指しもスリリングな戦いになるので、それぞれに合った指し方をするようにはしています。

──先期の叡王戦決勝七番勝負はどうご覧になられました? 髙見先生、金井先生の番勝負でしたが。

中村王座:
 タイトル戦に新しく昇格してということもあり、本当にフレッシュな組み合わせになりましたよね。注目された中での戦いでお二人とも全力を尽くしておられるというのが伝わってきました。その中で髙見さんが初タイトル獲得となって。

──はい。

中村王座:
 獲得なさってからも多方面で活躍されて、という印象ですね。

──ありがとうございます。意外ですが、中村先生は今期が初めての本戦入りと……。

中村王座:
 そうなんです! 今までは本戦一歩手前のところで負けてしまうことが多くて、ちょっと……もどかしいというか。あと一歩で、というところがあったので。

──はい。

中村王座:
 今回はタイトル獲得に際してシードいただいたということで、このチャンスはせっかくいただいたものなので、大事にしたいと思います。

──その本戦ですが、いきなり相手が佐藤天彦名人ということで……。

中村王座:
 ああ! はい。

──佐藤名人の印象などは、いかがでしょうか?

中村王座:
 同世代の棋士で、普段からVS等で長く将棋をやっていただいてますし。将棋を指す以外でもよく話す棋士として、普段からよく交流させていただいていますので。

──はい。

中村王座:
 すごく近い存在でもあり、実績などでも尊敬できる棋士でもあり……という感じですね。

──本戦になりますと、昼過ぎの15時から対局を始めて、持ち時間3時間で夕食休憩ありという特殊なタイプの棋戦になります。そのあたりの対策というか、どんな方針で臨まれるかは決めておられるのでしょうか?

中村王座:
 あっ、そうですね……それはあまりやったことがないので。昼過ぎからだとだいたい早指し棋戦で、休憩ありというのはないので……そのあたりは、そうですね。これから考えたいと思っています。

──ここから先は、中村先生の人となりについておうかがいできればと思います。

中村王座:
 はい。よろしくお願いします。

──小学生のころ、サッカーと将棋のどちらを選ぶかで、かなり本気で悩まれたと。

中村王座:
 あはは。そうでしたね。

──どうして将棋を選ばれたのですか?

中村王座:
 すごく迷ったんですけど、やっぱり将棋のほうが楽しかったというのがありましたね。

──さらに小さいときはFBI捜査官になりたかったとも……。

中村王座:
 あはは。まあ、テレビとか見てて、かっこいいなぁ……というのがあって。子供だから、アメリカに行かなきゃいけないとかよく知らないものですから(笑)。

 ただ、元からいろいろなことに興味があって。それは今もですけど。いろんなことを知りたいな、研究したいなという思いがあります。

──なるほど。いろいろなところに興味が移りやすいお子さんだったんですかね?

中村王座:
 けっこう、知らないことばかりじゃないですか。大人になっても、ほとんどが知らないことばかりで……何ですかね? それこそ、身近にあるものでも……どういうふうにして椅子ができてるかとか、テレビが映るかとか、電力が供給されるかとか……。

──ああ! そうですねぇ。確かに確かに。

中村王座:
 知らないことばかりなので……全部を知ることは無理ですけど、そういうことを少しでも知りたいということですかね。

──専門的に学びたい、という興味がわいてくる感じでしょうか?

中村王座:
 あ、全然そんなことはないです! 広く満遍なく……という感じですね(笑)。

 突き詰めて、という感じではないんです僕は。どちらかというと棋士は突き詰めるタイプが多くて。趣味でも本当にのめり込むタイプが多いと思うんですけど。

──確かに。突き詰める方は多そうですよね。

中村王座:
 僕はわりと、満遍なく物事を知りたいなぁと。

──そうなんですね。そういう興味をお持ちになる中で、棋士への道を選ばれたと思うのですが……その途中で、悩むことなどはなかったのでしょうか?

中村王座:
 そうですねぇ……大学時代とか、友達が就職活動とかし始めたころはですね、『このまま自分は棋士として何十年もやっていくのかな』と思ったことはありましたね。いろんな世界がある中で。

 そこででも、覚悟を決めて、棋士で行こうと決めた感じでしたね。

──その覚悟を決めるきっかけのようなものはあったんですか?

中村王座:
 やっぱりそこも、将棋が好きかどうかですよね。

 自分が何十年も興味を持っていけるのか、考えた結果……。今でも新しい発見ばかりです。日々。将棋においてですね。わからないことばかりなので。

 だから、これは大丈夫だろうなって。そんな感じでしたね……。

──それは、新しい手とか、戦法とか、そういうことなのですかね?

中村王座:
 そうですね。本当に、一局指すと、今まで見えていたものが違うように見えたり。知らないことを知ることができたり。それこそ今だとAIが発達してきて、いろいろなことがわかるようになったり……。

 あとは、一局指す中で、やっぱり間違えてしまうこともあって。何回かミスが出てしまうこともあって。そういうことを、どうやったら上達できるのかと考えているうちに……まあ、日々は過ぎていくという。

──私は、中村先生がこれまでお書きになったものや、インタビューなどを読ませていただいて、一番印象的だったのが、B級2組に上がられたときの『昇級者喜びの声』(将棋世界2016年5月号)だったんです。

中村王座:
 はい。

──『本気になんてならなければこんなに傷つくこともないのに……』という一節。中村先生もそこで『なんだか恋愛のことみたいだが、もちろん将棋のことである』とお書きになったように、非常に詩的な言葉で。

中村王座:
 ああ……はい。

──不思議だったんです。喜びの声なのに、つらさばかりが書かれているようで。なぜああいう言葉が出てきたのか、それを教えていただけますか?

中村王座:
 そうですね……勝負の世界はみんな一生懸命やっているので、本気にならなければ勝てない世界なんですよね。

──はい。

中村王座:
 ただ、本気になったうえで負けると……より、キツイんですよね。

──はい……。

中村王座:
 言い訳ができない。まざまざと結果を突きつけられるので。

 将棋は運の要素も絡まない、審判もいない。本気でやったうえで結果が出ないとなると……もう、どうしようもないということで……。

 本気で取り組むことへの怖さ、というものもあると思うんですよね。

──ああー……。

中村王座:
 だけどそこを乗り越えた上で、本気でやらないと、勝てないっていうのもあって。本気でやってるからこそ傷つくこともある……という職業ですかねぇ。

──私の記憶違いだったら恐縮なのですが……中村先生が初めてタイトルに挑戦されたときのインタビューで、『本気でやって奨励会を抜けられなかった人を見たことがない』というようなことをおっしゃっていたと思うんですが。

中村王座:
 ああ! はい、はい、はい。

──中村先生が本気になられたのは、奨励会のころなんですかね?

中村王座:
 あれはですね……僕的には、本気でやらなくても奨励会を抜ける人はいっぱいいると思うんですね。

──あっ! そういう意味だったんですか。

中村王座:
 そういう人もいるけど、本気になって奨励会を抜けられなかった人は一人もいない。棋士になるにはもちろん才能も必要だとは思いますが、奨励会に入れた時点で、その才能は保証されていると思うんです。という意味だったんです。

 なので、自分も……。

──まだ本気にはなっていなかった?

中村王座:
 いや、そのときは本気でやっていたつもりではありましたけど……ただまあ、学校での時間もありましたし。

──はい。

中村王座:
 将棋に費やす時間とか、エネルギーを振り返ってみると……100パーセント本気だったかというと、そんなことはなかったなと思うんです。もっとできたと思いますし……。

──はー……。

中村王座:
 ちょっと言葉にするのは、センシティブな問題ですけど……ただ、奨励会を辞めていった数多くの方も……もちろんすごく本気でやってると思うんですけど……三段リーグでなかなか結果が出ないときに遊びに逃げてしまうとか。

──はい。

中村王座:
 奨励会ってすごく長いじゃないですか。6級から三段まで。その期間、ずっと本気でやり続けるのはすごく難しいんだって……そういうことを言いたかったんですよね。

──私は中村先生が、親御さんから大学に行って欲しいと言われて、それで奨励会を抜けるための環境作りとして中学受験を頑張られたわけじゃないですか。そうすれば、高校受験や大学受験の時期にも将棋に集中できるわけで……。

中村王座:
 ああ! はい。

──本気っていうのは、そういう環境作りも含めてということなのかと。そう解釈していたんです。

中村王座:
 なるほど。それも1つ、将棋のためではあるんですけど……でもやっぱり、学生生活の中で少しダラダラしてしまう時期もあったと思うんです。

 自分が、全てを将棋に捧げる生活ができたとは思えないし……それができている人というのは、本当に一握りの人だと思うので。テレビをボーッと見る時間とか。それももちろん、人間として当然必要な時間だとは思いますし……。

──はい。

中村王座:
 でも、そういう時間も全て将棋に捧げている人が棋士になれないことは、ないんじゃないかなと思っていたんですよね。

──なるほど……その一方で、本気にならなくても奨励会を抜けてしまうようなすごい才能というものも……。

中村王座:
 ああ、それはあります。いっぱいいます。

──そういうとんでもない連中がいるところで勝っていくには、本気にならないといけない。そう思われたわけですね。

中村王座:
 そうですね。はい。

──そういう意味で本当に、本気になろうと思われた時期というのは、いつごろなのでしょう?

中村王座:
 やっぱりタイトルとかを目指すようになった時期ですかね。

──2012年。棋聖戦でタイトル初挑戦を果たされた年ですね。

中村王座:
 棋聖戦のあたりから、自分の中で気持ちが変わったというのがありましたね。

 今まで漠然と抱いていたタイトルへの気持ちが……ちょっと身近になってきたことで、そことの距離がわかったり、見えていなかったものが見えるようになったり。

 『これは本気でやらないと近づけないな』ということを感じ始めて、やるようになったという感じでしょうか。

──そうすると、2012年で棋聖戦に挑まれたころから、本気になって取り組まれたということなんですね。

中村王座:
 うーん……でもそのあとも結果が出ない時期が続きましたからね。前よりも本気で取り組むようにはなりましたけど、今でも将棋に100パーセント捧げられているかというと、そんなことは全然なくて。

 今はタイトル戦の時期でもありますし、将棋に全てを費やしているつもりではあるんですけど、それでも……自分の性格的に『もうこれで100パーセントだ!』って言いたくないんだとも思いますけど。

──はい。

中村王座:
 まだまだできると自分でも思いますし、客観的にも……まだまだなんじゃないかなと。

──なるほど。中村先生は非常にイベントに呼ばれることが多いじゃないですか。タイトルを取られてからは、さらに増えたと思うんです。そういうことで勉強の時間が減ってしまうこともあると思うんですが、それも100パーセントだと思えない要因になっていたりするのでしょうか?

中村王座:
 いや、それは全く感じてはいないんですけどね。必要としていただいて、呼んでいただいて、それで普及のために尽くせるというのは心から嬉しいことですし。そこで自分にしかできないことができたら最高ですし。

──はい。

中村王座:
 そういったことを経験することで成長もできるんです。将棋って、技術的なものはもちろんありますが、精神的な面も大きいですから。壁にぶつかったときに対処する引き出しというのは、けっこう、普段の生活での経験が活きることが多いと最近は思っているので。

 何がどう活きるかというのは、けっこうわからないという面がありまして。

 私の場合、テレビの生放送とか、人前で喋ることを経験させていただいたというのは、何かに追い込まれたときにそれが気付かないうちに心の支えとなって、思い切り壁にぶつかっていくこともできるようになりましたし。

──なるほど……。

中村王座:
 もちろん、勉強時間が減っちゃったという面もあるので、それが悪い方向に出ることもあるかもしれません。でも全ての活動で共通して大切なのが『本気になる』ということなんじゃないかなと思うんです。

──確かに中村先生の解説などをニコ生で拝見していると、昔よりもかなり余裕があるようにお見受けするというか……けっこうイベントでも冗談をおっしゃるようになって。『王座になっても冷凍食品食べてます』とか。

中村王座:
 あはははは。

──そういうところが、あの昇級者喜びの声のタイトルでもあった『木鶏』に繋がるのでしょうか? 対局以外でも場数を踏んで、何事にも動じない精神的な安定を得られたということに。

中村王座:
 もしかしたらそうかもしれないですね。自分では気付かないところではあるんですけど。

──この昇級者喜びの声の話にまた戻ってしまうんですけど。

中村王座:
 はい。

──『一度失った情熱が目を覚ますことはないだろう』という一節。

中村王座:
 はい、はい。

──『冷めたスープを温めるのとはわけが違うのだ』こちらも非常に詩的なお言葉で、目を奪われたのですが……中村先生は、本気になって取り組んでから、情熱を失いそうになったことはあるんですか?

中村王座:
 ここ数年では、ないですね。

 ただそれが……いつ、どんな形で来るのか? というのはありますよね。

──はい。

中村王座:
 長年棋士として生活されているベテランの先生方は……常に情熱を燃やし続けていないと棋士を続けることはできないなずなので、無条件に尊敬できるなと思いますね。

 1回冷めてしまうと、再び燃やすのは、一度目に燃やすときよりも何倍ものエネルギーを必要とすると思いますので。

──そうですね。本当に……。

中村王座:
 なので……願わくば、ふふふ。一度も切れないでほしいなと思いますね。

──ありがとうございます。改めて……なぜ中村先生が将棋を選んだのか、その理由をお聞かせ願いますか?

中村王座:
 やっぱり将棋は、生涯を捧げるに値するというように思いましたね。

──はい。

中村王座:
 ただまあ僕も、生まれ変わったら棋士以外の職業に就きたいなと思うんですよね。

──えっ。

中村王座:
 人生が何度もあったら、ありとあらゆる職業を経験してみたいと思います。

 ただ、今生では……ふふっ。将棋だな! って。

──私は、中村先生であればどんな職業にでも就ける。外の世界もご存知で、そこでも活躍できることを証明しておられて。選択肢が多いからこそ、迷いも生じやすい。だから情熱が冷めることを恐れておられたのかと思ったんです。

中村王座:
 ああ……なるほど。

 けど仮に将棋しかなかったとしても、情熱が冷める人は冷めると思いますし、冷めない人は冷めないと思うんですよ。

──あっ。確かに……。

中村王座:
 いや、どうなんでしょう? ふふふふふ。

──どうなんでしょうね?

中村王座:
 もしかしたら、そういうこともあるんでしょうかね?。

──奨励会を辞められる方でも、お医者さんになりたいと言って辞めて、本当にお医者さんになって活躍しておられる方もいらっしゃるわけじゃないですか。だからそういう情熱の冷め方もあるのかなって。

中村王座:
 あー、なるほど。もしかしたらそうですよね。

──あの……中村先生が理想とする棋士の姿とは、どういうものなのですか?

中村王座:
 僕はやっぱり、トーナメントプロとしてトップにいて、普及にも邁進して。棋士にしかできない……替えの利かない唯一の存在であり続けることが、理想としてありますね。

──それは個性ということなのでしょうか?

中村王座:
 そうですね、個性であったあり……たとえばイベントなら『この人に来て欲しい』とか、『この人にしかできない』活動だったり。

──はい。

中村王座:
 棋士だったら誰でもいいんじゃなくて、『中村太地を呼びたい』と言っていただける存在でいたいですね。

──そのために中村先生が大事にしておられるというのは、どういうことなのでしょう?

中村王座:
 一つ一つの仕事であったり、対局であったり、一手一手を丁寧に、必死に、取り組むことですね。

 いま、30歳になりまして。

──はい。

中村王座:
 これまでの20代というのは、がむしゃらにインプットの時期。30代というのは、それを形にできる10年間であれたらなぁとは思うんですけど。

──形というのは、結果という意味でしょうか?

中村王座:
 そうですね。対局の結果ですね。

──叡王戦がタイトル戦に昇格し、八冠の時代が訪れました。それは中村先生にとって、目指すべき目標が増えたということなのでしょうか?

中村王座:
 やっぱり対局が多いことは嬉しいですし。それだけ将棋界が注目を集めているということですので……そうですね、嬉しいこと以外の何物でもないです。

 意外だった。
 私はてっきり、中村という人間は『生まれ変わっても棋士になる』と言うタイプかと思っていた。
 しかし中村は飄々として『生まれ変わったら別の職業に就きたい』と言った。
 その言葉は本心だろう。中村の声には、迷いを捨て去った者だけが持てる、透明感があった。
 だが同時に……それはやっぱり、たった一つのものだけを生涯懸けて愛し続けるという告白でもあるのだ。

 何度でも生まれ変われるのだとしたら、ありとあらゆる職業に就きたい。
 でも。
 今生では、将棋を――

 迷いなくそう言い切れる中村のことを眩しく思ったし、中村ほどの男にそう言ってもらえる相手に、羨ましさすら覚えた。

 ……なんだか恋愛のことみたいだが、もちろん将棋のことである。


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