変体仮名(へんたいがな)を覚えるのはたいへん。アプリ【みんなで翻刻】で、古文書を読もう。
京都大学とniconicoがコラボして、【みんなで翻刻してみた】プロジェクトがスタートしました。【みんなで翻刻してみた】プロジェクトとは、京都大学古地震研究会のメンバー橋本雄太さん(京都大学大学院文学研究科)が開発したWebアプリケーション『みんなで翻刻』を活用し、過去の地震など、古文書の翻刻をニコニコユーザーの皆さんと一緒にWeb上で行って、最終的には、防災や減災に役立てようというプロジェクトです。
加納靖之さん(京都大学防災研究所助教)、中西一郎さん(京都大学大学院理学研究科教授)が解説として、京都大学大学院文学研究科の天野たまさんがアシスタントとして出演しました。
橋本:
京都大学古地震研究会とニコニコ動画がコラボして、本日より【みんなで翻刻してみた】プロジェクトをスタートいたします。まずは、これからみなさんで一緒に読んでいく地震史料とはどんなものなのかみていきましょう。
古文書を読むのはすごく大変、変体仮名とは?
加納:
これは、【みんなで翻刻】というアプリの中に入っている史料なんですけども、これは【地震年代記】というタイトルですね。この活字だと、「地震」と書いてあるやん! と、すぐわかると思うんですけど、本文の方にいくと、安政2年とか日付も書いてあります。こういう史料を読んで地震について調べるということになります。
橋本:
ありがとうございます。中西先生からもお話がありましたけど、古地震学というのは文理横断的というか、歴史学と自然科学の融合分野になるわけですね。
私も、もともとは、文学研究科出身なんですが、プログラムなんかも書いているんですけど、横にいる天野さんは、歴史学の専門ですね。加納先生、中西先生は、理学系のご専門をしています。
ということで、そういった人たちが協力しながら読むのが、古地震研究という分野になるわけです。先ほど加納先生、中西先生からもお話がありましたけども、地震の史料を読んでいくわけですけども、その史料を読むことが、大変難しいわけです。
なぜその史料を読むのが大変なのか、どんな風にそれを読んでいくのかっていうことについて、説明したいと思います。
橋本:
何回か「くずし字」という言葉が出てきましたが、ご自身の研究を読んでいくためには、「くずし字」を読んでいく必要があります。ごく簡単にいえば、「楷書体」ではなくて、江戸時代に書かれた筆で、さらさらと書かれた文字のことです。
現在では使われていない「変体仮名」や「草書体」で書かれているため、現代人には読みにくいので、史料を読む障害になっています。
もうちょっと、詳しくご紹介したいんですが、「くずし字」の中にも、「平仮名」と「漢字」があります。「平仮名」にあたるものが、この「変体仮名」と呼ばれるものです。これは現在では使用されることのない「平仮名」の異体字をまとめてさす言葉です。
歴史的には江戸時代まで、ずっと変体仮名という平仮名の一種が使われていたんですが、1900年の学校改正で、公教育の場では「変体仮名」の文字は使われなくなりました。どういうものがあるかというと、こちらにスライドで書いてあります。
『あ』と『か』の成り立ち
橋本:
例えばこれは「阿(あ)」という文字ですが、「阿呆」の(あ)「阿片」の(あ)とか、変な例ばかり出てきますけど、みなさん普段使われている「平仮名」が漢字から派生したものであるということは、よくご存知だと思います。
例えば普段みなさんが使われている「あ」という文字は、「安全」の「安」という文字から派生したものです。江戸時代以前、厳密なことをいうと明治時代以降も使われていたわけですけども、1つの「あ」という音を表すためにも、複数の文字が使われていたわけです。
例えば、この「阿」という文字は、「あ」という音を表すために使われていたわけです。ですから、1つの音を表すために、複数の文字があったわけです。
こういった「平仮名」を読むだけでなくて、漢字も沢山使われています。「か」はどれですかというコメントがあったので、天野さん、書いてみましょうか。
天野:
もともとが、可能性の「可」の字で、ここを1個目2個目3個目と書いて、これをものすごく小さく書いて、「、」と書いて、あとはこう書くようになって、さらに省略されて上の「、」までなくなって、こうなります。
これがさっきのように、「り」みたいに、ほとんどここがなくなってしまって、こんな形になって、ちょぼっとだけあるみたいな形になっていって、これで「か」と読みます。
『金』のくずし字、読めますか?
橋本:
では漢字の方に行きましょうか。
今でも使います。去年の「今年の漢字」みなさん、覚えておいででしょうか。コメントに出ている通り「金」という字を崩すと、こうなりますね。
中西:
これは、今の「金」ですね。ここをこうやって、ここを書くと、早く書けないわけですね、だから、ここをこうやって、後は、こう。
橋本:
「将棋の「と」「金」もそうか。」(コメント)って、そうですね。
中西:
これでやると、例えば「今日」ですか。これも、「人」(ひとやね)をこんな感じに崩します。
天野:
「将棋の崩し」(コメント)とか書いてはりますね。
橋本:
さっきの「変体仮名」ですと、蕎麦屋の看板なんかよく出てきますね。「くずし字」というものがどういうものか、ざっくりと説明させていただきました。