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『ドラゴンクエストⅢ』は「プレイヤーが報われた気持ちになれる」ゲームである 面白さの秘訣はテキストに込められた“温かな人間味”にあった

「制約」の中に描かれた人間味あふれるテキスト

ピサロナイト:
 ファミコン時代の制約のひとつは、間違いなく「容量」の問題で、中でも考えられるのは、「表現と描写の限界」という制約でした。キャラクターを、ビジュアルで仔細(しさい)に表現できない以上、重要になるのは、やはりテキストになります。

 そして、『ドラクエⅢ』のテキストを注意深く読んでみると、いくつか傾向があることに気がつきました。

 ひとつは、人間の状態や感情をなぞらえた表現が多用されていることです。例えば、困っている人の様子を表す「オロオロ…」や、悲しんでいる子供を表現した「ぐすん」踊り子の踊っている姿を擬(なぞら)えた「シャンシャンシャン」などです。容量の都合上、限られた文字数しか使用できず、さらにひらがなと、一部カタカナだけで記された短い台詞の中で、何を優先して表現すべきか。それは、人間の“表情”と“感情”だったと思います。

 たった数行の短い台詞の中で、それぞれの表情や感情を伴った、“人間味”を感じることができ、親しみ易さのなかにも、“知性の裏付け“が感じられ、それを丹念に積み重ねた結果、ドットで描かれた世界観のなかにも、プレイヤーはドラクエに“温かみ”を感じるようになったのだと思います。

 これは『ドラクエⅢ』のゲーム内容全般に言えることですが、容量に制限があったことで、いわゆる“遊び”の部分も含め、必要最小限の素材だけが残り、ロールプレイングゲームの本来のおもしろさが際立ち、結果として、洗練された内容に仕上がった。これが、『ドラクエⅢ』が傑作となった、ひとつの要因ではないかと考えています。

 限られた容量の中に隠された、人間味あふれる表現の数々。RPGの金字塔と言わしめたゲームシステムに留まらず、プレイヤーの心にささやくようにつくられたテキストや物語が、今なお衰えぬ『ドラクエ』の人気を支えているのかもしれません。

 本動画をノーカットでご覧になりたい方は、ぜひ下記から視聴してみてください。


【ゆっくりゲーム解説】ドラクエ3改訂版-ゲーム夜話【第1回-前編】


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