「糞尿を甘い香りに」が介護を救う?小飼弾が過去のイグノーベル賞授賞研究を語る
今年のノーベル医学・生理学賞の受賞者に東京工業大学栄誉教授の大隈良典氏(71)が単独で選ばれました。大隈氏は、細胞が不要になったタンパク質を分解する”オートファジー”と呼ばれる仕組みを解明。3年連続となる日本人のノーベル賞受賞に、国中が沸きました。
10月3日に放送された『小飼弾のニコ論壇時評』では、ノーベル賞およびノーベル賞のパロディであるイグノーベル賞の話題に。先日話題になった「バキュームカーの匂いをチョコの香りにする」ニュースに対して「牛糞からバニラの香りを抽出する研究が過去にイグノーベル賞を受賞している」「糞尿の匂いを制御することは介護にとって福音」と語るその真意とは?
「人間の身体が常に新鮮な身体に入れ替わる仕組み」を解明した大隈氏の研究
小飼:
人が一年間に代謝する食べ物や飲み物の合計量は、体重の何倍だと思いますか?
山路:
100倍とか、200倍とか?
小飼:
さすがにそれじゃ、モグラみたいに小っちゃくなっちゃう(笑)人間の場合はおよそ体重の10倍だそうです。ひと月ちょっとで身体まるまる一個が入れ替わる計算になるんですよ。
じゃあ、エネルギーだけ代謝して、タンパク質は機械の部品だから壊れるまではずっと使うと思うじゃないですか。僕もぜい肉がありますけど、実はこれ、何年も前からためこんでるんじゃなくて、ぜい肉もちゃんと入れ替わってるの。
山路:
常に新鮮なぜい肉が(笑)。
小飼:
そう、あなたのぜい肉は常に新鮮なんですよ。ちゃんと代謝された分、最後は息やおしっこになって出ちゃうんです。でも、入れ替わるってことは、作るほうだけじゃなくて壊すほうもちゃんとしなきゃいけない。大隈さんは、まさにその仕組み(オートファジー)を解明したんです。
タンパク質を壊す部分がうまくいかないと、たとえばアルツハイマー病になったりする。あれは、ベータアミラーゼというタンパク質の形が変わっちゃって、それがどんどんたまっちゃうことで起きるから。ちゃんと片付けるものを片付けられないと、身体というのはうまくいかないわけですよ。
介護に福音!? バキュームカーの匂いをチョコレートの香りに!
山路:
ノーベル賞つながりで、イグノーベル賞の話もいってみましょうか。
小飼:
最近、バキュームカーの匂いをチョコレートの香りにする技術を開発したっていうニュースがあったけど、イグノーベル賞の研究で、牛糞からバニリン(バニラの香り)を作ったっていう研究が、もうすでにあるんですね。
※2007年に山本麻由氏がイグノーベル化学賞を受賞。
山路:
牛糞から? 匂いって、不思議ですよね。コーヒーの中に含まれるいい匂いは、実はゲロの匂いと共通してる、みたいな。
小飼:
実は匂いっていうのは、人間の五感の中でいちばんわかっていないもののひとつなんです。たとえば、どうやって人間が色を見てるのかっていうのは、もう三原色っていうのがわかっていますよね。でも匂いの場合、何種類あるかすら全然わかっていない。
山路:
まだそういうレベルなんですか。じゃあ、バーチャルリアリティーで好きな匂いをかげるとかっていうのは、ずいぶん先のことになる可能性があるんですね。
小飼:
そもそもデジタイザーが作れない。今のところ。味に関しては、”醤油でプリンの味を再現する”というのを機械的にできるっていうところまで来てるじゃないですか。
山路:
それにしても、バキュームカーの匂いをチョコの香りにっていうのはすごいものがありますよね。
小飼:
すごいヘンだと思うでしょ? でも、これから重要になりますよ。われわれはもっと糞尿と直にふれあう機会が増えざるをえないから。糞尿の匂いを処理できるということは、アレですよ。じいさんばあさんの介護が、これでラクになるでしょ。
山路:
ああ、そうか! 介護なんかだと、匂いがいちばんきついところになるから!? でも、おじいさんからチョコレートの匂いがしてくるなら、もうちょっと優しくしようと思えたり。
小飼:
そう! そういうことです。