ギャラはどう変わった? 紙との違いは? 昨今のウェブライターを取り巻く環境について徹底討論【話者:中川淳一郎・ヨッピー・朽木誠一郎】
ライターがタレント化していく流れは止められない
中川:
お二人はライターが顔出しすることについてはどう思っています? ライター業界って昔はギラギラしていたけど、今はキラキラしているという風潮が強い。それこそ「キラキラライター」「読モライター」なんて言われているけど、そこについてはどう思います?
ヨッピー:
その流れは仕方ないと思いますけどね。特に広告記事ともなれば、知らない人よりも顔なじみから紹介された方がいいと思うんですよ。
中川:
となると、ライターがタレント化していく流れは必然?
ヨッピー:
必然とまでは思わないかなぁ。顔出し必須だとは思ってませんし。署名があって、その人の文章だと分かれば、顔を出す必要もないのかなと。実際、顔を出してないのにウケまくってるライターさんはごろごろいますしね。
中川:
たしかに署名記事ってウェブになってからの方が意味が出てきました。読者として、「この人が書いているんだ」って気が付きやすくなったのはウェブのおかげだと思います。
朽木:
ライターが、「自分はこのメディアで書きました」と言いたいウェブメディアが増えたというのも大きいですよね。
中川:
SNSで、自分が書いた記事を告知することができる時代になったということも大きいだろうし。
ヨッピー:
あと、今の時代は単純にライターの仕事が増えたってことだと思うんですよね。紙の時代は、ライターって文章を書いているだけで良かったけど、ウェブに移行してきたことで、企画を考えなきゃいけないし、撮影もやらなければいけない、モデルもやらなければいけない、ましてや告知することも当たり前になってきました。そうなると、ライターがタレント化していくのはしょうがないと思います。
朽木:
僕は、ニュースは飽きられないと思って、ニュースの世界に飛び込みました。ニュースが飽きられる世の中って、ちょっと怖いじゃないですか。きちんと取材してきちんと書く力が備われば、YouTuberじゃないですけど、「もっと過激に、もっと面白いものを」というスパイラルから抜け出せるのかなぁと思って、私は記者をやっていますね。
PVやリツイート数など、ウェブライターにノルマはあるのか?
中川:
なるほど。ユーザーから、「どれくらいのPVを目標にしているの?」という質問が届いていますが、お二人はどれくらいを目安に考えています?
朽木:
Yahoo!ニュースやスマートニュースといった、プラットフォームがあるところ、ないところなのかで、全く違ってくると思うんです。Yahoo!ニュースなどになると、記事1本で数百万PVとか普通にありえるので一概には言えません。
また、広告記事なのか普通の記事なのかで、目標とするPVも変わりますよね。広告をやらない僕としては、普通の記事であれば10万PVくらいは求めたいところはありますね。
中川:
広告の場合って、ノルマみたいなものはあるんですか?
ヨッピー:
クライアントに目標PVは聞きますけど、ノルマではないですね。あくまで目指すべき目安というか。
中川:
じゃあ、「ノルマを達成しました!」みたいな報告はないんですか?
ヨッピー:
これくらいTwitterのリツイートがありました、Facebookのいいね!がこれくらいの数ですとか、そういった報告ですね。僕自身も、もともと媒体としても強くないメディアで10万PVくらい取ることができたらホクホクという感じです。
中川:
それって払った分の対価は示したよということですよね?
ヨッピー:
そうなりますね。
朽木:
僕がウェブメディアに入った当初は、広告では1PV=50円って言われていたから……。
ヨッピー:
広告記事で2万PV取ったら100万円ですから上出来ですよ。
朽木:
そういう相場観でしたね。
ヨッピー:
成功報酬でもいいっちゃいいんですけど。めちゃくちゃ当たって広告で何十万っていうPV稼いだ時は「成功報酬にしておけばよかった……!」とか後から後悔します。
朽木:
いや、それはヨッピーさんだから言える発言ですよ(笑)。
ライターは数字を取るのが仕事であり、メディアはそれを活かすことが仕事
ヨッピー:
フォロワー数が多くても意外に(リツイートや記事のPVが)伸びないこともあるし、難しいところだよね。
面白そうな質問で「新R25はどうですか?」ってコメントが流れてきましたよ!? 中川さん、どうですか?
中川:
オレは『R25web』を8年間やっていたんですよ! それなのに終わりやがって!
ヨッピー:
(笑)。現在は、リクルートが手放してサイバーエージェントが買ったことで、『新R25』として生まれ変わったんですよね。そこの新編集長となった渡辺さんが先日Twitterで、「人気のあるライターさんに書いてもらうと数字が取れる反面、そのライターの記事として認知され、どの媒体に掲載されていたのまでは覚えてもらえない」的なことをおっしゃってました。
キャラの強いライターに仕事を依頼した結果、おもしろい記事を作ってくれて数字も取れた。
— 渡辺将基(新R25編集長) (@mw19830720) March 10, 2018
しかし、完成した記事は「そのライターの記事」でしかなく、「どのメディアの記事なのか」はほとんど意識されない。
ライターの評価は上がれど、メディア側には評価が蓄積しない。
そういう事例が増えてる。
中川:
ほうほう。
ヨッピー:
ホント、しょうもないことを言ってるなって(笑)。ライターって数字を取ることが仕事なんだから、実際に数字を取れてるならいいじゃないですか。むしろ、その数字を活かしてメディアとしての価値を高めていくのが編集長の仕事だと思うし、実際ちゃんとブランディングできてるメディアだっていっぱいあるのに、そんな発言をするって編集部が無能であることをさらけ出しているようなもんでしょ。今まで書いてくれたライターさんに対しても失礼ですよ。
中川:
いやいや(笑)。
ヨッピー:
僕だって(ヨッピー氏が編集長を担当している)『SPOT』で人気のあるライターさんに書いていただいてますけど、きちんとウェブサイトとして全体的なブランディングにつながるようにあれこれ考えてますもん。ウケたものが全部ライターさんの手柄になって自分のメディアの成果につながらないなんて思ったことはありません。
中川:
オレは編集者の立場として、その媒体を契機に羽ばたくような人材を輩出するのが編集者であったりメディアの役割だと思いますから、編集者とライターの関係性が良好であるにこしたことはないと思いますけどね。
朽木:
実際にその発言は現場ではどう受け止められていたんでしょうね。
ヨッピー:
聞いたらやっぱり怒っていましたよ(笑)。「やる気なくすわ~」みたいな。こういう悪循環に陥るからブランド価値が付かないんだろって思いますけどね。
クソみたいなウェブメディアはなくなるのか?
中川:
さて、改めてお二人に「クソウェブメディアはなくなるのか?」ということをお伺いしたいんですけど、率直にどう思います?
ヨッピー:
なくならないでしょ! 良くはなっていますけど、クソウェブメディアはなくなることはないでしょう。メディアに限らず、SNSでステマする人だってなくならないんですよ!?
今だって、とある元モーニング娘。のメンバーのInstagramがえらいことになっていて、彼女のInstagramには「ひと月に何種類のシャンプーをするんだよ!」っていうくらいいろいろなシャンプーが登場していますから(笑)。
朽木:
(笑)
中川:
やっぱりなくならないか(笑)。でも、常に我々がクソメディアウォッチャーとして見張っている限り、いつかクソなことが白日の下にさらされるわけですから、メディアの方々も緊張感を持って運営していっていただければと思います。
ヨッピー:
僕らも緊張感を持ってやっていきたいですね。ただしもうこれ以上敵を作りたくないです。今年の目標は「みんなと仲良くする」です!
中川・朽木:
(笑)
中川:
さっき、『新R25』にケンカを売ったばかりじゃないか!
ヨッピー:
いやいや(笑)。皆さま、穏便にいきましょうね。ウェブメディアがいっそう発展していくことを望んでいる気持ちは同じですから!
中川:
その通りだ! というわけで、次回もウェブメディアを健全化するための放送をお届け予定ですので、皆さん、期待して待っていてください!
一同:
ありがとうございました!
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