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ボカロ動画『ワールドイズマイン』絵師のredjuiceさんが『ギルティクラウン』『虐殺器官』キャラ原案を手掛けるようになるまで

 ニコニコのボカロ文化が花開き始めた2008年。当時のボカロシーンを代表する「supercell」「livetune」という2つのユニットの絵師として活躍していたのがredjuiceさんである。supercellで「ワールドイズマイン」のイメージイラスト、livetuneでメジャーデビュー作「Re:package」のジャケットイラストを手がけたredjuiceさんは、その後TVアニメ『ギルティクラウン』や伊藤計劃『虐殺器官」のキャラクター原案といった大仕事を務めることになる。

 ニコニコでは、初音ミク誕生10周年を迎えるにあたり、ボカロ曲の歴史を彩ってきた絵師の方々へのインタビューを敢行。前回の三輪士郎さん(supercellで「恋は戦争」「初めての恋が終わるとき」のイラストを担当)に続いて、今回はredjuiceさんにまだサラリーマンとして働いていた当時の制作秘話や、その後、専業イラストレーターとして羽ばたいていった足跡を語ってもらった。

取材・執筆/森祐介

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ワールドイズマイン

お絵描きチャットが縁でsupercellに加入

——まず、ニコニコへの投稿の話の前に、そもそもイラストを描き始めたのがわりと遅かったと聞きました。

 東京に引っ越して来たばかりの時で、2004年ぐらいですね。バイトをしながら3DCGの専門学校に通ったり半ニート状態の時期で。割と暇だったので、パソコンを自作して、自宅でCGを作ったり、ホームページを作ったりして、その流れで初めてインターネットを体験しました。当時はまだISDN回線でした。

 なんか面白いもんないかな〜っと色々探していたら、お絵かき掲示板というものを見つけたんですよ。絵が特別上手かったわけじゃないんですけど、なんとなく描いてみようと思ったのがきっかけです。

——最初に投稿したのはどこのサイトだったんですか?

 どこだったかな、個人サイトだっと思うんですけど。そのうち「Oekaki BBS.com」とか、有名どころに投稿するようになって。絵を描くのが大好きというより、交流が楽しかったっていう感じです。

——のちにsupercellで一緒になる三輪士郎さんとも、交流があったんですね。

 そうですね。たまたま絵チャットを一緒にしたり、そこからオフでも会ったりして。ぼくは三輪さんのマンガ「DOGS」が好きで、ことあるごとに「好きです、ファンです」って追っかけていました(笑)。

『DOGS / BULLETS & CARNAGE』(作者:三輪士郎)
画像はAmazonより

——前回のインタビューで、三輪さんから直接supercellに誘われたとお聞きしました。

 最初はコミケの時だったと思います。三輪さんがぼくのブースに来て、「ボーカロイドを使って、グループで面白いことをやろうとしてるんですけど、どうですか?」って。

 すごい軽い気持ちで、「やりましょう」って答えましたね。当時は、具体的にやることは何も決まっていなかったんですけど、ボカロの動画は一応見ていたんで、どういうものかは知っていたので。まさか、ゆくゆくあんなに大事になるとは思ってなかったですけど(笑)。

——どんなきっかけでニコニコ動画やボカロを知ったのでしょうか?

 一時期、二次裏(二次元裏@ふたば)の住民だった時期があって、としあき【※】だったんです(笑)。そこで話題になって見始めたのかな。当時ボカロが始まったくらいの時期で、けっこう見ていました。

※としあき
ふたば☆ちゃんねる、特に二次元裏板(虹裏)の住人のことを指す

——その後イラストを担当することになる音楽ユニット「livetune」の動画も、この時期に見ていたんですか?

 そうですね。色々みてるなかで特に「ストロボナイツ」が好きでした。2007年の冬コミで、よせばいいのに、作者のkzさんに直接会いに行ったくらいで(笑)。「ストロボナイツ」のイラストを描いてプリントして、「感動しました」って伝えるために。その時は会えなかったけど、イラストを渡しておいて。
 そしたら、その後kzさんから「メジャー版を出す時に、ジャケットを描いてほしい」とお声がけいただいて。願ってもないことだったので、感激極まりない、という感じでした。

——supercellの動画「ワールドイズマイン」は非常に大きな反響がありました。

 個人的には、ユーザーの反響ももちろんですが、三輪さんに「この絵好き」って言ってもらえたのが一番嬉しかったですね。どういう言葉だったかははっきりは憶えてないですけど。

——ということは、そのくらい尊敬している三輪さんに誘われたということで、プレッシャーもあったのでしょうか。

 もう、すごいプレッシャーですよ! ぼくなんて、当時何のキャリアもないぺーぺーじゃないですか。supercellで一緒だったhukeくんもバリバリのプロで、三輪さんは商業デビューしてから10年以上プロとして活躍しているマンガ家さんで。そういう方々に認められたっていう嬉しさは大きかったです。

——このイラストを描くにあたって、どんなことを意識しましたか?

 今自分で改めて見ると、技術的に拙いところがたくさんありますね……。特に意識したことはなかったんですが、この時期にたくさん初音ミクの絵を描いたことで、後の自分にかなり大きい影響があったんですよ。

——どのような影響ですか?

 しばらくの間、オリジナルデザインでツインテールが描けなくなって。初音ミクのデザインってアイコン性が高いんです。緑糸の髪、ミニスカとニーソとか、ミクの要素を使うと何を描いてもミクっぽくなっちゃう。ツインテールの呪いというか、ツインテール書けない病、僕だけじゃなかったと思います。そのくらい影響力がありましたね。

——ボカロ関連のご自身のイラストで、代表作だと思うのはどれでしょうか?

 仕事に順番をつけるのは、失礼だと思うので……逆にアンケートをとってみたいですけどね。自分が考える順位とユーザーからの順位に差があると思います。
 強いて挙げるなら、「Project DIVA」で描いた「Tell Your World」の絵が気に入ってますね。

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