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あなたの知らないディープ同人誌をひたすら取り上げる新連載!——人工衛星に魅せられて”人工衛星本”を作ってしまった男。その宇宙への熱い思いを聞いてみた

 作者の並々ならぬ愛情と情熱、そして私財を注ぎ込んで生み出される同人誌――そこにはディープで、マニアックで、だからこそファンの心を掴んで離さない世界が広がっています。そんな世界の一端をしっかりと掘り下げながら紹介していくのが、ニコニコ発の企画「薄い本プロジェクト」です。

 その第一弾として先日、 写真家・編集者の都築響一氏やでんぱ組.incの夢眠ねむさんを招き、ニコニコ生放送「あなたの知らないディープ同人誌の世界」を実施。同人誌のジャンルの中でも特にディープな情報系4サークルを選び、その濃ゆい内容を紹介しました。

 そんなディープな同人誌を取り上げ、作者にそのアツい思いをひたすら聞いてみる新連載が、ニコニコニュースでも始まります!

 今回は前回のニコ生に出ていただいた4サークルの中から、人工衛星をテーマにした同人誌「MABES『じんだい』」を製作した金木犀さんにインタビューを行いました。人工衛星について踏み込んだ専門的な内容ですが、実は文系の研究者という金木犀さん。どうして人工衛星に魅せられ、それを題材とした同人誌に情熱を注ぎ込むようになったのでしょうか。あふれ出る宇宙への思いを熱く語っていただきました。

(Photo by Getty Images)

取材・文/透明ランナー


とにかく情報が少なかった人工衛星「じんだい」

――同人誌「MABES『じんだい』」、人工衛星「じんだい」についてひたすら解説するというマニアックな内容ですが(笑)、まず「じんだい」ってどんな衛星なんでしょうか。

金木犀:
 「じんだい」は1986年に打ち上げられた、日本初の相乗り衛星(大型ロケットの打ち上げ余剰能力を活用して、主衛星とともに打ち上げられる人工衛星)です。英文表記の略称から「MABES」(メイビス)とも呼ばれます。

MABES「じんだい」―日本初・相乗り衛星の軌跡―
画像はニコニコ静画より

――なぜ「じんだい」をテーマにした同人誌を作ろうと思ったんですか?

金木犀:
 なぜかJAXAのHPの人工衛星紹介にも詳細がなく、JAXA監修の本を見てみても怪しいカット図しか載っていないんです。最初は「冷蔵庫ぐらいの金色の箱」、ということしか分かりませんでした。好奇心旺盛な男の宿命として、分からないものほど絶対知ってやろうという気持ちになりました(笑)。

――なるほど、その気持ちはわかります(笑)。

金木犀:
 「じんだい」について知りたい! と周りにも話していたら、プロジェクトマネージャー(計画の最高責任者)を務められた先生に紹介して頂けました。折しも打ち上げ30周年が目前で、資料も使わせていただけることになった上、プロジェクトマネージャーに内容の監修もしていただけるということになりました。

――それはラッキーでしたね。

金木犀:
 本当にそうです。この上ない環境が揃い、これは本を一冊作れるぞ、となりました。

――製作期間はどのくらいですか?

金木犀:
 プロマネの先生との出会いが2014年秋なので、そこから結実するまでに2年少々かかりました……。資料を揃え取材を終えて、実際に文章を書き始めてからだと、4ヶ月です。

(同人誌 MABES「じんだい」―日本初・相乗り衛星の軌跡― より)

――まさに苦労の結晶ですね。

金木犀:
 製作にあたって苦労したことは2つあります。ひとつは、自分が理工学を専門には勉強をしてこなかったので、論文や報告書を読み解くときに専門用語や概念を一から勉強しなければならなかったこと。2つ目は、先生を紹介してくれた方と二人で原稿を分担したのですが、彼の原稿がなかなか上がってこなくて……。締切間際は胃が痛かったです。

――同人誌の編集者あるあるですね。仕事ではないので強く言うわけにもいかない、という。

金木犀:
 その通りです。また、当初使おうとしていた図版が使えなくなったときは、急遽友人に書き直しを頼んだり。想定外が多かった本でした。

――特におすすめの記事はありますか?

金木犀:
 同人誌の前半で開発史、後半では衛星自体の製作と実験内容について書いています。特に「じんだい」の機体構成は力を入れて書きました。貴重な資料になっていると思います。

――表紙がかっこいいですね!

金木犀:
 ありがとうございます。自分でもとても気に入っています。内容が解説本なので、表紙は「報告書っぽく」というコンセプトにしました。メインビジュアルのCGを前面に出し、背景に図面を敷きました。明るく見せたいので背景は白と。友人にもアドバイスを貰っています。

――デザイン面でもずいぶんこだわっていますよね。

金木犀:
 絵心がないので、図面などはできる方にお願いしようと思っていました。表紙のカットモデルのCGと、本文中の機器配置図は、こちらの要望をかなり聞き入れて描いていただけました。
 また、本文は読みやすさ重視で組版しました。文字をあまり小さくせず、図版はたっぷりした大きさで、という方針です。

――読者からの反応はいかがでしたか?

金木犀:
 幸いなことに、「じんだい」本はとても好意的に受け取っていただけました。「これが知りたかった!」という感想を見かけると嬉しくなりますね。埋もれた歴史を発掘するのは楽しいことです。
 「じんだい」のプロジェクトマネージャーの先生にもとても気に入っていただけたようで、「関係者に配りたいからまとまった数が欲しい」という申し出を頂きました。そこまで評価していただけたのはとても名誉なことと思っています。

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