2016年「TVアニメ」大賞 niconicoユーザー30万人超のビッグデータから見るネットアニオタ民の動向
6位『GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』2.9%
男性 | 女性 | 10代以下 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代以上 |
94.5% | 5.5% | 11.4% | 43.6% | 27.8% | 13.3% | 4.0% |
40代以上男性の支持を集めるミリタリーファンタジー。監督は『ラブライブ!』
ミリタリーファンタジーらしく男性層に大きく偏っているが、40代と50代からの支持がなかなか高い。作品テーマはもちろんだが、ミリタリー描写や演出などが好まれたのは各設定部門のスペシャリストを擁したアニメスタッフによるところが大きい。監督の京極尚彦は、前作『ラブライブ!』で10代男女の圧倒的な支持を得て、今作では自身の年齢よりも上のファンを掴んだ格好だ。
7位『おそ松さん』2.5%
男性 | 女性 | 10代以下 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代以上 |
34.3% | 65.7% | 16.8% | 50.4% | 23.7% | 7.1% | 2.0% |
社会現象となった「おそ松旋風」 新世代や男性ファンも掴む
特集したアニメ雑誌が次々と増刷し、一般誌の表紙にも多数登場するなど、2016年前半の社会現象アニメといえばこの作品。この通年アンケートにおいても女性を味方につけた。だが驚くべきことに、本作の作品内支持率のうち、約35%が男性によるもの。女性ファン的な感性で見ることもできるし、バラエティ番組のノリでハイブロウなギャグを楽しむことができたのも幅広い支持に繋がった。10代からの支持も高く、昔からのキャラクターであってもリファインとアイディアによって現代でも人気作になれることをこの作品が証明してくれた。
8位『響け!ユーフォニアム2』2.4%
男性 | 女性 | 10代以下 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代以上 |
89.2% | 10.8% | 12.3% | 48.2% | 23.2% | 13.1% | 3.2% |
TVアニメ最高峰のクオリティ 青春作品は回顧的か!?
ハイクオリティを突き詰めた作品。TVシリーズの常識では測れないレベルの映像美だ。高校吹奏楽部を舞台にした青春作品で、キャラクターと同世代の10代よりも、20代から40代にかけて強く支持され、登場人物を振り返る世代が作品のドラマ性に反応した結果が見て取れる。
9位『NEW GAME!』2.0%
男性 | 女性 | 10代以下 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代以上 |
95.6% | 4.4% | 22.3% | 52.0% | 17.7% | 6.6% | 1.4% |
「オトナ」な作品は10代にヒットする? キャラと舞台の関係性
掲載誌「マンガタイムきらら」作品らしく、男性向けに強い支持を受けている。登場人物のほとんどが20代で、ゲーム開発会社を舞台にした、「オトナ」の作品にもかかわらず、作品内世代別支持率では10代が約22%を占める結果を出した。登場キャラと支持層の関係でいうと「ユーフォ」とは対照的な結果を示したことは興味深い。とはいえ、外見的には幼く見える美少女キャラではあるので、キャラのルックと設定、物語と舞台における支持層の関係性については次なる研究課題となるデータが示された。
9位『ドリフターズ』2.0%
男性 | 女性 | 10代以下 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代以上 |
80.6% | 19.4% | 10.8% | 50.2% | 27.2% | 9.9% | 2.0% |
濃い原作を引き算なしに。女性を惹き付ける漢のドラマ
非常に濃いマンガ原作で、熱狂的なファンが潜在する作品を忠実にアニメ映像に落とし込んだことが支持に繋がった。世代別の支持では10代よりも30代に受けるという「ユーフォ」と近い構成を示しているが、男女比で見ると女性ファンの支持率が約2倍ある。原作からのケレン味あふれるキャラクターやセリフが男女問わず支持され、キャストも実力派が結集したことが要因として挙げられる。
10位以下の注目作品
10位以下は要注目のデータが表れた作品について触れていきたい。
■11位『モブサイコ100』1.8%
男性 | 女性 | 10代以下 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代以上 |
48.8% | 51.2% | 15.2% | 58.1% | 19.7% | 5.1% | 1.9% |
20代から高い支持を集め、集計ベースで男女比がおよそ5:5。ランクインした中でここまでバランスよく支持を得た作品は稀だ。原作のシンプルな絵が二次創作への欲求をかきたてるのか、Pixivのファンアートも非常に活況だ(絵柄から女性によるものが多いと見られる)。同じ原作者の前作『ワンパンマン』もいち早くアニメ化されるなど、ネット上で高い人気を誇る。
■15位『3月のライオン』1.5%(表上)
■17位『僕だけがいない街』1.2%(表下)
83.7% | 16.3% | 12.2% | 53.5% | 23.3% | 8.4% | 2.7% |
男性 | 女性 | 10代以下 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代以上 |
78.2% | 21.8% | 15.0% | 55.0% | 20.4% | 7.7% | 2.0% |
それぞれモチーフが異なるにもかかわらず構成比率が似ているのが興味深い。それぞれ女性層が約2割、また世代別では20代が半数で30代も2割ほど。両作とも原作マンガの絵柄を嫌味なくアニメに落とし込んだことも要因としてあると考えられるが、ドラマ要素の強さが何より大きい。キャラクターの成長やタイムリープによる謎解きなど、毎話数を牽引する要素が散りばめられている。
■19位『オカルティック・ナイン』1.1%
男性 | 女性 | 10代以下 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代以上 |
71.3% | 28.7% | 19.3% | 56.7% | 17.7% | 5.0% | 1.3% |
まとめサイト管理人が主人公で、セリフの中にもネットのジャーゴンが注釈なく使われているなど、若いネット視聴者の当世代感を得て支持されている。グラフィカルでポップな絵柄もあってか嫌味がなく、女性からも約3割の支持を得ている。また作中情報が過密で、オカルト考察も含めて繰り返し見たくなる作品でもある。
■19位『アクティヴレイド -機動強襲室第八係-』1.1%
男性 | 女性 | 10代以下 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代以上 |
91.6% | 8.4% | 6.9% | 58.0% | 27.5% | 6.9% | 0.8% |
5位の『鉄血のオルフェンズ』と近い支持者構成をしている。男性が約9割、全体の構成は約6割が20代、2割~3割が30代という具合だ。メカ・ロボット好きに刺さる構成はこの形になるのだろうか。作品像としては主人公に美形男子のペアを置いて、基本的に各話完結の刑事ドラマを展開するなど、女性に向けた配慮も行なった作品だが、この結果には表れなかったようだ。ただ、アニメオリジナル作品でこの順位は十分に健闘といえる。続編の余地を残した作品であるため、継続から定番へという流れも期待できる。
“平均点”には落ち着かない、アニメファン30万人の声
筆者としてもここまで大規模な集計データから考察するのは初めてで、非常に興味深い経験だった。
このアンケートの面白いところは30万人という大規模になったからといって、特定の作品に収斂するだけではないというところだ。「ジョジョ」や「ガンダム」など知名度の高いシリーズは確かに上位に挙がったが、一方で尖った要素のある作品に対する支持はきちんと集計に表れている。それも一部の大きな声だけが突出するのではなく、それぞれの特長が支持層別に反映された結果になっている。
いわば、王道には王道の戦い方があり、特徴的な作品には相応しい戦い方もあるということだ。上位に来る作品はそれぞれ製作側の意志がきちんとユーザー側に伝わっていることが示された。
このアンケートの惜しむべきところは「1年間で1作品だけを選ぶ」というレギュレーション。この制限はファンにとっても嬉しい悲鳴だったに違いない。各クール別に選んだ場合はさらに緻密なデータが表れることが予想できるはず。そんな期待を込めて、今回は筆をおくとしよう。