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そういう事だったのね! 同人誌の即売会で「販売」じゃなくて「頒布」が使われるようになった理由

 コミックマーケット(以下、コミケ)等で入手することができる同人誌。

 今回の「ニコニコワークショップ」は、講師に同人誌を扱う書店・COMIC ZINの同人統括責任者の金田明洋さんを招き、MCで漫画家のピクピクン☆さん、生徒役の配信者のサトウキビさんタイチョーさんに、元々は文学好きが集まって作ったという同人のはじまりや、なぜ「頒布」という言葉が使われるのかの解説を行い、さらに今おすすめの同人誌を四冊紹介しました。

左から金田明洋さん、ピクピクン☆さん、サトウキビさん、 タイチョーさん。

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コミケで「頒布」という言葉が使われる理由とは?

ピクピクン☆:
 ここからは金田先生にお伺いしていこうと思いますが、まずはスライドをお願いします。定義を定めたいと思います。出版社などを通さず、作者が自費で出版している本。特に、同人誌即売会で頒布されている本のことを指すというものなんですが、金田先生、これについてご説明をもう少し詳しくお願いいたします。

金田:
 真面目に説明したほうがいいんでしょうか(笑)。

 同人誌ってものすごい広い意味で言えば、コメントにも難しい文学のアララギ派とか白樺派とか出ていましたけれど、元々は文学が好きな人たちが集まって作っていたものを「同人」なんて言っていたのですが、僕たちが今言っているような狭い意味での同人誌は、やりたいことを薄い感じの本にまとめるものことを、一般的に今言っていると思ってます。

 「これです」って決まってるわけじゃないんですけど、アニメとかゲームとか漫画とか、そういうもの好きな人が、それについて描きたいものを描いているっていうのが、狭い意味での同人誌と言っていいんだろうなと。

 そういうふうに言わないと同人誌の話ってできないので、言っちゃったほうがいいのかなって思っています。いわゆる自費出版っていう言い方もありますよね。厳密にはやっぱり分かれていないと思うんですね。

 同人誌も自費出版も同じことを言ってはいるんですけども、発表する場とか、扱ってるものに同人誌というのは特徴がある。さっき言った、漫画、アニメなど日本が得意とするものを扱ったりとか、漫画だったりとかするというのが特徴なのかなっていうふうに思います。

ピクピクン☆:
 でも同人誌って、何も縛られず自分の趣味だけで描きたいを描きたいように描く。法律に触れない範囲で(笑)。

金田:
 そうです(笑)。大事です。

タイチョー:
 商業紙や出版社でやれないようなことを同人誌のほうでならできるみたいな、自由さみたいなのが人気のある理由でもあるんですかね。

ピクピクン☆:
 あとやっぱり売上とか儲けを考えずに作るものだから、僕が見た限りだと「金田さん×扇風機」の同人誌を俺は描きたい。誰も買わないと思う。でも俺は描きたい。そういうことだと思う。

サトウキビ:
 金田先生の顔が……(笑)。

タイチョー:
 コミケとかで本を売るっていう感じの表現じゃなくて、例えば「頒布」っていう感じの表現をするじゃないですか。違いというか、ものを売ってることには変わりないでしょうけど、「頒布」という表現にこだわるのは、なにか理由があるんですかね。

ピクピクン☆:
 これは僕も同人をやる上で勉強はしたのですが、同人誌ってそもそも売ってはいけないんです。仲間内の間で配る。交流するための交換日記、ファンブックがはじまりなので、不特定多数の知らない人に売るわけではなくて、「私、この前このジャンルでこんなの描いたんだけど、読んでくれない?」っていう学校の中で回し読みする趣味の本の延長。

 だからこそ「頒布」って言わないといけないと思っていたのですが、どうでしょう。

金田:
 かなり当たってるのかなと思います。ですが、それは誰が決めてるんだって話で、頒布は良くて売るのはダメって、誰かが決めているのかって言ったら、誰も決められないわけですよね。

 コミックマーケットという一番大きなイベントの影響力が大きいわけですけれど、そういうところがやっぱり「頒布」っていう言葉を使うようになったので、みんななんとなく「頒布」って言わなきゃダメなんだって思ってるんだけども、実は公式にはそんなことを言ってないんですよ。

 別にその「頒布」も言っていないし、場合によっては使い分けますよっていうふうに、逆にコミックマーケット準備会さんは言ってたりする。

ピクピクン☆:
 気持ちの問題ですよね。

金田:
 そうですね。儲けるよっていうニュアンスが強くならないように、「頒布」という言葉を使ってるんだなっていうふうに思います。

サトウキビ:
 コミケ会場は入場料はかからない? パンフレットがかかるというイメージですよね。だから無料のフリースペースで、みんなが作った本を交換する会みたいな意味合いですか。

金田:
 作ったものの手間賃を払ってあげているというか。

タイチョー:
 確かにそうですよね。何をするにもかかりますからね。

毎週日本のどこかで開催されている様々な即売会を一部紹介

サトウキビ:
 同人誌即売会ってあるじゃないですか。これはコミケのことだと思うのですが、コミケ以外のことって何て言うんですか。全部コミケみたいなイメージがあって。

ピクピクン☆:
 そういったものをまとめた資料があります。こちらのスライドをご覧ください。

ピクピクン☆:
 同人誌即売会はコミケだけじゃないです。一般的には「コミケ」と総称されます。僕も「コミケ」って言っちゃいます。特に僕の読者さんとかって、コミケを知らないので、わざと「コミケ」ってまとめて言っちゃうんですけども、必ず毎週日本のどこかで即売会が行われています。

 先生、コミケ、いわゆるコミックマーケットと言われるもの以外の即売会のご説明をお願いします。

金田:
 コミケ=同人誌即売会っていうのは、間違いで、あくまでも同人誌即売会っていうものの一つにコミックマーケットっていうのがあって、略して「コミケ」と言います。同人誌即売会はほとんど毎週どこかでやっていて。やっぱり一番都内が多いんですけれども、いろんな他の都市でもやってます。

 ここに並んでるコミティアとか、夏インテ、SUPER COMIC CITY、COMIC 1ですかね。本当にこれは一部で、会場もいろんなところで大きいところから小さいところまで本当にいっぱいあります。

ピクピクン☆:
 僕が参加してるやつから見ると、入ってないやつもありますよね。僕が思う大きな即売会のイベントはコミケ。コミケの夏冬。それと同規模のものが、COMIC CITY。COMIC CITYというのは、コミケは男性が多いのですが、COMIC CITYは99%が女性です。それでコミケと同規模。それが僕が大好きなCOMIC CITY。

 あとスタジオYOUさん。これも同じくマニアック向けのやつですよね。

タイチョー:
 サンシャインクリエイションとかもありますね。

サトウキビ:
 私、愛知に住んでいる時に名古屋でも大きい同人誌即売会があったんですけど、それをずっと「コミケ」って呼んでいました(笑)。

タイチョー:
 僕も全く同じ経験があります。小さい頃って全然わからないから、全部「コミケ」って(笑)。

ピクピクン☆:
 逆に即売会って言っても伝わらない人が……。コミケって本当にいろんな種類があって、オンリーイベントというものがあって。コミケって、いろいろなジャンルがその日に集まっているんですよ。

 いろいろな漫画、いろいろなジャンル。戦艦ものからアイドルまで。オンリーイベントって、一つのジャンルしかやらない。それがめちゃめちゃ楽しいんですよね。暗いやつとか、人生の苦しみだけを集めた会とかあったりするんです。

サトウキビ:
 なんですかそれ(笑)。

ピクピクン☆:
 探すとあるんです。ああいうの大好き。誰も買ってないもん(笑)。

サトウキビ:
 1ジャンルどころか、1カップルオンリーとかもあるんですか。ホモ系の。

ピクピクン☆:
 あります。スタジオYOUさんに特に多いです。

タイチョー:
 これだけエネルギーが集まるって、すごいですね。

チロルチョコの表紙だけを集めた『TIROL-CHOCO WRAPPING PAPER COLLECTION Vol.1』

ピクピクン☆:
 そろそろ皆様も同人誌を読んでみたいという気持ちが、むくむくと湧き上がってきたんじゃないですね。

サトウキビ:
 上がってきました。

ピクピクン☆:
 次のコーナーにいってみましょう。同人誌を読んでみよう! ここからはいろいろな同人誌を扱っている金田先生のイチオシの同人誌をご紹介していただこうと思います。一冊目はどれでしょうか。

金田:
 これです。

金田:
 『TIROL-CHOCO WRAPPING PAPER COLLECTION Vol.1』というものです。

ピクピクン☆:
 サークル名がStudio Turbineで、CTRさんの制作ですね。中身はどんなのですか。

サトウキビ:
 すごい! はじめて見るラッピング。

金田:
 ただの包装紙をひたすら集めているという。

ピクピクン☆:
 チロルチョコ的にはどうなんですかね。

金田:
 まぁ……いいんじゃないですかね(笑)。

ピクピクン☆:
 公認なんだ(笑)。ちゃんとシワ伸ばしてるね。ひたすらチロルチョコの包装紙が載ってます。

サトウキビ:
 見たことあるのが一個もない。

タイチョー:
 ピザとかって……。

ピクピクン☆: 
 これをメーカーがちゃんと黙認というか、公認しているのがいいですよね。

金田:
 最近秋葉原にチロルチョコ専門店の「Shop チロルチョコ」っていう店ができて、少し話題になっていますけれど、その時ふと気付いたんですよね。この本をうちで扱っているなと思ってきょう持ってきてみたんですけど、チロルチョコの店ができたからできた本じゃなくて、本当に好きな人がなんかよくわかんないんだけど作っているっていう。

 誰の得になるんだっていう代表的な本かなと思います。

ピクピクン☆:
 漫画の世界だと、ちょっとでも原画をトレースするとめちゃめちゃ怒られるんですよ。こんなのスキャンしただけで、これはアリなんだ(笑)。じゃ俺も原画スキャニングしようっと(笑)。

タイチョー:
 こういう感じの本は僕もはじめて見ましたけど、確かに同人誌ならではなんでしょね。

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