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自社制作のアニメはどれも「なぜ感動するのかわからなかった」ガイナックス元代表取締役・岡田斗司夫が語る制作現場の裏話

庵野秀明が提案した“奇跡”の導入

岡田:
 そこで庵野が言ったのは、「奇跡を入れるべきですよ! もう絶対にダメだっていう時に、奇跡が起こるという展開を入れるんです!」ということだったんですね。

 それを聞いて、俺はついつい「えー?」って言っちゃったんですけど。ここで山賀が「庵野が言ってることは正しいです」って言うんですよ。「僕や岡田さんで考えたようなことでは、客は感動しません。なぜなら、客には庵野みたいなヤツの方が多いからですよ。俺と岡田さんが話している中で、庵野の言うようなことを思いついても、「それはありえない」ということで却下されることになるんです。

 でも、観客は、理性を超えた感性というものを求めている。なので、これ以上、僕と岡田さんだけで話しても何も生まれません」と。そこまで言われたので、僕も「わかった。じゃあ、ラストは奇跡でいいよ」ということになったんですね。

 その結果、『トップをねらえ!』のラストでは、奇跡が起きて、もう地球に帰れないと思われていた主人公の2人を載せた“ガンバスター”というロボットが、1万2千年後に帰ってくるという話になりました。

 1万2千年後に帰って来る時に、地球がどうなっていたのかというと、地球の表面に「オカエリナサイ」という文字が浮き出てきて、これで終わり、と。

なぜ「イ」の文字が反転していたのか?

 ここで表示される「オカエリナサイ」という文字は、カタカナの「イ」の文字だけが左右に反転しているんです。なぜ、そうしたのかというと、それがSFだからなんですよ。

 ちょっと変な話になるんですけど、そのときに考えたのが「1万2千年後まで、地球人類がずーっと待っていて、メッセージを送ってくれるなんてことがあるはずがない」ということなんですよ。

 1万2千年という年月が過ぎるということは、地球では、もうとっくに人類が滅びているということです。そればかりか、人類の次に地球を支配した種族というのも滅びている。そういうことが何世代も繰り返されているはずなんです。

 人類が滅びた後で、例えば、サルのような知的生命体が現れて、さらに、そのサルが滅びて次にはゴキブリのような種族が現れて……みたいに、いろんな種族が栄えては滅びを繰り返したのかもしれない。

 だけど、そんな彼らが、唯一ずーっと守って来たものは、「オカエリナサイ」という文字で地表を照らして、彼女たちの帰りを迎えることだったんです。ここまですれば、SF設定としてアリになるんですよ。

 ここで、ロシア人にアルファベットが伝わる時に何文字かが逆になったのと同じように「イ」の文字だけが反転しているのは、この時代には既に日本語という人類の原語を理解できる者が誰もいなくなっていることを意味しているんです。

 1万2千年後の地球に生きる彼らは、既にこのメッセージに何の意味があるかもわからないまま、言語ではなく画像として、彼女たちの帰りを迎える光を灯し続けていた。この逆さまの「イ」は、こういうことを表現しているんですよ。

この時点では理由は説明できなかった

 さて、この「オカエリナサイ」の「イ」が逆さまになっている描写で観客は感動するはずだ、ということについては、その場にいた全員が納得したんですよ。山賀も「イケる!」と言ったし、庵野も「それです!」って言ってくれたんです。

 ところが、相変わらず全員、「なぜ、これで感動するのか?」がわからなかったんですよ。困ったもんですね(笑)。

 ガイナックスの“感動を作るプロジェクト”の第1弾である『トップをねらえ!』では、一応、仮説を立てた上で、検証を行い、「感動する」という結果を得ることはできたんです。ただ、「それがなぜか?」までは、よくわからないままだったんですね。

 つまり、僕らは“定理“みたいなものだけを手にいれたんですよ。「それがなぜかは説明できないんだけど、とりあえず、これをやっておけば感動する」という定理を。

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