『最後のジェダイ』“ティコ姉妹役”アジア系女優の出演を受け評論家が解説「スター・ウォーズ新3部作では様々な人種が脚光を浴びるようになった」
『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(以下、『最後のジェダイ』)が12月15日に公開され、シリーズ歴代2位となる2億2000万ドルのオープニング興行収入となりました。
これを受けて『WOWOWぷらすと』では、『最後のジェダイ』に登場した“ティコ姉妹”をアジア系の女優が演じたという話題をきっかけに、国際化するハリウッド映画の現状や、「スター・ウォーズ新三部作」での様々な人種の俳優へのスポットの当て方について、映画評論家の松崎健夫氏、添野知生氏が映画解説者の中井圭氏と共に解説を行いました。
※本記事には『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』・『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』・『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』のネタバレを一部、含みます。ご了承の上で御覧ください。
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『最後のジェダイ』に登場した、アジア系の女性パイロット…
松崎:
今回、このアジアの方が活躍するじゃないですか、この表紙の右に映っているのはローズ・ティコというキャラクターを演じるケリー・マリー・トランさんという方なんですが。ぼくが言いたいのはローズ・ティコの姉のキャラクターであるペイジ・ティコのほうなんですけど……。ペイジ役の人、ベロニカ・グゥさん。ぼくからしたら、「ベロニカ・グゥ」じゃないんですよ【※】(笑)、「ゴー・タイン・バン」さん! 彼女はベトナムですごく才能がある女優さんなんです。
※「ベロニカ・グゥ」じゃないんですよ
「ベロニカ・グゥ」(Veronica Ngo)は「ゴー・タイン・バン」の英語での女優名。
松崎:
彼女は、『CLASH クラッシュ』であるとか、『ソード・ウォリアーズ 皇帝の剣闘士』といった映画に出てたり、『フェアリー・オブ・キングダム』では監督をやっている。
一同:
監督!?
松崎:
『フェアリー・オブ・キングダム』はベトナムのシンデレラみたいな話なんですけど、彼女は継母の役をやっている。本来なら、若作りして娘の役をやってもいいのに、継母の役をやるくらい気合が入っている。
そんな彼女がついにハリウッドに来たかというのがぼくの最大の見所でありました。彼女にちょっと注目していただきたい。
添野:
妹役のローズ・ティコを演じたケリー・マリー・トランさんのプライベートの写真を見ると普通に現代的な女優さんなので、わざと地味な役柄で妹役をやったんだと思いますけどね。
松崎:
『フォースの覚醒』の時にイコ・ウワイスさんっていう『レイド』の人をキャスティングしたりしていましたよね。『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(以下、『ローグ・ワン』)でドニー・イェンとかアジアの人を出したりしているので……。今度のエピソード7、8、9ではだめでもエピソード10くらいで武田梨奈さんを使ってくれないかな(笑)。その頃には30歳くらいになってるでしょう?
松崎:
ゴウさんもいまアラフォーです、でもそう見えないですよね? 身体能力があればアラフォーでも通用するので。脚本家のジョス・ウェドンがSFマガジンのインタビューの中で「最近見た映画の中で一番いい映画は『ハイキックガール』」って言ってたんですよ。
添野:
すごいねー、よくチェックしてるよね。
クライマックスが同時進行カットバックになる理由
松崎:
今のハリウッドが描く多様性みたいな話で言うと、『フォースの覚醒』からレイなりフィンなりポーなり新しい人達がでてきて、それぞれが地球の人種で言うと、人種も国籍も違う人達が出てきて……。
それってアカデミー賞の時期に何度も言う話ですけど、いまそういう多様性を認めていきましょうとか、ハリウッドだけでなく国際的な映画の中で描かれている流れなので、そういうものがスター・ウォーズの中にも入ってきたなというのが一つと、それの中で黒人のキャラクター……。
松崎:
つまり、褐色の肌をしたフィンが主人公っぽくなったり、レイのような女性もメインの中に出てくるというのはこれまでのストーリーの中になかったことなんです。これもぷらすとの中で何度も言っていることですけども、今年2017年は『ワンダーウーマン』筆頭により強い女性像、男を必要としない女性が増えてきている。
そういうのを考えると、スター・ウォーズもその中にあって、今回は「アジア系の女性が活躍する」っていうのは特徴だと思うんですけど。そうすると、これはシリーズでよくあることなんですけど、キャラクターがどんどん増えていくととっちらかってしまう。みんなの見せ場をつくらなきゃいけないから、それでジャージャービンクスがいつの間にかいなくなっていたり……(笑)。
今までのスター・ウォーズでいう『ローグ・ワン』くらいで、ひとつの作戦を見せる時にカットバックがめちゃくちゃ多いんですよ。そうすることでフィーチャーしなくてはいけない色んな人種の人達の見せ場を一杯作れる。というのがひとつありますよね。ゴッドファーザーの最後でもいわれていますが、緊張感や対比が出てきたりする。そういう面で演出に優れているように見えるっていうのもあるし。
あとは結果的にその事自体が作戦というのをみんなで遂行しているんだという感じに見える。