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『けものフレンズ』たつき監督降板、『るろうに剣心』原作者書類送検など激動のアニメ・漫画界を総ざらい【2017年下半期】

9月・「『けものフレンズ』たつき監督降板にネットが激震。「『スープ』を『スーツ』で薄めてはならない」

乙君:
 9月。「『けものフレンズ』たつき監督降板騒動」について。

『けものフレンズ』。画像は公式サイトより

山田:
 これ、※近江商人の話なんだけども。

近江商人
中世から近代にかけて活動した近江国・滋賀県出身の商人。

乙君:
 近江商人の話? はいはい。

山田:
 「いろんな商社の人達が出たところの信用はカネで買えない」ということをやたらと言われまして。それで、アニメ業界にとっての信用とは何か、という話ですよ。だから、『けもフレ』問題は悲しいよね。

乙君:
 悲しい?

山田:
 1月から始まって、いわゆる、割と弱小と呼ばれるような場所から、みんなでモルヒネを提供して、見た人を救って、さあ第2期だっていう時に、今の状況に。

 本来、アニメ産業にとって一番の信用は、作り手と見る側の1対1の関係だっていうことであって、ここがズレた瞬間に終わる。

乙君:
 ああ。

山田:
 全てのコンテンツがそうだと思わない? アニメとか漫画とかのコンテンツって、要するに「心の問題」だから、信用を失ってしまったら、それを回収するのは結構大変だと思う。その1対1の関係っていうものの大事さ、そこの純度を保つかどうかっていうところが残っていくだろうなというのは思うね。

乙君:
 なるほど。

山田:
 そして、こんなことを考えましたよ。「『スープ』を『スーツ』で薄める問題」ってやつです。

乙君:
 我々はわかりますけど、今日始めて山田さんを見る方もいるので、ぜひ説明を。

山田:
 そうですね。スープとは、人生なんですよ。だから、一つの大きなものの裏に、たつき監督のすごいものが入っているわけですよ。

乙君:
 はいはい。

山田:
 作品とは、作者が作った極上のスープなんです。簡単な味ではなく、深いんですよ。それを、スーツで薄めたら駄目ですよっていう話ですよ。だから、ここは一番守ってもらいたいところだな、と。

乙君:
 なるほど。

10月・『ONE PIECE』全世界累計4億3千万部突破。「ONE PIECEは最後の宝船である」

乙君:
 10月。「『ONE PIECE』全世界累計4億3千万部突破」。ちょっともう数字がよくわからないですね(笑)。

『ONE PIECE』。画像はAmazonより

山田:
 漫画業界、雑誌を中心とした漫画業界ってどういう風に出来ているかっていう話で、一つの雑誌、もしくはグループがあって、その全体の中で、何億円かかけて投資して、漫画を世の中に出す。そのうちのほんの数本がミラクルヒットを出す。

 そこで収益を出して、赤字になってしまったところを埋めていく。つまり、1人の作家が儲けることによって、次の漫画が挑戦が出来るというシステムだった。漫画、雑誌システムっていうのは、このシステムが分かっていないといけない。

 単行本の印税って、基本的に10%なんだけど、そのチャンスをもらうために、先代が作ってくれたお金が投資してあるわけなんだ。

乙君:
 なるほどね。

山田:
 例えばジャンプなら、ロングセラーがあったりして、いくつかがアホみたいに稼ぐから、だからこそ、新人がデビュー出来るんだよ。ジャンプが本当に何のキャリアもない無名の奴を拾って、花を咲かせるという雑誌だから、名前で出るんじゃないんだよね。

乙君:
 ああ。

山田:
 まだまだ未完成のものだけど、連載している間に磨かれていって、しかもその間は、編集部がちゃんと面倒を見るよっていうのが、出版社だったんだよ。だからアシスタントの世話をしたり、住むところを世話したり、ネームが出来なかったら、いつまでも一緒に考える。

 そういうようなことをして、世の中に出すというシステムがあったわけ。それもこれも全部、誰かがヒットを出してたからなんだよ。これがなくなったら、漫画雑誌がどんどん消えますから。

 だから『ONE PIECE』という船は、宝船なんです。

乙君:
 おお、なるほど!

山田:
 もしかしたら、ジャンプ最後の宝船かもしれない。だから、この単行本の発売日に、ジャンプの売り場よりも広く、単行本が積まれる。

しみちゃん:
 はい。

山田:
 これのおかげで延命できている少年ジャンプでもあるわけだよ。こいつが沈んだ時に、一緒に沈む可能性がある。

乙君:
 確かにそうだ。

山田:
 だから、旅を終える前に、次のタイトルが現れないと。

乙君:
 違うんですよ。出港して、いっぱいいろんな大ヒットが出たけど、ずっとこれが続いているっていうだけなんですよ。それをさらに引き継ぐ大ヒットがでないと、ジャンプは沈む。

山田:
 いなくなっても大丈夫、となった時に安心できるんだけど、業界全体でも奇跡といっていいような売上だった、ということです。

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