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『ブレード・ランナー』が過大評価される風潮に物申す! 岡田斗司夫が提唱する「ブレード・ランナー実は面白くない説」

 10月22日に放送された『岡田斗司夫ゼミ』では、新作映画『ブレードランナー2049』の公開に合わせて映画『ブレードランナー』の解説を2時間に渡って岡田斗司夫氏が行いました。

 岡田氏は放送後半で「『ブレードランナー』はやっぱり映画として面白くないことがわかった」とコメントしました。映画として面白くないにも関わらず『ブレードランナー』が名作とされている理由を語ります。

『ブレードランナー2049』画像は公式Twitterより。

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劇場公開時はヒットしなかった『ブレードランナー』

岡田斗司夫氏。

岡田:
 『ブレードランナー』の話をするときの、いわゆるあるあるネタの中に、劇場公開時はヒットしなかったという話があるよね。これは僕らも知っていることだよね? これについてはよく公開当時はこの映画の良さをみんなわからなかったんだけど、後々評価されていったという文脈で語られるんだけど、俺が思うに違うんだよね。

 例えば、同じように公開当初は評価されなかったというものには、初放映時に打ち切りになった『機動戦士ガンダム』とか、劇場公開時の興行成績が悪かった『ルパン三世 カリオストロの城』があるけどこれらの作品とは文脈が違う。

『ルパン三世 カリオストロの城』画像はAmazonより

岡田:
 なぜかというと、『機動戦士ガンダム』は再放送で人気が出た。つまり、一度放送されたテレビアニメをそのままの形でもう一度テレビで流したら、見るべき人がちゃんと見て人気が出た。『ルパン三世 カリオストロの城』も映画館で何回も再上映されているうちに、徐々に人気が上がってきた。

 そんなふうに最初の公開時の評価はともかく、同じメディアで何度も見せていたら、ちゃんと人気が出たような作品なんです。でも、『ブレードランナー』の人気が出だしたのはビデオテープが発売されてから、つまり映画館では一貫して受けなかったんです。

『ブレードランナー』は映画として爽快感に欠ける

岡田:
 なぜヒットしなかったのか? これは俺の冒険的な『ブレードランナー』実は面白くない説という仮説なんだけども、みんな友達とか自分の嫁とかにこの映画を見せようとして、面白くないと言われたことがあるんじゃないかな。これはたぶんその通りで、『ブレードランナー』って実はあんまり面白くないんだよ。

『ブレードランナー』画像はAmazonより

岡田:
 俺は2時間もかけて語れるほど、ものすごく好きなんだけれども、今回冷静に考えてみたら『ブレードランナー』はやっぱり映画として面白くないことがわかったんだよね(笑)。なんせ監督のリドリー・スコットは、「俺がやりたかったのは西部劇だ!」と言ってるわりに、主人公のデッカードが退治したのは女だけ、それも後ろから撃ってるんだよね。肝心の敵であるレプリカントの強いヤツとは、劇中で一度も勝っていないんだよ。

 だから、まったく主人公に共感できない。なにより、かっこいいセリフからアクションシーンでの活躍まで、見せ場は敵役のレプリカントが全部持っていっちゃっている。そういう部分で、爽快感とかクライマックスでの盛り上がりにも乏しいから映画として、実は70点くらいの面白さなんだ。

『ブレードランナー』は体験型のアトラクション

岡田:
 ならば、どうしてビデオが出てからあんなにヒットしたのかというと、『ブレードランナー』とはオタク向けディズニーランドであるからなんだ。まあ、オタク向けということはないんだけれども。『ブレードランナー』は、いわゆる映像で作った異世界みたいなものが好きな人のためのディズニーランドであって、体験するものなんだよね。

岡田:
 ディズニーランドが日本でオープンしたとき、ディズニーのアニメなんて誰も見てなかったんだよ。『ブレードランナー』も同じような世界没入型というわりと珍しいタイプの作品なんだ。

 カウチポテトという言葉が流行った時代、家でひとりポテトチップスを食べながら、解像度の高い大きなモニターで『ブレードランナー』の映像を何度も見るっていう人がいっぱいいた。この『ブレードランナー』を繰り返し見るというのは、たぶんその当時の人たちにしてみれば聖地巡礼だと思うんだ。

 「心の中でいつか見たいと思っていた風景を何度も体験する」というのに近い。だから、そういう世界に対する憧れみたいなものを持っていない人にとってあの映画は、2時間続く、わりと退屈でつまらない映画なんだよね。『ブレードランナー』が実は面白くないというのは、この映画を知るうえでわりと大きなポイントだと思うんだよね。重要なのは「にもかかわらず、こんなにヒットしたのはすごい!」という話なんだ。

岡田:
 こういう異世界の風景。ビル全体に女の人の顔がフワッと映し出されていて、そのあとに「強力わかもと」の広告で出てくる。そんなビルの間を空飛ぶ車がガーッと飛んでくる。これを「美しい!」という感性で見られる人ってやっぱり全人口の10%もいないでしょ? 正直な話。『君の名は。』の世界を美しいと感じる人の割合とはどう考えても違うわけだよ(笑)。

 『ブレードランナー』という作品について評価はいくらでもできるんだけど、“映画としての面白さ”という意味で言えば、中の上に届いてないんじゃないかというふうに思うな。

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