映画『ダンケルク』が世界中で大ヒット。『ダークナイト』『インセプション』も手がけた天才監督・クリストファー・ノーランの手法に迫る
男は“リアル”にこだわり、女は“夢を見させてくれ”と思っている
山田:
ダンケルクのフランスは、とにかくボロボロなんだよね。
乙君:
イギリス軍の話だよね。30万人くらいが、ダンケルクという港町に包囲され、閉じ込められている。そこは遠浅だから巡視船が近くまで寄って来られないから、救助が難しい。飛行機や輸送船もないから、取り残された30万人をどう助けるかを描いたのが、この『ダンケルク』っていう話なんですな。
山田:
現実に起こった戦争をリアルに表現するために、本物の戦艦やイギリス軍のスピットファイア【※】を使ったとか。
※スピットファイア
第二次世界大戦期に活躍したイギリス製の戦闘機。
乙君:
あれはCGではなく、実際の映像なのか。
山田:
実際に浜に兵士の格好をさせたキャストを何千人も置いて、実際に空爆してるからね。「バーンと音がするから、みんな演技はいらなかった」と、俳優が言っていて、本当に怖いから誰も演技指導が必要なかったそうです。
山田:
有名な話だけど、クリストファー・ノーランといえば、遠くからカットと言わず、必ずカメラの横にいるという。それでいて、CGが嫌いなんだよ。だから、わざわざコダックと契約して、フィルムを買っている。
徹底して、そこは実写主義というか、それはどういうことかというと「映画を嘘にするな」ということ。男って嘘も好きだけど、リアルなことに拘るでしょ。女の人は「夢を見させてほしい」と思っているわけじゃん。ここでノーランの対立が起こってるんだよ。
乙君:
ああ、男性と女性の気質の違いがそのままノーランってことですね。でも、視聴者からのコメントで「女だけどノーラン大好き」という人もいっぱいいます。
山田:
それは「黙ってついて来い」っていう男も好きな女がいるということ。
乙君:
そういうことなんだね。
山田:
そして女の人が、ノーランを見て好きになってしまう大きな理由がもうひとつあります。
乙君:
それは何でしょう?
山田:
ノーランの作品は、ひとりの女をずっと待っているんです。だから、大体どの作品でもそうなんだけど、「娘に会いたいんだ」とか「妻に会いたいんだ」とか……。つまり、ノーラン映画といったら、「お家に帰りたい」ということなんだよ。
乙君:
確かに帰りたい人ばっかりですよね。
山田:
女とは喋らずに、言葉ではなく行動をする。だけど泣いているという、明治の男ですね。
乙君:
明治の男(笑)!?
山田:
違うか(笑)。
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