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長澤まさみ・松田龍平主演。映画『 散歩する侵略者 』ってどんな作品? 監督・黒沢清氏とともにあらすじを解説(ネタバレあり)

カットには「描写するカット」と「説明するカット」がある

黒沢:
 映画のカットって大雑把に言うと二種類あって、「描写するカット」と「説明するカット」があります。描写しながら説明が同時に行なわれたりすると素晴らしいカットになるけれど、場合によっては「今何だったの?」みたいな説明するカットだけにすることもあります。描写と説明があって、初めてシーンが成立するんですね。

 でも、失敗すると説明はこれで分かるけど、ちゃんとした描写になっていない場合があります。逆に描写としては素晴らしいけど、何が起こったか今ひとつ観客に伝わらない説明になっていたりします。

 ただ、カメラが二台あると、どちらも描写なのに二つ合わせると説明になったりと、すごいことが起こったりするんですね。

一同:
 おぉ! それはすごい。


黒沢:
 計算しちゃうと「これ説明、これ描写」のように、ついついやっちゃうんですけど。二台目は自由なので、撮ってる方もあまり説明や描写とかを考えずに撮ります。なので二台目が思ってもみない描写になったりするんですよ。これが二台目、Bカメラの面白さですね。

松崎:
 黒沢さんはカメラの横にいて芝居を見ている印象がありますが、このBカメラの時は、どうされているんですか?

黒沢:
 Bカメラの時は何を撮っているのか全く分からない。編集の時に、「こんなカット撮ってたの。すごいじゃん!」という感じです。だからそれが楽しみでしたね。結果として全部が100としたら30ぐらいはBカメラを使いました。描写と説明のバランスが実によく配分できていますね。

中井:
 今後作品を作っていく中で、Bカメラを使ったりすることってありえますか?

黒沢:
 正直、Bカメラにハマっちゃった(笑)。

一同:
 (笑)

顔のアップは100%俳優任せ、監督は祈るだけ

黒沢:
 俳優が画面の中でどんな風に動いてくれるかは、こちらの演出でかなり狙ってできるんですが、顔のアップはほぼ100%俳優任せです。顔のアップで演技を撮っている時に僕は何をしてるのかって言うと、祈ってます(笑)。

一同:
 (笑)

中井:
 黒沢清が祈っているわけですね(笑)。

黒沢:
 アップは俳優勝負ですね。なので俳優にお任せします。時々、「もうすこしだけ眉を動かさないで話せません?」って俳優に言ってみたりするんですけどね。言うだけ無駄でした。言えば言うほど酷くなっていきました。


黒沢:
 動きだったら、「今の倍ぐらいゆっくり動いてください」って言えるんです。アップのセリフを言う時は、この人に任せたんだから絶対大丈夫と信じて祈って、「カットオッケー。最高!」って言うだけ(笑)。

一同:
 (笑)

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