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幾重にも重ねられたコーラスの“調声”に絶賛の嵐! 虫の鳴き声、ラジオノイズーー環境音が耳に残る夏曲『ハレ』

 ボカコレ2022秋に投稿した「一輪の詩」で一躍脚光を浴び、今後の活動が注目されるProject Lumina。今回紹介するのは、そんな氏の楽曲「ハレ」です。

文/「め」


 8月の末日に投稿された本作は分類するなら間違いなく夏曲にあたるでしょう。夏曲とひと口に言ってもその表現は複数ありますが、この曲は澄み切った青空のような爽快感を強調しているタイプです。サムネイルに使われているイラストにも深い濃紺の空が描写されていますが、MVを見ると空を埋め尽くさんばかりにもくもくと広がる入道雲が描かれ、時折上方から光が差すような表現が見受けられます。中心に女の子が映ってはいますが日陰にいるかのようにその姿は暗く、堂々たる自然の雄大さを強く感じさせる映像です。

 サウンド面はというと、限りある音数ながらも総じて透き通ったサウンドが採用されています。余裕のあるビート感、サビのストリングスやスネア連打といった壮大な演奏を入れつつもそれを上回るボーカルの存在感、さらにラスサビで幾重にも重ねられたコーラスを聴いていると、洋楽のティーンポップに近いものを感じます。
 一方で、この曲にはひたすらエネルギッシュな印象というよりは、どこか落ち着いて余韻に浸りたくなるような趣があります。そこにはゆったりとしたBPMや繊細なボーカルラインによるものもありますが、曲の端々で聴くことのできる環境音、そしてワウギターが大きなファクターとして挙げられます。
 
 この曲の始まりと終わりは、木々のざわめきの中に虫の鳴き声が混じったような環境音によって囲まれています。他にもAメロからBメロへ移行する瞬間にはグラスの中の氷が溶けて落ちるような音が反響たっぷりに、1コーラス終えた後にはノイズと共に流れるラジオ音声が曲の間隙を彩ります。これらの音はどれもドラムの存在しないパートで印象的に鳴らされており、夏と大自然の匂いを色濃く感じると共に、リズムではなく上モノのサウンドの方に意識を向けさせています。
 
 そしてワウギター。このギターの音それ自体はR&B、ソウルミュージック、ファンクなどで使われることが多く、お洒落さや陽気さなどを感じる傾向にあります。そこへいくとこの曲で使われるワウには、リズミカルに明るいというよりも不思議とリラクシンなノリが強いです。ダウンテンポなリズムに悠然とした音という編成の中に入れたことで生まれた効果なのか、ひたすらにサウンドアレンジメントの為せる妙なのか。いずれにしてもこのワウによって作品にさらなる深みが与えられ、ステレオタイプな夏とは異なる感覚へ連れて行ってくれることは間違いありません。

 この曲は11/13~11/19の期間で開催された既存楽曲復活祭の参加作品で、2000曲をゆうに超える作品数の中で87位を記録。今再び評価されている曲です。大規模な投稿祭が増えて年々リアルタイムの熱量を増すばかりなボカロシーンですが、時にはこの「ハレ」のような過去の名作を振り返ってみるのもいかがでしょうか。


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