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『スター・ウォーズ』や『平成ゴジラ』映画ポスター画の匠、生賴氏が遺した作品を回顧する

オリジナルの要素が盛り込まれた『スター・ウォーズ』のポスター

石田:
 生賴先生の代表作のひとつとして『スター・ウォーズ』はいかがですか。

オーライ:
 これに関してジョージ・ルーカス監督がですね、ヘリコプターでうちの庭に降り立って、それで直接仕事を依頼をしたっていうような話まであるんですよ。

樋口:
 伝説ですね。

オーライ:
 最近、この話の本当のところがわかってきたんですけれども……これはあまり明かさない方がいいかな(笑)。

一同:
 (笑)

オーライ:
 実際に発注をくださったのは当時の20世紀フォックスの古澤利夫さんだそうです。キネマ旬報の追悼記事に書かれていたんですが、古澤さんが宮崎まで発注に来た時、父は留守にしていて「どうも釣りに出かけていたらしい」と記事に書いてあるんですよ。

 でもうちの父は釣りの趣味なんてないし、東京から来るお客さんをほったらかしてどこかに出かけるなんて、ありえないんだけどなと思って(笑)。

オーライ:
 だから記憶の中で盛られているのかな? という気が少ししました。しかし今まではずっと国内の仕事でしたけれど、これが国の外に出て行くきっかけになったのは間違いないですね。

樋口:

 それはたまたま何かのポスターを見て、依頼があったんですか。

オーライ:

 徳間書店さんから出た当時の『スター・ウォーズ』や『未知との遭遇』など、あの手の映画を特集したムックに付いていた巻頭のポスターを見て声をかけてくださって。それがルーカスフィルムに行ったという経緯みたいですね。

樋口:
 いろんな人に描かせている中で選ばれた?

オーライ:
 どうだったんでしょうね。日本に関しては「生賴でいこう」と言われてました。それで「日本はこのポスターでいくよ」と言ったところ、他の国も「じゃ、自分のところも」ということだったのかなと思います。

樋口:
 実はこのポスター、オリジナルなところがあるんです。AT-ATスノーウォーカーは映画を見ると、こんなに光らないですからね(笑)。この光り方とか、かっこいいじゃないですか。

画像は『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』Amazonより。

オーライ:
 父はこういう横一文字の光とか好きですからね(笑)。

石田:
 生賴先生のところにスチール写真だけ来て、それだけを見て描いていましたね。

樋口:
 そうなんですが、スチール写真以外のものをちゃんと盛り込んでいますね。

オーライ:
 でも初めてヨーダが出てくる映画なんですけども、ここにはヨーダがいないですよね。その代わりにランド・カルリジアン(ポスター左上の男性)がすごく大きく描かれています。

樋口:
 これってすごい意味があるのかと思いますが、実はそこまで意味はなかった(笑)。このポスターだけ見ると裏切り者感がありますけれど、意外といいやつだった。

やっぱり劇中とはフォルムが違うゴジラの敵

画像は『ゴジラ対ビオランテムービーポスター』Amazonより。

オーライ:
 このポスターは『ゴジラvsビオランテ』ですね。これも手探りで描いているんですよね。

樋口:
 「薔薇の怪獣です」くらいの情報しかなくて、怪獣のデザインそのものが、ぎりぎりまで決まらなかったんですよね。

オーライ:
 薔薇が元ネタになっているということだけは東宝さんから情報をいただいていたみたいなんですよ。薔薇を一輪撮ったポラロイドが残っていて、それを少しずつ写生して、それから完成形に近付けたという過程が残っています。

樋口:
 それって時間をかけてやられているんですか。

オーライ:
 そんなに時間はかかっていませんね。

樋口:
 なるほど。イメージとして、他のポスターは「これだ」という感じでバシっと決まったイメージがあるけれど、ビオランテなんかは結構試行錯誤の末と言うか……。

オーライ:
 そうですね。背景とかも構図ありきで、他に何をどうはめ込んだらいいのか、迷ったところがあると思うんですよね。要するに手持ちのネタが全くないわけじゃないですか。

樋口:
 ある意味オリジナルな感じでかっこいいですね。自分としては「生賴先生の映画のポスターを見る」、「ポスターの場面が劇中にない」、「でもいつか俺もそんな映画を作りたい」、「自分が作る番になって生賴先生に絵を描いていただきました」、「こんな画は俺は撮った覚えがないし、今から作れないよ」という、何でそうなったかという一連の流れは一生を通じても私はわからない、ということがわかりました。子どものころから触れてきて、50歳を過ぎてやっと世の中の仕組みがわかりました(笑)。

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